謎の工場

岸亜里沙

謎の工場

このまちには不思議ふしぎ工場こうじょうがあります。


毎日毎日まいにちまいにち一生懸命いっしょうけんめいなにかを つくっているみたいなのですが、だれなにつくっているのか、かりません。おかあさんにいても、おじいちゃんにいてもかりません。先生せんせいいてもかりません。


モクモクとたくさんのけむりしながら、いつもなにかをつくっています。


煌々こうこうとライトがともされ、よるでもずっとあかるいため、まるでそこはいつも昼間ひるまのようです。


あるぼく友達ともだちたち3にんで、その工場こうじょう探検たんけんかうことにしました。

ぼくたちで、その工場こうじょう秘密ひみつかそうと。


学校がっこうやすみの日曜日にちようびぼくたちは公園こうえんあつまりました。


「これからなぞ工場こうじょう探検たんけんかう!隊員たいいん整列せいれつ!」

リーダー気取きどりの琢磨君たくまくんが、ぼくたちにこえをかけます。


「いいから、さっさっとこうぜ。おそくなったらママが心配しんぱいするから」

光明君みつあきくんいました。


「おまえ、クールだな。探検たんけんなんだからたのしくこうぜ」

琢磨君たくまくんすこ仏頂面ぶっちょうづらになりました。


「いいから、はやこう。リーダー、おねがいします」

ぼく琢磨君たくまくんこえをかけました。

リーダーという言葉ワード機嫌きげんくしたようで、すこくさそうです。


「よし、隊員たいいんたちよ、ついてこい!ラララ~♪」

琢磨君たくまくん颯爽さっそううたいながらあるしました。


公園こうえんて、小高こだか丘陵きゅうりょうさきの、はやしなかすすみ、30ぷんくらいあるくと、ようやく工場こうじょうえました。

ちかくまでて、ぼくたちはビックリしました。たかそびえる外壁がいへきは、まるで中世ちゅうせいのおしろ城壁じょうへきみたいです。


入口いりぐちさがしてみよう」

たかかべ茫然ぼうぜんとしている琢磨君たくまくんわりに光明君みつあきくんいました。


かべ沿ってぼくたちはあるき、入口いりぐちさがしました。足元あしもとには沢山たくさんえだいしころがっていて、あるきづらい場所ばしょです。

そら見上みあげると、工場こうじょう煙突えんとつからは、相変あいかわらずモクモクとけむりています。


「ねえ、へんだよ!」

ぼくいました。


「ここはさっき、ぼくたちが場所ばしょだ。壁沿かべぞいを一周いっしゅうしたけど、入口いりぐちかったよ!」


本当ほんとうだ!どうしてだろう?この工場こうじょうはたらひとは、何処どこからはいっていくんだろう」

琢磨君たくまくんいました。


「もしかしたら秘密ひみつ地下通路ちかつうろがあるのかも」

光明君みつあきくんが、腕組うでぐみをしながらつぶやきました。


「よし、ちかくをさがしてみよう!」

琢磨君たくまくんいました。


ぼくたちは手分てわけして、あたりをさがしてみました。だけどなにもありません。


なにいね」

ぼくいました。


「ねえ、あそこにひとるよ」

光明君みつあきくん指差ゆびさした場所ばしょると、キノコりをしているおじさんがえました。


「あのひといてみようよ」

光明君みつあきくん提案ていあんで、おじさんにいてみることにしました。


「すみません、おじさん!」

琢磨君たくまくん大声おおごえでおじさんにはなしかけました。

そのこえにおじさんはビックリしたようです。


「おお、ビックリした。みんな、こんなところなにしてるんだい?あぶないからかえったほうがいいよ」


ぼくたちこの工場こうじょう探検たんけんたんです。でも入口いりぐちつからなくて」

琢磨君たくまくんいました。

するとおじさんは、かおをしかめました。


「この建物たてものなにりたいのかい?」

おじさんはいました。


「おじさん、ってるの?」

光明君みつあきくんかがやかせながらいました。


「ここは火葬場かそうばだよ」

おじさんはいました。


「え、火葬場かそうば?」

光明君みつあきくんいました。


「そう。ここは特別とくべつ火葬場かそうばなんだよ。わたしたちはみんなこの火葬場かそうばから現世げんせもどるんだ」


現世げんせもどるって?」

ぼくはおじさんにたずねました。


わたしきみたちがんでいるここは所謂いわゆる天国てんごく』。あのばれてる場所ばしょなんだ。現世げんせきていたひとくなると、そのたましいが、このあの復活ふっかつするんだ。そうして、このあのでまた寿命じゅみょうむかえたひとたましいが、この火葬場かそうばからまた現世げんせもどってあたらしいいのちとして誕生たんじょうするわけなんだ」

おじさんは丁寧ていねい説明せつめいしてくれましたが、ぼくたちはおじさんのはなしいてしばらだまんでしまいました。


「じゃあ、今僕いまぼくたちはんでるってこと?」

光明君みつあきくんがおじさんにたずねました。


「うーん、かんがかたによってはそうなるけど、ぎゃくにこのあのきているともえるのかな」

おじさんはこたえました。


「でもなんでおじさんはそんなことってるの?」

ぼくはおじさんにきました。


多分たぶんおぼえていたんだな。わたし何回なんかい現世げんせとあのったりたりしてるはずだからね」

そううとおじさんは、のぼけむりをゆっくりと見上みあげたのです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

謎の工場 岸亜里沙 @kishiarisa

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ