第246話 巨大な水瓶
世界を救った最高のタイミングで、──聖女を生贄にささげる。王妃の血縁者で、王女で、聖女で。供物として差し出すとしたら、これ以上ない存在だったってことなの……?
「聖職者よりも、更に神聖な存在が、聖女さまだから……ですか?」
「恐らくそういうことだったのだろうな。
先代王は孫娘を生贄に捧げたのだ。」
国の為に。世界の為に戦って。……その中には壊れた家族の絆を取り戻したいという気持ちも、あったかも知れないね。フローレンス姫は最悪の形でそれを裏切られたんだ。
「生贄の儀式の結果は、それで、……結局どうなったのですか?」
「成功したらしい。それも最悪な形でな。」
「──最悪な形で?」
「当時の先代王の王妃は、確かにそれで復活したらしい。それも、……魔物として。
先代王すらも飲み込んで、魔物に変えてしまったと、当時の王の手記に残っていた。」
「その魔物は、どうなったのですか?」
「どこかに消えてしまったらしい。それ以上はわからぬが、まだどこかで生きているやも知れぬ。聖女を生贄にした程だからな。」
……聖女を生贄に生まれた魔物……。
魔王に匹敵するとまではいかないまでも、それに近しいくらい、強い存在かも知れないね。いったいどこに消えたんだろう?
「悪魔の生贄の儀式を行った先代王。先代王と当時の5大大国によって殺された聖女。
この地が呪われているというのであれは、それは否定しきれないと思うよ。」
確かにそれはそうかも知れないね。生贄の儀式を行った土地は穢れると聞いたことがあるよ。この国にはまだそんな場所があるのかも知れない。飢饉とは関係ないだろうけど。
「だが、この国をいつまでも、このままでいさせるわけにはいかぬのだ。ましてや他国の援助も得られぬまま、国民を死なせるわけにはいかない。どうか手を貸して欲しい。」
バイツウェル3世が頭を下げてくる。
「頭を上げてください!国王さまがそのようなことをすべきではありません!頼まれなくても、僕はもとよりそのつもりでしたし。」
僕は慌ててそう懇願した。
「そうか!ありがたく思う。
ひとまずは食糧難と……、それと水だな。
雨が降らなくて井戸も枯れつつある。」
「──水?」
それなら抽出出来るけど、毎日のことだものねえ……。どこかにためておくって言っても限界があるよね。どうしようか?
……僕がしょっちゅう来るわけにもいかないしなあ。──そうだ!
「あの、どこか、山々が重なり合って、くぼんでいるような土地がありませんか?」
「くぼんでいるようなところ?
そのような場所はないが……。」
「うーん、なんて言うのかな、あの、書くものと紙をいただけますか?」
「いいだろう。」
バイツウェル3世が隣の占い師を見ると、占い師がうなずいて1度奥に引っ込んだかと思うと、紙とペンを持って戻って来た。
「どうぞ。」
「あ、ありがとうございます。」
僕はそれを受け取って、イメージしたものを描いたものを、占い師に手渡した。
占い師がそれを、バイツウェル3世に手渡す。バイツウェル3世はマジマジとそれを見て首を傾げていた。
「これはなんだ?」
「なに、と言われると困るんですけど、こんな感じに山と山の間を塞いで、大きな水瓶みたいな場所を作れないかなって。」
「──そのようなことが出来るのか!?」
「出来るかは分かりませんけど、水は出せるので、ためられる場所を作りたいんです。」
「水が出せる?」
僕が叔父さんの顔を見ると、叔父さんも僕を見てコックリとうなずいた。
「僕のスキルは、魚と水が出せるんです。」
「なんと、変わったスキルだな。」
「それと、今は世界と通じてないから、この国には託宣は届かないと思いますが、“選ばれしもの”が神から受けた予言で、僕は世界を救う存在として選ばれました。“ななつをすべしもの”。それが僕の呼び名です。」
「“選ばれしもの”が託宣を受けた存在が、おぬしであると?なればカミーザの占いの結果はそういうことであるのか。」
あの占い師、カミーザさんて言うんだ。
「はい。おそらくは。そして僕のスキルはそれだけではないんです。たぶんですけど、その巨大な水瓶を作り出せると思っています。こんな形の地形があれば教えてください。」
「ふむ、これでよいなら、国中にいくらでもある。──地図を。」
「はい。」
カミーザさんが今度は地図を持ってくる。
「ここと、ここと、……ここと、……ここもだな。あとここ。この7箇所だ。」
「人とか住んでないですか?中心を埋めちゃってもだいじょうぶですか?」
「それで言うと、この山は駄目だな。少数だが人が住んでいる。他は問題ない。」
「分かりました。」
ちょうどこの国の東西南北に分かれてる。
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まあ、ようするにダムですね。
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