第54話

「こ、これは一体…、どうなっているんですか?」

『なぜ、入れてもらえないんですか』


 ヨイチ達一行は、温泉街オオナムから、水上都市ネプトュームにむけて旅をスタート。

 オオナムで旅のメンバーもとい、ヨイチ達の用心棒に新加入したユナが、時結剣クロノスの能力を使い、シェリーの身体能力をレジスト。


 機械工国マグネイシアまで一気に到着するかと思われたが、ユナを除くメンバーの乗り物酔いを誘発。


 そして、ドーピングされたような症状だったシェリーが、クロノスの能力でやはりダメージを疲労を蓄積しており、旅の進行する速度は激減。


 結局、当初は一週間で到着すると見込まれていたが、なんと二週間もかかってしまう結果となった。

 食料も、旅の用品も底をつきかけた時に、機械工国マグネイシアが見え、助かったと思ったヨイチ達は急いでマグネイシアまで直行。


 現在、アンたちは機械工国マグネイシアの検問に来ていたのだが…、

 「すまない。今は外部の人を通すことはできないんだ」


 検問所の護衛に入国を止められていた。

 「何かあったんですか?」

 問題があったことを察知したヨイチは、護衛に尋ねるが「話すことはできない」と、流されてしまっている。


 『どうしますか?』

 「中に入れてもらえないんじゃ…、しょうがないよね」


 何とか中に入る方法を模索していたヨイチ達だったが、護衛の目の前に立ったユナがスッとあるものを差し出して見せた。


 「こ、これは!」

 「あ、あなたは…!まさか」


 ユナが見せたのはクロノスだった。

 それを見た護衛が何やら慌ただしくなっている。

 そんな状況を見向きもせずユナは一言、


 「私が帰ってきた。機械行使に伝えて」

 「わ、分かりました!」


 というと、護衛の一人がその場所を飛び出るように走り去っていった。

 残ったもう一人の護衛が入国の手続きをはじめる。


 「私たちも入れるんですか?」

 「はい、ユナ様のお連れとなれば無視するわけにもいきません」


 その後、入国の手続きを終えた、ヨイチ達は機械工国マグネイシアの中へと足を踏み入れた。


 肌に感じるは鉄の風。

 「なんだがにおいますね」

 「ガソリンとかオイルとかが日常的に使われておるからな。町中に、いや国中にその匂いが染みついている」


 独特のオイルのにおいは、少々鼻につく。

 なんといっても町全体が灰色だった。


 機械、スクラップ、発明品…、所々に道の脇に捨てられたものを見て、機械工国マグネイシアの国の雰囲気がうかがえた。


 「ここは国のどの部分なんですか?」

 「む、確かマグネイシア東部だと思う。おじぃのいるスクラップエリアもこの東部に位置してるんだが…」


 そう言いながら周りを見渡すユナは何やら落ち着かない様子だった。

 その違和感をヨイチ達も感じ取っていた。

 感じ取らざるをえなかったのだ。


 「なんで…」


 その違和感の正体…、


 「なんでだれもいないんだ?」

 

 ユナは目の前の光景を見て、呆然とそうつぶやいた。


 町だけが取り残されたように、誰もいなくなっていたからである。

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