第41話 ちょっと変わった女の子

 なんでもとか言うから、誤解するところだったよ。というかしたよ!もう……。

「ありがたいけど、いきなりはやめてね?

 びっくりするからさ。」


「わかりました、マスター。」

 女の子はそう言って無邪気に微笑んだ。他意はないんだろうけど、彼女はかなり可愛いから、こっちはドキドキしちゃって困るよ。


「君の名前は……、そうだなあ。

 ──カナンはどう?君の目の色みたいに、土の成分で色を変える花の名前だよ。

 小さくて、とってもキレイなんだ。」


「カナン……。はい、嬉しいです。

 ありがとうございます、マスター。

 私、今、……凄く気持ちがいいです。」


 嬉しいと気持ちがいいってことなのかな?

 前のマスターは、たくさんカナンを喜ばせてくれたってことだね。

 いい人だったんだな。


「マスターと、ずっと一緒にいさせてくださいね。マスターを私の肌に感じたいです。

 前のマスターがいなくなってから、誰にも私に触れて貰えなくて寂しかったです。」


「う、うん、ペンダントを肌み離さずいればいいってことだよね?……けど、ちょっとその言い回しはやめよっか。」


 そう言うと、カナンはキョトンとして首を傾げて僕を見ると、なぜですか?マスター、精霊が守護対象と一緒にいたいというのが不思議ですか?と聞いてきた。


「なんか、カナンの言い方だと、とんでもなく誤解を生みそうだからね……。肌に触れて貰えなくて寂しいとかなんとか、人前でそんなこと言われたら困っちゃうよ。」


 僕がカナンにそういうことをしてるみたいじゃないか!それに、僕が触りたくなっちゃったらどうするの?今すでに、ちょっとなってるよ!?だからそういうのは困るよ!


「ですがマスター、精霊は守護対象に触れられること、精霊が守護対象に触れることで力を与えます。精霊が守護対象の肌に触れるのも、触れられるのも当たり前のことです。」


 カナンは真面目な顔をしてそう言った。

「だから私に触れてください、マスター。」

 そう言って微笑むと、僕の両手を取って、自分に近付けていく。


 そ、そそそそそ、そこは、オオオオオ、って、だ、だめだよカナン!嫁入り前の女の子が、男の子相手にそんなことしちゃ!!


 焦りながらも、混乱してしまった僕は、カナンにされるがままになって、カナンは僕の両手のひらで自分を挟むように──頬に触れさせて、ウットリと幸せそうに微笑んだ。


「……マスターの肌の感触。気持ちがいいです。これから私の加護をたくさん差し上げますね。マスターも、たくさん私を求めてください。マスターに、私を全部あげたい。」


 カナンの体がうっすらと光って、それと同時に僕の全身がポカポカしてくる。

 カナンの加護とか、力をって意味だよね?

 う、うん、なんかもう、いいや……。


 というか、ペンダントを肌み離さずいるのはいいけど、カナンはこうして外に出っ放しなのかな?それは結構困るなあ。叔父さんにもなんて説明したらいいのか分からないよ。


「君はどうやったら宝石の中に戻れるの?人間は君みたいに飛べないから、ずっとそうして天井に浮かばれてると、ペンダントを持ち歩くのに、ちょっと困っちゃうんだけど。」


「それでしたら、ペンダントの宝石の部分を優しく撫でて下さい。宝石の中に戻ります。

 私を呼び出したい時も、同じようにして下されば、すぐにお守りいたします。」


「わかった、じゃあ、これからよろしくね、カナン。今日はいったん、さよならだね。

 用があったら、また呼び出すから。」


 そう言って、僕はペンダントの宝石部分を優しく撫でてやった。

 すると急にカナンが身悶えしだす。


「あっ……!マ、マスター……、んっ……。

 すっごく、気持ちいいです……。

 お願いです、そこ……を、もっと……、優しく撫でて……、下さ……、んんっ……!」


「ちょ、ちょおおお!!え!?え!?」

 そう言って頬を染めながら、カナンは宝石が光ると同時に消えていった。


 ……つまりこれはカナンの本体だから、カナンからすれば、全身を直接撫でられてるようなものってことなの!?

 僕はいったいカナンのどこを触ってたの?


 やっぱり気持ちがいいって、──そういう意味なんじゃないかあ!!

 なんなんだよ、精霊っておかしいよ!!

 僕は思わず真っ赤になってしまった。


 はあ……、今日はもう寝よう……。

 僕はカナンのペンダントを首から下げて、階段を上がって外に出た。


 アイテムボックスの海の最初の入口から外に出た瞬間、頭の中に文字が浮かぶ。

 マジックバッグに入れているのに、中身が外に出たことが分かるのが不思議だった。


 〈ワイバーンの皮〉

 ワイバーンが生きたまま剥いだ上質な皮。

 防具などの加工に向いている。

 防御力:+500

 風耐性:+500


〈イビルドラゴンの皮〉

 鉱山に生息する暴竜の皮。

 防御力:+3000

 俊敏性:―1000

 氷耐性:+5000

 火耐性:+5000


 ド……ドラゴンだって!?

 イビルドラゴンていうのがなんだかはわからないけど、ドラゴンは僕でもわかるよ!?

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