第99話 時空の扉の効果

「──わっ!?」

 すると目の前の壁が光って、何もなかった筈の壁に、新たに扉が現れたのだった。


「で、出た……。」

「正解だったな。開けてみてくれ。キャベンディッシュ侯爵家の庭か、父さんの部屋にでもつながってるんじゃないのか?」


「そ、そっか!そうかも!」

 僕は扉を開けてみた。

「も、森……?」

 そこは背の高い木に囲まれた場所だった。


  だけどその向こうの空に、リシャーラ王国の王城の屋根が見えた。──王都だ!!

 振り返ると時空の扉があって、僕が空間移動に成功したってことを教えてくれる。


 凄い!時空の海は時空間魔法のかかった海だから、時空の扉は空間をつなげることの出来る扉なんだ!元の持ち主の住んでたところの近くまで、移動出来るってことなのかも!


「叔父さん!王都ではあるみたいだよ!」

「どこに繋がってたんだ?」

「えーっとね……。」


 僕は扉を出て、背の高い木の間をくぐり抜けた。向こうに出た瞬間、ミーニャと目が合う。──それも上半身裸の。


 突然現れた僕に、キョトンとしているミーニャ。えっと、さっき別れて、そのまま帰ったよね?そして農作業か、ウサギ退治をするって言ってた筈……。えと……。


 そうだ、ミーニャはいっつも、農作業の後に水浴びをするって前に言ってたな。汗をかくからって。平民はお風呂がないから、冬以外は庭で水浴びをして体を拭くんだよね。


 ──って。

 えええええええええ!?

 思わず戻って来て、バタンと扉を閉めて、扉にもたれかかって、肩で息をする。


 ここ、ミーニャの家の庭!?

 ど、どどど、どうしよう!

 お風呂、覗いちゃったよ!

 ミーニャ、怒ってるかなあ……。


「どうした?アレックス。」

「え、えと、その……。」

 あ!そうだよ、逃げてきちゃった!


 僕だと気付いてなければいいけど、気付いていたら、そのまま逃げたら、僕のこと、ミーニャがどう思うか……。


 も、戻らなきゃ!

「叔父さん、後で説明するから!」

 僕は慌ててミーニャの家の庭へと戻った。


「ミーニャ!いる!?」

 僕は背の高い木越しにミーニャに話しかけた。もう一度向こうに行ったら、どんな姿でいるか分かったものじゃないもの。


「……アレックス?さっきの、ほんとにアレックスだったの?」

 ミーニャの困惑する声が聞こえる。


「う、うん、僕……。ごめん!その……のぞくつもりはなくて……。たまたま外に出たらここにつながってたんだ、ほんとごめん。」


「たまたまつながってた?」

「う、うん……。」

 ガサガサガサ。「──どういうこと?」

「わっ!!」


 ミーニャが背の高い木をくぐり抜けてこちらにやってくる。思わず両腕で顔を覆ったんだけど。ミーニャがフフッと笑う声がする。


「もう、ちゃんと服着てるよ、ほら。」

 そう言われて腕をどけると、まだ濡れ髪のままのミーニャが笑っていた。さっきの姿を思い出してドキリとする。


「あ、う、うん、そうだね……。」

「それで、どういうこと?」

「あ、うん。その、僕のスキル知ってるでしょう?〈海〉。」


 ミーニャは僕の鑑定の場にいたからね。

「うん。」

「そのスキルがレベルアップして、扉が現れたんだけど、それがここに繋がったんだ。」


 ほら、あれ、と僕は後ろの何もない空間に突如現れた扉を指し示した。

「海なのに?」

「そう、海なのに。変なスキルだよね。」


 ほんとだね、とミーニャは笑ってくれた。

「ここがどこか分からなくて、そのまま進んだら、ミーニャの家だったんだ。」


「ほんとに?」

「え?」

「たまたまなの?」


「キャベンディッシュ侯爵家に出ると思ってたんだよ。だけど、リシャーラ王国ではあったけど、なんでかここに出ちゃって……。

 覗くつもりなんて……。」


「そうじゃなくて。」

「え?」

「アレックスが、私に会いたくて、ここになっちゃったんじゃなくて?」


「え?そ、そうかも……。」

 ミーニャのことを考えていたつもりはなかったけど、ついでに顔が見れたらなと思っていたのは事実だ。


「ならいいわ。許したげる。」

「──!!ありがとう……!」

「けどね。」

「え?」


「アレックスの……、エッチ。

 まだそういうの、早いからね?」

 ミーニャは頬を染めて、顎を引いていたずらっぽく上目遣いで笑った。


「わ、わかってる!ごめんなさい!」

「そういうことがしたかったら、……早く、ちゃんとお嫁さんにしてね?」

 ミーニャにそう言われてドキリとする。


 ミーニャ……。かあいい……。

「う、うん、僕頑張るよ!

 ──あ、そうだ!ミーニャ、よかったらこれをあげるよ、さっきドロップしたんだ。」


 僕はリザードマンの革鎧(遠距離職・弓兵用)と、攻撃力上昇とかのスクロールを、ミーニャに手渡そうとしたんだけど。

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