第59話
「どういうことじゃ…?」
「どうした?おじぃ」
作戦室にある大型のモニター。
マグネイシアの領域全土が表示されているマップには、敵の配置も記録されている。
赤色に表示されているパペットの軍勢の動向が、リアルタイムでその動きが知らされる使用になっている。
この情報は、機械行使であるおじぃが作成したドローンから得られたものであるらしい。
人工知能のパペットが動き始めて、アイ規定が崩壊。人工知能にはもっと優れた機械を、ということで、おじぃもその開発に着手。
さすがは機械行使とよばれるほどの腕前で、瞬く間に敵のレーダー検地を遮断でき、見つかりにくい小型のドローンを開発することに成功。
敵を索敵する唯一の方法として現在フルに活動している。
「動いとる…」
「なにがです…、あ!」
マップに赤色に表示されているパペットの軍勢が少しずつ動き始めたのだ。
「どこのエリアが?」
「マグネイシア北部、五千のパペット兵がここに向けて動き始めておる」
「そんな、なんで急に…」
『もしかしたら…、敵もこちらを知るすべがあるかもということですね』
「ユナたちが来たのがバレておるということか…」
その対処の速さは、人工知能における処理速度の速さが機能していると言えるかもしれない。
常に最善を。
常に最適を。
正解でなくとも、近しい答えを。
パペットたちのその答えが、敵の排除。
増援が動きを見せる前にたたくことだった。
作戦はおろか、まだなにも決まっていないヨイチ達はさすがに面喰ってしまう。
『どうしますか?』
冷静なのはスカジだ。いつもお調子者のスカジだがこういう時は経験がものを言う。
様々な状況下に置かれたことがあるスカジは、周りの動きを感じて準備を促す。
『正面突破ではなさそうですね。マップの位置情報を見る限り…、三つの隊にわかれているようですね…』
赤色の位置は三分割され、正面と左右に分かれて進軍している。
『このまま待機して迎え撃つか、三方向に分かれて対処するか…』
スカジの案に黙り込む面々。
迎え撃つにしても、敵のところに向かっても人手が足りない。戦力にならないおじぃをのぞくと動けるのは、ヨイチ、ユナ、アンの三人だ。
単純計算、一人二千体近くを相手しなければならない。
圧倒的に人手が足りないのだ。
「どうすれば…」
困惑するアン。
結剣持ちのアンとユナは、パペットたちを相手どることができるだろう。
結剣の本当の力を引き出すことができればの話だが…。
しかしヨイチは、ハンドガンしかない。
さすがに、一丁では無理に近しい。弾薬も量があるわけではないのだ。
必ず弾薬が枯渇し、パペットの軍勢に埋もれてしまう。
「ここへたどり着くまでの時間は?」
「北部からは多少距離がある…、タブレットの到着予想的には二日ほどかのう…」
「二日…」
ヨイチはその日数を聞いてとある可能性がうかんだ。
――間に合うかもしれない…。
「ユナ!シェリーにクロノスの力を使ってくれ!」
「どうした急に…」
「いいから、頼む!」
シェルターからユナを連れ出し、シェリーのもとへ急ぐヨイチ。
何が何だか状況をつかむことができていないユナはなすがままに連れて行かれる。
「頼む!早く!」
「落ち着いてきなよ」
そう言いながらクロノスを鞘から出し、効力を発揮する。
「僕が戻るまでに準備を、」
すべて言い切る前に、ヨイチは時を置き去りにシェリーとともに出発した。
「なんなんだ、急に」
その後ろ姿を見ながら、ユナは騒々しいと思っていたが…、
「でも、準備はしておかなきゃな」
そう言ってシェルターの方に戻っていった。
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