第252話 敵の新たな能力

 僕が94アガ先の地点をイメージして、再び時空の海の扉を開けると、シールド間近の半球体が空に薄く境目を作っている。


「──!!!!!」

 そこには待ち構えていたかのように、スウォン皇国で僕らを襲ってきた、10人の男たちが空中に浮かんでこちらを見つめていた。


「よう、また会ったな、“ななつをすべしもの”。今度は前回のようにはいかねえぜ。」

 なにこいつら、空を飛べたの!?空中にいる相手とどうやって戦ったらいいの!?


「ザザ・アイワナ・バイツウェル2世より、新しい力を授かったようですね。それに以前現れた時よりも、力も増しています。」

 彼らの情報をキリカが教えてくれる。


 新しい力?そんなものを与えられるの!?

 シールドの最上部を見ると、真っ黒いうごめく水の塊のような魔物が、1人の男性を包み込むようにしながら、攻撃を加えてる。


 あれが、もとはザザ・アイワナ・バイツウェル2世だった魔物なのか!!僕は以前感じた、背筋が寒くなるような感覚におちいる。


 だけど、抱きかかえられてる男の人は、いったい誰なんだろう……?仕立てのよい服を着た、普通の人間に見える。

 まさか、この国の貴族……?


 こいつらは恐らく空中を自由に飛び回れる力を得たんだ。この間僕に散々やられたくせに、自信たっぷりな表情で笑ってる。


 僕と叔父さんは、時空の扉の中からしか攻撃出来ないから、これじゃ防戦一方で、とても近付けそうにないよ。ザザ・アイワナ・バイツウェル2世だけだと思ったのに。


 ──そうだ、ルールだ!

 今の僕なら、この世にないものなら、生み出すことが出来るんだ。僕らも空中を移動できるルールを作ってしまえばいいんだ!


「新ルール作成。パダと唱えると、空中を歩くことが出来る。踏んだ場所が地面と同じになる。ただしこれを使えるのは、僕と、僕の許可した者のみとする。」


「ルール作成?──アレックス、まさかまた新しい力に目覚めたのか?」

 叔父さんが驚愕して僕を見ている。そう言えば解放したばかりで伝えてなかったや。


「うん、そうだよ、叔父さん。

 現時点での許可対象者は、セオドア・ラウマンのみとする。……どうかな?

 キリカ!新しいルールは認められた?」


「はい、問題なく作成されました。」

「叔父さん!パダと唱えたら、空中を地面のように歩くことが出来るよ!

 これで僕らも空中であいつらと戦える!」


「空中を歩くことが出来る……?凄いことを考えたもんだな。──パダ!!

 ……本当にこれで空中を歩けるのか?」


 叔父さんは双剣をマジックバッグから出して両手に持ちながら、扉の脇に手を付いて体を支えつつ、恐る恐る片足を空中に出して、ぐっと足に何度も力を込めてみていた。


「──いける!これならやれるぞ!

 行くぞアレックス!」

「うん!叔父さん!」

 僕と叔父さんは時空の扉から飛び出した。


 空を飛べるのは自分たちだけだと思っていたのに、僕らも空中に浮かびながら向かって来るのを見て、一瞬彼らが怯んだけど、すぐに戦闘態勢を取り出した。


 鞭を使っていた男の体に巻かれていた布がクルクルと外れて、まるで生き物のようにうねりだしたかと思うと、それが触手のように四方八方から飛んで来る!


 この間見た武器と違う!

 新しい攻撃方法も手に入れたんだ!叔父さんは双剣の連撃でそれを跳ね返した。

「──なんだと!?」


「──鋼鉄の硬さを持つ布か。それを鞭のように操るとは、なかなか面白い武器だが、力ばかりを手に入れて、基礎がなってないな。

 Aランクまでならいけるだろうが……。」


 ザシュッ!叔父さんの目の前で、鋼鉄の硬さを誇るという布が切り裂かれて落ちる。

「……同じか少し強い程度で、Sランク冒険者に技術で勝てるとでも思うのか?」


「こいつ!あの時俺たちにズタボロにやられたくせに!強くなってやがる!」

「“ななつをすべしもの”の方を狙え!

 あいつは近付かなければ勝てる!」


 棍を使っていた男の武器が、伸縮自在に伸びて、残像でたくさんあるかのように見える動きで、僕に連撃を繰り出してきた!


「──時空の扉、73番目、75番目、76番目、78番目、81番目、82番目、84番目、85番目、86番目、88番目。

 生命の海、水刃!!連撃!!」


 僕は時空の扉を棍を使っていた男の周辺に10個出現させると、開いた扉から水刃を出して、扉から扉へと移動させる。


 無作為に飛んで来る水刃をよけきれずに、棍を使っていた男の武器が、水刃に切り裂かれてバラバラになって落下して行った。


「──君らも強くなってるのかも知れないけど、僕らの力も進化してるんだよ。

 僕のスキルは固定ダメージだけじゃない。簡単にやられると思わないほうがいいよ。」


────────────────────



 

 



以下、わたくしごと。

読みたい方だけ読んで下さい。


ハライチの岩井勇気さんの年の差婚が何やら叩かれてるみたいですが、蓋を開けたら中学生の女の子が、初恋を叶えたドラマチックな話だった。


岩井さんは芸人としても、いつまでも青臭くて、熱くて、ストイックでくそ真面目な人ですが、恋愛でもそうだったらしい。


付き合う当初から親にきちんと挨拶、こうなる(叩かれる)ことを予見して、結婚か別れるかを考えた時に、相手の将来を考えて身を引く決断が出来る人のことを、オッサンが若い娘に手を出しただけの話とは思えなかったですし、むしろ親なら信頼して任せられると考えるかな、と思いましたね。


それに未成年の時は2人きりの食事すら拒絶する堅物相手に、成人するまで待ってアプローチしてくる一途な女の子とか、これ以上自分のことを好きな女性に巡り会えないと感じて、結婚したくなるのは普通のことかなと。


パエリア作って食わずに捨ててたくさり芸人が、こんな風に理解して愛してくれる人に巡り会えるとか、みひろさんに何度も振られた東京03の飯塚悟志さんに結婚相手が見つかった時以来の嬉しい気持ちです。

この設定で1本書きたくなりました笑

本当にお幸せに。





 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る