第249話 妹って、こういうもの?

「だ、だって僕のスキルだと思ってたし、ほぼ独り言を言ってるようなものだから、質問とか思いつかなかったんだよ。面と向かったらそりゃあ、色々聞きたいことも出るよ。」


「ハイ。そうだと思って、だから体が欲しかったんです。私はオニイチャンのたった1人の妹なのに、ぜんぜん構ってくれないから。」

 小首を傾げて情報の海さんが言う。


「うう……ごめんなさい。けど、どうして最初から妹だって名乗ってくれなかったの?」

 だったら僕だって色々聞いたのに!


「聞かれたことにだけ答えるように、言われてたんです。でも、どうしてもオニイチャンとお話したくて、約束やぶっちゃいました。」

 ペロッと舌を出して肩をすくめている。


「あ、というか、──名前。

 情報の海さん……じゃないよね?」

「はい。私の名前はキリカです。」

 と、嬉しそうにキリカが笑った。


「改めてよろしくね、キリカ。」

「──〜〜……!!はい!!」

 そう言って、僕の腕に抱きついてくる。


「え?ちょ、ちょっと。」

「ずっと、こうしてみたかったんです。

 ……駄目ですか?」

 上目遣いで寂しそうに言ってくる。


 妹って、こんなに可愛いものなの?

 こんなの、駄目とか言えないよ!

「……だ、駄目じゃないけど、人前はやめてね?特にミーニャの前とか!」


 そう言うと、キリカはプクッとほっぺを膨らませて拗ねてしまった。

「──私、あの人、嫌いです。」


「え?ど、どうして?」

「なんの努力もしてないくせに、一方的にオニイチャンに好かれてて。あの人だったら、レンジアさんのほうがいいくらい。」


「レ、レンジア?なんでレンジア?」

「いつもオニイチャンを守ってくれます。

 あの人ならいいです!」

「いいですって……。」


「せっかくこうして体を手に入れたんです。

 私、オニイチャンとミーニャさんの邪魔をします。レンジアさんとくっつけます!」

「えええ〜〜!?」


 そんな勝手なこと言われても困るよ!

 僕の気持ちってもんがあるのに!

「レンジアさんのこと、嫌いですか?」

 キリカが不思議そうに見上げてくる。


「レンジアのことは、好きとか嫌いとか、そういうのじゃないから……。」

 レンジアは思いのほか、僕のことを好きみたいだなあ、とは、最近思ったけど……。


「ならぜんせん可能性はありますね!近くにいる人のことを人間は好きになるそうです。

 近くにいるレンジアさんのほうが、断然ミーニャさんよりも有利ですから!」


 かりそめの体を手に入れたキリカは、情報の海さんだった頃よりも、更にグイグイと僕に提案を施そうとしてくる。キリカって、こういう感じの子だったんだ……。


 確かに聞かれてないのに、やたらと教えてくれたり提案してくれるようになったり、質問してくれないって言うようになったなあ、自立タイプなのかなって思ってたんだけど。


 まさか中の人がいたなんてね。

「まあ、オフィーリアさんでもいいですけどね。あの人は2番目に好きです。ずっとオニイチャンのことだけ考えてくれてるから。」


「オフィーリア嬢!?」

 そう言えば、オフィーリア嬢にも、帰ったらなんてキリカのことを説明しようかなあ。

 帰りそうにないからまた会うだろうし。


 そう僕が考えていると、

「そもそもオニイチャンは、女の人に囲まれ過ぎです。オニイチャンのことを好きな女の人が多過ぎるの。」


「え?僕が女の人に囲まれ過ぎ?多過ぎるって……。まあ、3人は多いかもだけど。」

 僕、ミーニャと、オフィーリア嬢と、レンジアにしか好かれてないよ?


 あ、好きって言ってくれたのも、オフィーリア嬢だけだっけ。レンジアのことは僕の勘違いじゃ……ないよね?ミーニャにも、好かれてるよね!?プロポーズ受けてくれたし!


「分かってないんですね。

 なら、別にいいです。」

 こう見えてキリカは神さまだ。何よりも、情報と通信をつかさどる女神さま。


 僕の知らない、というか本人しか知らないであろう、ヒルデのサイズを知っていたり、神さま目線で色々見聞きしてるんだ。僕の知らない誰かに、僕が好かれてるってこと?

 

 ……誰だろう。

 ぜんせん思い当たらないや。

 て言うか、言われないとわからないよ!


「とりあえず、用事は終わったんだし、帰りましょう?私がついて行ったら混乱するでしょうから、ここで待ってますから。」


「あ、うん。そうしようか。」

 僕は時空の扉を再び王宮につなげてると、水瓶を6箇所作って川に水を流したことを、バイツウェル3世に伝えた。


「そうか!本当によくやってくれた。ところで突然国全体が、聖なる光に包まれたとカミーザが言っておるのだが、それはなんだ?」

 ──あ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る