第61話
「ヨイチさんは⁈」
慌てて飛び出していったヨイチを追ったユナが作戦室まで戻ってきていた。
「分からない…、シェリーに飛び乗ってそのままこの国を出て行ってしまった…」
「そんな…」
パペットの軍勢が東部侵攻をはじめてから二時間ほどが経過している。
侵攻の速度は速くはない。
到着予想時間には、四十六時間とタブレットに表記してあった。
「戻るまでに準備をしておいてくれって…、それだけ言って…」
ヨイチの伝言をメンバーに伝えるユナ。
「準備ってこの人数でどうすれば…、戻るまえに攻撃されでもしたら、どこかが必ず穴になってしまいます」
パペットの軍勢は現状三つの隊に分かれてここを目指している。
先のスカジの提案では、このままここで待機するか、三つに分かれて信仰される前にたたくかだった。
だが、ヨイチが抜けた今、対処できる戦闘人員が人数がほとんどいない。
「三つの隊のそれぞれの到着時間は一緒なのか?」
「正確には少し違うが誤差みたいなもんじゃな」
『他にこの国に戦える人いないのですか?』
「国民は、みなパペットの軍勢に恐れをなしとる。シェルターで引きこもりじゃからのう…」
パペットの脅威、そして自分たちの今までの発明や研究が打ち破られたショックからか、国民はおじぃと護衛を除く数名以外は外へ出てこれる状態ではなかった。
「じゃから、一つの隊はわしと護衛が受け持つ。ほかの二つをおぬしらに任せたい」
「おじぃ、大丈夫なのか?」
マグネイシアの人々は戦いとは遠く離れた世界で過ごしている。
ユナが心配するのは無理もないだろう。
この国での争いごとは、暴力などではなく、発明や研究の地位によって起こっているのだから。
『こう言っては何ですが本当に大丈夫なんですか?パペット相手に生身の人間がとても戦えるとは思えないのですが…』
「心配無用」
そう言ったおじぃがタブレットのボタンをたたく。
するとゴゴゴゴゴゴゴという音が響き渡り地面が揺れ始めた。
『今のは揺れは…?』
外へ歩き出したおじぃについていく面々。
「なにもわしは、今まで発明品だけを作ったいたわけではない」
地上から出たメンバーが目にしたものは先ほどまでにはそこになかった地中のシェルターだった。
シャッターの横にあるボタンをおじぃにが押す今にも壊れそうな音を立ててシャッターが上がりだした。
「こ、これは…」
「こんな時のために作っておいてよかったわい」
上がりきったシャッターの先にあったのは、迷彩柄が雑にペンキで塗られたボロボロの戦車だった。
「昔な、発明品と並行して兵器を作ったことがあってのう…。ここにあるのがそれじゃよ」
「おじぃの兵器…」
それをそっと手で触れながらユナはそうつぶやく。
『もうこれしかないですね』
今の現状からスカジはそう思った。
『このオンボロ戦車が…、今の私達の救世主です』
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