第58話
機械工国・マグネイシア南部、政府領土の中央に立つ、厳格なレンガ造りの建物である司令部。
その周辺を囲うように数千を超えるパペットが待機していた。
司令部の奥で状況を見張るのは、パペットのリーダーだ。
目の前に流れるモニターから現在の侵略データや敵の状況を読み取る。
昆虫型ロボットやドローンに搭載されたカメラの映像から人類の情報を収集し、対応にあたる。
パペットの軍勢はユナたちよりもはるかに先を歩いていた
これが、人工知能。
学習し、発達し、成長し…。
ついに人間を追い詰めるところまできた。
――アト、スコシ…。
流れるモニターをみながらパペットのリーダーは、奥の方に移る奇妙な影をとらえた。
その映像はマグネイシア東部。
ここまでの距離的には、まだまだ遠く、届く可能性はないと断定していた場所からの映像だった。
ヨイチ達がこの国に入国し、機械行使と会ったところまでは見えていた。
――ナニガ、デキル?
我々に負けた人間が今更あがく必要はないだろう。
鼻で笑いながらモニターを切り、椅子に腰かける。
残すは侵略地域はマグネイシア東部。
スラム街の人間が大多数をしめるこの領土の人間に、何かできるわけでもないと踏んでいるパペットのリーダーは、この領域を放置していた。
ただただ、助けを待ち、自分たちの力があまりにも小さすぎてなすすべもない、何も起こすことができない哀れな人間たちの集団という認識だった。
だが、援軍が来たとなると話は別だ。
人工知能はまず、相手を知って、データを収集し、学習するステップを踏まねばならない。
それを反復し、反芻し、復習することで完全に対応することが可能になる。
だが、このままでは、まったく無知の敵がきてしまって、そちらの対策に時間を割いてしまい、目的を達成できない。
無知は
ならば、先手を打って情報を収集しなければと考えたパペットのリーダーは、北部の軍隊、およそ一万のパペット兵に脳内無線で指令を送る。
――北部兵、北部兵、動け。
ピー、ピッピ。
――敵に増援あり、敵に増援あり。
ピピッーピッ。
――見つけ次第情報を共有、機械があれば…、
――排除しろ…。
ヨイチ達がマグネイシアに到着してから半日。
北部のパペット兵、約五千の軍勢がマグネイシア東部めがけて進軍を開始した。
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