第四章 機械工国・マグネイシア 東部戦線編
第53話
人工知能――。
機械工国マグネイシアでは、その分野についての研究、発明を発明家や研究者たちはしてきたことはなかった。
いや、するべきではないという、判断にいたったというのが妥当ではなかろうか。
それはなぜか…。
人工知能は発達する。
はじめは小さい虫や小動物のモデルを通して学習プログラムの反復。
歩行、計算、そのほかにありとあらゆる可能であるものに、学習して、適応していく。
それを人型のパペットへと移し替えるとどうなるだろうか。
体のサイズ変更に対する不具合、媒体のキャパオーバー、プログラムの不正確さ…。
様々な問題が発生するだろう。
だが、もう一度言おう。
人工知能は、発達する。
その問題を、もし自力で解決できるような、性能を持つ人工知能が現れたら?
不具合を自動修正するような人工知能が現れたら?
プログラムを自力で書き換えることができる性能を身に付けたら?
まず間違いなく、この世界の人類は知能において、追い抜かれることだろう。
それは、身体能力についても例外ではない。
自力で修正ができるのであれば、自分の体のサイズや動ける領域、身体能力を上げるための学習を自分でするだろう。
それに見合ったパーツを自分で作り出し、探し出し、合成させる。
そうすれば、知能、身体ともに人間を凌駕し、脅かす存在となってしまう。
その人工知能が、いずれは人が発明したものよりも、数倍、数十倍以上の発明品を作り上げてしまったら…、この国に生きる発明家や研究者たちは存在意義をなくしてしまう。
そう考えたマグネイシアの人々は、人工知能についての規定を設けた。
作っても最低基準まで…。
材料のランクは最下級…。
プログラムも低レベルなもので…。
アイ規定――。
人工知能を英語の頭文字をとって定められたその規定を、人を超えないように…、自分たちの尊厳を守るように…、ここまで機械工国・マグネイシアの人々は規定に準じて発明してきた。
ピッ、ピピピピ…。
その規定は、今日に至つても破られてはいない。
数年前、ある雨の日…。
ズゥゥン…。
発明品の残骸…。機械の屍。
スラム街にあるスクラップエリア。
その瓦礫の残骸の中で、最低基準で、最下級で、低レベルな人工知能が…、
ズゥゥン…。
静かに起動した。
人工知能は…、発達する。
ズゥゥン…、ピッ!
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