第55話 お風呂場での無意識な誘惑

「違う。アレックスさまから四六時中目を離すなと言われただけ。お風呂に入ったからついて来た。それだけ。」

「誰からそんなことを……。」


「言えない。それが決まり。」

「てゆうか、いつから見ていたの?

 ま、まさか、僕が着替えてるとこだとか、トイレの中だとか、その……。」


 僕のありとあらゆる恥ずかしい場面を、この子に見られてたってこと!?

「言えない。それが決まり。」


 うう……。見られてたんだね……。

 こ、こんな可愛い女の子に、僕のアレやソレを……。


 でも、この子からなら、うまいこと依頼主を聞き出せるかも知れない。

 というか、依頼主は一体誰なんだ?


「その……、それはいつまでの予定なの?」

「分からない、護衛を兼ねてずっと、と言われた。命令がとかれるまで見守る。」


 護衛?僕を?なんで?

 どうもこの子は、僕に聞かれたらまずいであろうことも、これは駄目だと言われたこと以外は、うっかり話してしまうみたいだ。


「その……、君は嫌じゃないの?だって、女の子が、男の風呂とか、アレとかソレとかをずっと見てなくちゃならないなんて……。」


「嫌じゃない。」

「あ、そう……。」

「むしろ見ていたい。アレックスさまを。

 どうしてなのか分からない。」


「──え?」

「アレックスさまを見ていると、鼓動が早くなる。こんなことは初めて。」

「そ、それってどういう……。」


 女の子が僕ににじり寄ってくる。

「アレックスさまを見ていたい。アレックスさまに、私をもっと見られたい。なぜ?」


 僕の目線は、女の子の可愛らしい顔と、透けた胸元に釘付けだ。

「こ、この状況で言うと、なんか別の意味に聴こえちゃうよ!!」


「別の意味?」

 女の子は無表情にキョトンとしている。

 たぶん、そんなつもりないんだろう。


「そ、その、服が濡れて透けてるから、早くどうにかして……。」

「了解。」


 そう言った途端、女の子は濡れた服を脱ぎだした。ちょおおぉお!?

「な、なんで脱ぐの!?」


「濡れた服、なんとかする。命令。」

 僕のも命令になるってこと!?

 自分の意志ってものがないの!?この子!


 濡れた服をギュッとしぼって、パンッとはたく。目の前には、薄っすらとした肉付の美少女が、全裸で横を向いて膝立ちしている。


「ここじゃすぐに乾かない。」

「じゃ、じゃあ早く新しい服を着て……、」

「アレックスさまを見守る。命令。」


 そこは先の命令が優先されるらしい。

「女の子の裸を初めて見ちゃったよ……。

 うう……。」

 僕は両手で顔を覆った。


 女の子はそれを聞いてピクリと反応する。

「私も男の子の裸を初めて見た。

 もうお嫁にいけない。

 アレックスさまの愛人になるしかない。」


「──どういうこと!?」

 男の子の裸を見ちゃったからお嫁にいく、ならまだしも、なんで愛人!?


「初めて裸を見てしまった相手の嫁になる。

 これは決まり。……アレックスさまはオフィーリアさまのもの。奥さんのいる人は2人奥さんを持てない。一緒にいる他の女性は愛人と呼ばれる。だから私は愛人になる。」


「……オフィーリア?

 君はオフィーリア嬢の手のものなの!?」

 また無表情に、あ、と口をあける。

「なんのことか分からない。」


「……もういいよ、分かったから。」

 つまりは、オフィーリア嬢の影ということだ。オフィーリア嬢の大祖母様は、先代王の母君だ。影くらいいてもおかしくない。


 オフィーリア嬢を心配して、大祖母さまが影を寄越したのかも知れないな。

 なんでそれで僕を見張るなんてことになったのかは分からないけど。

 それにしても……。


「初めて裸を見た相手と結婚なんて、君はそれでいいの?変な男に任務でつけられたかも知れないじゃないか。

 そしたら、おじいさんくらいの人と結婚する可能性だってあったでしょ?」


「対象から四六時中目を離すなと言われたのは初めて。普通はしない。だからきっと、これは意味のあること。」


「僕の言っているのは、君の気持ちってことだよ。好きでもない相手と結婚することになっても、君はそれでいいの?」


「……アレックスさまは……、私のことが、嫌い。それは考えていなかった。」

 そう言って悲しそうな顔をする。


「べ、別に嫌いとかじゃ……。」

「じゃあ、……好き?」

 裸の美少女がにじり寄ってくる。

 ま、まる見えなんだってばあ!!


「す、好きとか嫌いとかじゃ……。

 そ、その……、ぼ、僕にはミーニャがいるんだああぁ!!」

 僕は思わず立ち上がって逃げようとした。


「……?」

 不思議そうな女の子の目線は、僕ではなく、僕の下半身に注がれていた。


「──!!み、見ないで!

 これは……、その、生理現象だから!!」

 僕は手でおさえて慌てて前を隠す。


 だって仕方がないよう……。こんな可愛らしい女の子が丸見えで迫ってくるとか……。

 う、浮気じゃないからね!ミーニャ!!

 でも知られないようにしよう……。


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この回だけなぜか、他と比べて見られてすらない為、サブタイトルを変更しました。

今後また変更するかも知れません。

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