初めてのダンジョン
第84話 いざニナナイダンジョンへ
僕が今身につけているのは、遠距離・弓兵用の革の防具だ。昔魔物からドロップしたものを、まとめてマジックバッグに突っ込んでいたのを思い出して僕にくれたんだ。
ちなみにリザードマンの皮を使っているわけじゃなくて、リザードマンが身に付けていた革の防具だった。リザードマンは武器や防具を装備して襲ってくる魔物なんだ。
ダンジョンの外で倒した魔物は、基本剥ぎ取りになるんだけど、ダンジョン内で魔物を倒すと、どういうわけか、装備品やらなんやらを、ドロップするという仕組みらしい。
リザードマンの革の防具は、人間が作るものよりも丈夫で優れているから、特に弓初心者に割と人気の防具らしい。重くできないから、ずっと革の防具を使う人が多いものね。
ちなみにダンジョンにはいくつかのパターンがあって、突然今までなかったところに湧いて、ダンジョンボスが倒されると消えるタイプと、ボスを倒しても残る常設タイプの、大きく分けて2つのタイプがあるんだって。
これはキャベンディッシュ侯爵家の家庭教師からも教わったことがあって、僕が入る予定だった剣と魔法を教える学園には、近くに学園が保持している、初心者向けの常設ダンジョン、なんてものもあるんだ。
ダンジョンがたまたまそこに出来たわけじゃなくて、常設ダンジョンがわいたところに学園を建てたらしい。凄いことするよね。
ダンジョンはどこにでもわくもの。
森、山、海、それこそ町の中にだって。
ちなみにこの分類にそうと、ニナナイダンジョンは常設タイプということになるよ。
ランクの他にも条件があって、最低2人以上のパーティーを組まないと、ダンジョンの中に入る許可がおりないんだ。
これはダンジョンごとに異なるもので、4人以上、6人以上、なんてとこもある。基本は4人らしい。ここは出て来る魔物自体のランクは低いから、2人から、なんだって。
だけど、1度クリアされているから、危険度は分かっているけれど、常設タイプは一定時間でダンジョンボスが復活しちゃうんだ。
おまけに放っておくと、瘴気が強まって、ダンジョンブレイクという、ダンジョンから魔物があふれ出す結果につながるんだ。
それが酷いものになると、スタンピードという、あふれた魔物が大量に町に進行してくるほどの事態にもなりかねないから、こうして定期的に冒険者を受け入れてるんだって。
ちなみにダンジョンの入場料だけでも、ある程度お金が必要になるから、町に常設ダンジョンが出来ると、町が潤うことになる。
観光地みたいなものだよね。ダンジョンの中に入る料金、宿屋に泊まる冒険者、近くの店で買い物だってするだろうからね。それらがすべて町の人たちの懐に入るわけだから。
だから常設ダンジョンがわくことを、ひと山当てられるものとして、心待ちにしてる人たちも多くて、特にニナナイダンジョンみたく、レアドロップが多いのが喜ばれる。
逆に攻略出来ないほどのダンジョンが近くにわいたら、代々住んでいたところを移り住まなくちゃならなくなるんだ。
それでもダンジョンに入る人たちはいるから、すぐに近隣が危険になるということもないし、国も目を光らせてるんだけど、攻略されていないダンジョンは恐ろしいものね。
常設タイプのダンジョンは、ギルドや町や村々が管理をしていて、入ることの出来る最低冒険者ランクの定められたものになる。
ニナナイダンジョンは、それがFランク以上ってことなんだ。
だから僕は叔父さんのすすめで、そこまでギルドランクを上げることにしたってわけ。
〈海〉のスキルを試したくても、人が住むところだと、適した場所がないからって。
……まあ、攻撃することでその場に海水が残ったら、土にはよくないよね。
ダンジョン内ではいくら魔法を放っても、人や魔物が死んでも、すべてを飲み込む場所と言われている。
万が一うまく引っ込められなくて、海水がその場にある程度残ったとしても、数日経てば何事もなかったかのように消えるんだ。
ニナナイ村のダンジョンは、村の近くの森の中にあった。崖下がぽっかりと洞穴みたいになっていて、入り口の近くに憲兵みたいに槍を持って立っている村人たちがいた。
叔父さんくらいの年齢の男性2人なんだけど、普通の服装に槍だからなんだか凄く違和感があるよね。勝手にダンジョンに入ろうとする人たちを、ここで食い止めてるみたい。
だけどFランクとはいえ、普通の村人たちよりは強い筈だから、軽装に槍を持っているだけで食い止めるのは無理なんじゃ?
ちょっと無防備な気がするよね。
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