第39話 いざ、200番目の扉へ

「はあ、はあ……。これくらい降りたら、だいじょうぶかな。」

 僕は200番目の扉の前にいた。


 その分たくさんの階段を降りてきたから、結構しんどかった。特に、扉がない側に壁も手すりもないから、怖くてゆっくりしか降りられないのが、精神的にきついんだよね。


 お祖父さまの産まれた後に産まれた、アイテムボックス持ちが約70人。

 大体1年に1人の計算で、アイテムボックス持ちが産まれている計算になるな。


 ユニークスキルとまではいかないまでも、かなり持ってる人は珍しいってことだね。

 つまり、ここは200年前くらいに産まれた人のアイテムボックスってことになる。


 ここまで来ると、もう光る扉はひとつもなくて、すべての扉が灰色だった。

 ──いや。そんなこともない。


 それこそ、すっごく下の方に、階段しかない筈の明かりの中に、光がひとつ。

 どのくらい昔かわからないけど、気が遠くなるくらいの、かなりの大昔の筈だ。


 こんな前から生きている人なんているわけがない。──そう、人間なら。

 もしも魔物にもスキルがある場合があるのなら、おそらくあれはそれなんだろうな。


 だけどその分、すっごく珍しいお宝が入ってる可能性だってある。もう少し体力をつけて、あそこまで降りられるようになったら、光が消える前に印を付けに行こう。


 もちろん僕が生きている間に、持ち主が死なない可能性だってあるけど、先のことはわからないからね。


 うん、というか、降りるのはだいじょうぶなんだけど、登るのがしんどいんだ……。

 自分の体力を加味して、登ることを考えた時に、200までが限界かなって思った。


 では、いざ!200年前(大体)の扉へ!

 僕は扉を開いてみた。

「わあ……!」


 かなり広い部屋の壁一面に、ぎっしりと何かが詰め込まれている。それはそれはもう、足の踏み場もないくらいにだ。


 かなりパンパンに詰め込んでたみたいで、これはひとつひとつ出していかないと、中身をすべて確認するのは無理そうだよね。


 アイテムボックスもマジックバッグも、指定したものを取り出せるから、こんな状態でも持ち主は特に困らないんだろうな。


 というか、逆にこの下の方に重ねられたものを、どうやって取り出してるんだろ?

 上の方、めっちゃ重そうだよ?


 僕のマジックバッグの中身も、中に入れたら、こんな風に適当に重ねられてるんだろうか。うーん、ちょっと整頓したくなるよね。


 あれは……金貨かなぁ?あとは……よく分からないけどキラキラしたものがあちこちにあって、すっごく珍しいものばかりだった。


 もとの持ち主は冒険者だったのかな?

 かなりの素材の宝庫だった。

 僕はワクワクが止まらなかった。


 そこで真っ赤な分厚い皮を発見する。

「──これって、ワイバーンの皮かな?

 一回だけ見たことがあるよ。」


 ザラリとした手触りの、独特な感触を撫でる。確か叔父さんが避暑旅行の護衛の時に、身に着けていた胴当ての素材と同じだ。確かあの時ワイバーンの皮だって言ってた筈。


「この、1番大きいのは何かな……。

 んっしょ、よいっ……しょっと!!」

 僕は重ねられた箱の間に敷かれていた黒皮を、無理やり引っ張って引きずり出した。


「うっわああ、大きいなあ……。」

 硬い鱗のついた真っ黒い皮だった。

 頭も手足も尻尾もないから、多分おそらくこれでも一部なんだろうな。


 相当おっきな魔物ってことになるよね。

 これなら珍しいから売れるかも?

 僕はこれを持って上がることにした。


 けど、皮とは言っても、かなり重たくて、僕はマジックバッグに入れる為に、皮を引っ張り上げるのが大変だった。


 それとこれは……、ずいぶんと立派な鞘におさめられた長剣だった。やっぱり冒険者だったんだな。これも高く売れそうだね。


 なんか宝石みたいな飾りもついてるし、見た目だけならレジェンダリー級の剣にも見えるよ。マジックバッグの中に入れておこう。


「あ、これ……、ネックレス?」

 それは虹色に輝く不思議な石で出来た小さな首飾りだった。たくさん他にも宝石はあるのに、僕はひときわそれに興味をひかれた。


 何の石かはよくわからないけれど、魔力を感じるから魔道具かもしれない。

 僕は魔法のスキルはないけど、家庭教師に魔力の流れを感じ取る訓練をさせられてた。


 だから魔力自体はわかるんだよね。今更わかったところで、なんだけどさ……。

「うわぁ、キレイだなあ……。」


 手に取って見ると、本当に綺麗だ。

 角度によって色が変わって見える。

 まるで7色の光を閉じ込めているみたい。


 これはミーニャにプレゼントしようかな?

 とっても喜んでくれる筈だ。

 僕がそう思った時だった。


「……あっ!」

 僕の声に反応したのか、それともただの偶然か、その小さなペンダントは、突然目もくらむような強い輝きを放った。


「まぶしっ……!?」

 思わず目をつむった僕の手の中で、その光はどんどん小さくなっていき、やがて何ごともなかったかのように消えてしまった。


「あれ?……消えた?

 なんだったんだろ、今の……。」

 僕の気のせいとかじゃない筈だけど。

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