第5話 貴族の決まり
スキルは遺伝しないけど、ステータスは遺伝すると言われている。魔力が高い人特有の金色の目をした子どもが、生まれる可能性がかなり高くなるんだ。
つまり、オフィーリア嬢のような瞳の色の子どもがね。そうして生まれた子は、魔力量も多くて魔法も使える可能性が高いし、将来有望な貴族になれるってわけだ。
「そう……ですか……。」
「キャベンディッシュ家の跡継ぎとして、必要なスキルを持たないのですもの、仕方がないとわかりますわよね?」
自分の息子であるリアムを、跡継ぎにしたがっていたエロイーズさんは、勝ち誇った表情で僕に言った。
「お前はすでに15歳になり、成人だ。
他の貴族から婿入りの打診がなければ、平民として放逐することとなる。
それがこの国の法律だ。わかるな?」
「はい……。わかりました……。」
「兄さま!出ていっちゃうの!?
僕が大人になるまでいてくれないの?」
リアムが泣きそうな表情で、驚いて僕を見つめる。
「婚約者がいたからね。今更僕に婚約の話なんてないよ。それに使えないスキルを持つ僕を、わざわざ欲しがる貴族なんてないさ。」
寂しがるリアムに微笑んだ。
僕はリアムみたいに優秀じゃないから、キャベンディッシュ侯爵家の跡取りじゃなくなった僕に、魅力を感じる貴族はいないよね。
「それに平民も悪くないよ?」
笑顔の僕の言葉に、リアムは納得がいかなそうな顔をする。うん、平民。悪くない。
これで僕ははれて自由だ!!
悪くないどころか最高じゃないか。だってこれでミーニャに結婚を申し込める!ああ、なんて素晴らしいんだろう。ミーニャとの結婚生活が今から楽しみで仕方がないよ!
ミーニャ待っててね!独り立ち出来たらすぐにでもプロポーズに行くからね!!
「兄さまは能天気過ぎますよ……。」
リアムが困惑しながらそう言う。
まあ、侯爵家の跡継ぎから、いきなり放逐と決まったんだもんね、普通はもっと嘆いてもおかしくない。エロイーズさんですら、僕のガッカリした顔を期待してたのか、鳩が豆鉄砲を食ったような表情で僕を見ている。
「──そ、そうかな?」
平民になれるのが楽しみ過ぎて、もろに顔に出ちゃってたみたいだ。気をつけないとなあ。気を抜いたら小躍りしだしそうだもの。
それにしてもどうせ放逐されるならもう少し早く言って欲しかったな。そしたらもっとたくさんミーニャとの時間が過ごせたのに。
まあそんなこと言っても始まらないよね。これからたくさんの時間を一緒に過ごせるようになるんだし、今に感謝しないとね!
心残りなのは、まだ小さいリアムを守ってやれなくなることくらいだ。ごめんね、君が成人するまでそばにいたかったけど、元貴族と貴族は、関わることが許されないんだ。
「……まあ、ただ、ここまで跡継ぎとして育ててきたお前だ。まったく役に立たないということもないだろう。」
と父さまが言った。
「分け与えてやれるような領地はないが、私の弟が管理している土地があるのは知っているな?そこに住めるよう打診しよう。」
冒険者を引退した叔父さんは、土地を購入してそこで細々と暮らしているらしい。叔父さんの家は我が家からはかなり遠い。ミーニャにも簡単には会えなくなってしまう。
でも、何はなくとも、まずは住むところだよね。その提案に僕は飛びついた。本来なら騎士団だとか、先に就職先を見つけておくものなのに、僕には急過ぎて何もないからね。
このままじゃどこに行くあてもなくて、冒険者になって細々と採集クエストをこなすか物乞いになるしかなくなっちゃう。僕の反応を見て満足したのか、父さまは話を続けた。
「返事があるまでに、荷物の整理をしておきなさい。持ち出せる物は限られているから、注意するように。」
「わかりました。」
貴族の子どもの持ち物は、当主である親が貸し与えたものということになっている。
だから家を出るとなると、色々と返さなくちゃならなくなるんだ。
そう言われて、叔父さんから返事があるまで、部屋でのんびりと過すことになった。
ふう……。こんなことになるなんてな。
でも、こういっちゃなんだけど、貴族なんて向いてないと思ってたし、逆にチャンスだよね。なんとかスキルを使いこなしてお金を稼いで、ミーニャに結婚を申し込みたいな。
僕は既に平民になった気持ちで、毎日そのことばかりを想像して楽しく過ごしていた。
だけど少しして、それが寂しい気持ちにとって代わった。
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どうやって見つけていただいているのか分かりませんが、イイネをつけたりブックマークをして下さる皆さんのおかげで、非常に励まされており、他の方にも見つけていただきやすくなっていると思います。
今後ともよろしくお願いいたします。
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