第98話 ★レア!!の使いみち

 叔父さんにそれを伝えると、全体攻撃が可能なレベルになると、格別不思議なことでもないんだって。1度に倒すと、当然レアが交じる率も上がるってことなんだそう。


 だけど全体攻撃が可能なレベルの冒険者たちは、こんなFランクダンジョンでなんか狩らないから、ニナナイダンジョンではレアなスクロールが出ないってだけのことみたい。


 スクロールには種類があって、全部のところから全種類出るとされてはいるけど、やっぱり出やすいもの出にくいものはあって、ここで出やすいのが上記の一覧てことだそう。


「ねえ、叔父さん。攻撃力上限10%上昇のスクロールにはレアの★がついてて、攻撃力10%上昇のスクロールにはないんだけど、その違いってなんなのかな?」


「ああ。それは、スクロール自体は消耗品タイプだが、スキル付与のスクロールのように本人に定着するものだ。当然レアだな。

 レアの中でも更にレアなものだ。」


 叔父さんいわく、出にくいものというだけでレアはレアなんだそう。その上のスペシャルレアだと、ほんとに出ないらしいよ。叔父さんも2回しかお目にかかれてないそうだ。


「──本人に定着するもの?

 スキルのスクロールみたいにってこと?」

「上昇したステータスが消えないということだ。滅多にドロップするものじゃないぞ。」


「え?そ、そうなの!?僕、攻撃力と、HPとSPで、それが出たんだけど。」

 僕は驚いてそう告げる。


「近接職ならヨダレものだな。

 もう働かなくていいんじゃないか?」

 と叔父さんがからかうように笑った。


「そ、そんなにするの!?」

「レベルが上がれば上がるほど、レベルアップしにくいものだからな。レベルの高い人間ほど欲しいものだろうな。」


 まあ、スキル定着スクロールほどじゃあないが。1枚で金貨2枚はするぞ、と叔父さんが教えてくれる。一生働かなくてよい程ではないけど、それなりにするらしい。


「なら、僕はこれは叔父さんにあげるよ。」

「いいのか?」

「うん。レベルが高い人が使わないともったいないし、僕にはいらないと思うから。」


 僕は叔父さんにレアスクロールを渡すことにした。叔父さんがついて来てくれたから、僕は安心して狩りが出来たわけだしね!

 お金はまた稼げばいいもの。


「そうか、そういうことならありがたく使わせてもらおう。ありがとうなアレックス。」

「えへへ。」


 叔父さんがそう言ってスクロールを使う。

 見た目に特に変化はないけど、しっかり定着したと教えてくれたよ。


「さあ。今回はダンジョンボスには挑まないからな、時空の扉を試してみようか。

 ここはしばらくは魔物がわかないし。」

「うん!そうしよう!」


 僕はリザードマン達のいなくなったフロアの中で、アイテムボックスの海をイメージした。眩しい光の奔流に包まれて、目を開けると、そこには重々しい鉄の扉が立っていた。


「行こう、叔父さん。」

「ああ。」

 僕と叔父さんはアイテムボックスの海の中へと入った。


「僕のアイテムボックスは、どこに出来たんだろう……。それらしい扉がないよ?」

「前に来た時との違いはないのか?」

「ううん……、別に特には……。」


 吸い込んだアイテムは、どこに行っちゃったんだろうな?リスト一覧になって出てきたんだから、どこかにある筈なのに……。


「なら、それはゆっくり後で探すとして、まずは時空の扉を確認してみよう。」

「うん、そうだね。」

 僕は1番目の光る扉に手をかけた。


「──時空の扉!!」

 僕は呪文を唱えるみたいに、そう言って光る1番目のドアノブを回したんだけど。


 シーン……。

 ガチャガチャガチャ。扉は開かなかった。

「だ、駄目みたい。」

 は、恥ずかしい!!


「なんでなんだろう、確かに時空の扉が使えるって出たのに……。」

「既に開いてるほうの扉なんじゃないか?」

 と叔父さんが言ってきた。


「──開いてるほうの扉?」

 だってそっちはもう入れるんだよ?

 叔父さんの言いたい意味がわからない。


「もともとアイテムボックスは、誰かが使っていたものだからな。お前の開けられるドアが、その人たちが使っていた入口と同じじゃないなら、その人たちが使っていた入口を開けられるってことじゃないかと思ってな。」


「な、なるほど……?」

「父さんのアイテムボックスに行こう。」

 叔父さんに促されて、お祖父さまのアイテムボックスの中へと入った。


 だけど、やっぱり中にも新しい扉なんてなかった。ここも違うとしたら、どこなの?

「もう一度ここで、時空の扉を開けてみてくれ。普段は出ないのかも知れないからな。」


「う、うん。」

 もう一度駄目だったら恥ずかしいから、今度は時空の扉!とは言わずに、扉と反対側の壁にドアをイメージした。

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