スキル【海】ってなんですか？〜使えないユニークスキルを貰った筈が、海どころか他人のアイテムボックスにまでつながってたので、商人として成り上がるつもりが、勇者と聖女の鍵を握るスキルとして追われています〜

第22話 アイテムボックスとは

　でも、魚はやっぱり人気なんだ、場所なんて関係ないや！僕は明日から商売を始めるのが、すでに楽しみで仕方がなくなっていた。

　魚を入れる為のタライと、お金を数える為の道具と、生活に必要なこまごましたものを購入して、僕は叔父さんと家に戻った。

「アローア魚は食べたことがあるか？」

　さっきの兄弟が売っていた魚だ。

　正直今まで見たことがない。

「いえ、見たことないです。

　うちではめったに魚は食べなかったし。

　父さまがお肉が好きだから……。」

　買えるお金がないわけじゃないけど、母さまは魚が好きで、父さまとエロイーズさんはお肉が大好きなんだよね。

　だから滅多に魚は出ないんだ。

「やっぱりそうか。

　料理してやるから、出してくれるか？」

　叔父さんにそう言われて、アローア魚を２匹スキルで出した。

　「お前もそのうち独立するつもりなんだろう？料理は出来たほうがいいぞ。見とけ。」

　叔父さんはそう言って、澄ましバターという、バターの使い方を教えてくれた。

　料理なんて初めてだから、僕は興味津々でそれを見ていた。

「バターは牛の乳から作るんだ。

　２つ離れた村で牛を育てていてな。

　そこで手に入る。」

　手際よくアローア魚をさばくと、ほんの少しだけ塩を振って、小麦粉をつけて余分な粉を払うと、澄ましバターを入れたフライパンでじっくりと両面を焼いていく。

　それから野菜くずのスープ。マッシュポテトは、僕も潰すのを手伝った。それとパンが今日の夕ご飯だった。

　毎回夕ご飯はコース料理が当たり前だったキャベンディッシュ侯爵家と比べると、かなり質素な夕ご飯だったけど、素朴な味わいがとても美味しかった。

「これが平民の基本のご飯なの？」

「１人につき１人前の肉や魚が並ぶのは、かなりぜいたくな方だ。

　うちは毎食１人前食べてるが、そうでない家がほとんどだと思ったほうがいい。」

　そうなのか……。僕は平民としては、かなり今贅沢をしてるんだな。

「それに、塩すらない家も多い。肉の焼串に味がほとんどなかったろ？」

「そうだね。」

「あれが普通なんだ。お前も取り引きでわかったと思うが、塩はまだまだ高い。

　だから流通が安定しているとは言っても、あまり平民の口には入らないのさ。」

　やっぱりそうなのか。

「叔父さんがＳランク冒険者だから、うちには塩があるってことだね。」

「ああ、そういうことだ。魚を売っていた子どもたちだって、売れ残りでもなきゃ、食卓に魚が並ぶなんてことはないだろうな。」

　そうなんだ……。

　うちの国は、他の国より平民もかなり裕福だって聞いてたのにな。食べられないものを売るって、なんか辛いな。

「でも、お客さんは結構いたね？」

「町の近くに住んでる奴らは、平民としては多少は裕福なほうさ。それか旅行者だ。

　宿屋に持ち込めば料理して貰えるしな。」

「……そういう人たちが、僕のお店のお客さんってことだね。」

「そうだ。普通なら魚一匹に銀貨なんて払ってたら、家族を食わせてやれないからな。」

　なら、もう少し手に入りやすい値段にしようかなあ。普段食べられない人たちにも、魚が食べられるようになったら喜ぶよね。

　うん、決めた。

　僕の店は、平民の味方にしようっと！

「ちなみに、１番安い魚ってなにかな？」

「そりゃ、エノーだな。それでもここいらじゃあ、銅貨８枚はするぞ？」

　エノーか。どんな魚なんだろ？

「よく食べられるものなのかな？」

「たくさん流通すればな。

　だが、ありゃあ冬が旬の魚だ。

　冬なら銅貨６枚のこともあるが。」

「僕、明日それを売ってみようと思うんだ。

　もちろん他の魚も売るけど、たくさんの人たちに魚を届けたいから。」

「……ふうん。まあ、やってみろ。

　失敗も勉強のうちだ。」

　叔父さんからすると、失敗する前提なのかな？でも、できる限り工夫して頑張ろう。

「それと、ここの奴らにお前のスキルことは知られるな。特に塩だ。あんなものを出せるとわかったら危険だからな。」

　やっぱり、理由があって、僕が解体屋さんにスキルを説明しようとして止めてくれたんだね。確かに、犯罪者だってたくさん入国してるんだ、知られないほうがいいよね。

「誰かに聞かれたらアイテムボックスってことにしろ。空間に物をしまえるスキルだ。

　中に入れたものが腐らないんだ。お前のスキルをごまかすにはピッタリだ。」

「やっぱりそういうスキルなんだね、なんとなく思ってたけど……。アイテムが出せるところが似てるね。わかった、そうするよ。」

　僕はうなずきながら言った。

「アイテムボックスは時空間魔法のようなものだと言われている。だから中に物を入れた状態で持ち主が亡くなってしまうと、２度と取りだせなくなっちまうのさ。」

「万が一そこに財産を丸ごと入れてたら、家族が困っちゃうね？」

　２度と取り出せないんじゃ、死ぬ前に全部出してもらわないといけないよね。

　金庫代わりに中に保管するつもりで、突然その家族に死なれたらおおごとだよ。便利なようで、ちょっと不便なスキルかもね。

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拙作で２番目にブックマークの多い作品を、先日本作が抜いたばかりですが、レビューの数字までついに抜きましたね……。

代表作は別作品なのですが、そちらのブックマーク数も、本作が早々に抜いてしまいそうな勢いです。

長く書いている作品になるので、複雑な気持ちも致しますが、とても嬉しいです。

本作と違い、ライト気味におさえたつもりのエログロバイオレンス作品になりますが、４部は頑張ってバトルシーンを書いておりますので、よろしければそちらもお目通しいただければ幸いです。