第52話
「人質…」
『それって…』
「モンステラの食事処の店主と一緒じゃないですか‼」
ユナの発言に憤りを隠せないユナはそう吐き捨てた。
ラティモスのやり方はこの時から変わっていなかったのである。
家族を人質に、金銭をちらつかせ仕事をさせる。
まったくの外道のやり方はこの時から健在だった。
「私か新しい結剣か…、ベインにそう迫られたおじぃは、苦しそうに発明を始めた」
それはもう狂ったように…、毎日寝る暇もなく発明を続けたらしい。
そしてとうとう心身ともにユナのおじぃは壊れてしまった。
「泣くんだ。発明品を作りながら…、いつもあんなに楽しそうに作っていたおじぃが、泣きながら苦しそうに発明品を作ってるんだ…、それで倒れた」
「そんな…」
『ベイン、ラティモス…、やり方がクソすぎますね』
スカジもラティモスのやり口に思うところがあるらしい。
ぶつぶつと文句を言いながらユナの話を聞いている。
「それで、私は私を売った」
「それは、どういう意味なんですか?」
いまいち、つかめないアンにユナは説明を続ける。
「クロノスを使えるのは私だけだからな。おじぃの発明を止めてもらう代わりに、結剣が使える私をラティモスの一員にする条件を付けた」
「それが、ユナがラティモス入った理由」
「望んで入ったわけではなかったのですね」
「当たり前だ、なんならラティモスを今でも恨んでいる。抜けれてせいせいだ」
そのあとのユナの生活は、オオナムで話した通りだ。
ベインから受けた仕事はある国を地図上から完全に消すこと。
そうすれば金銭を受け取ることができ、故郷への仕送りにあてていたとユナは説明した。
ヨイチ達が思っていたこととは真逆でユナは故郷思いで家族思いのいい子だったのだ。
「ありがとう。話してくれて…、おかげでユナのことが知れたよ」
「本当ですね。私も似たような境遇の時があったので余計に親近感がわきました」
「そうか、ならよかった」
一仕事終えたようにユナは背伸びと欠伸をする。
その仕草は、童顔な顔と小さめの身長になんだか似合っていてヨイチ達は少しだけ笑みがこぼれた。
「あ、そうだ」
思いついたようにユナが声を上げた。
「呼び捨てで読んでもらって構わないし、ため口でも大丈夫だが、私が多分一番年上だから礼儀はわきまえるようにな」
「え?」
『いやいや、何言ってるんですか。完全に妹キャラ路線に…、』
「そ、そうですよ~。冗談ですよね?」
恐る恐るユナの顔を見たアンにユナは衝撃的な言葉をつづけた。
「私の年は三十二だ」
時が止まり、場が凍る。
まるでクロノスを使っているような感覚にアンとスカジは襲われていた。
『ヨ、ヨイチ、私を蹴ってください』
そういうスカジを思い切り蹴り飛ばすヨイチ。
『い、痛い!夢じゃない!あの容姿はロリじゃなくてアラサーの姿なんですか‼』
「うるさいぞスカジ!それに痛いのは絶対俺の方だろう!」
片足ではねるヨイチ。結剣、特にスカジはとても固い。ゆえにければ痛い。
「そうです!スカジ、失礼ですよ!」
『アン様だって信じてなかったくせに!』
そしてワイワイと騒ぐ光景を見てユナは…、
「なんだか馬鹿にされている」
ヨイチ達の反応に釈然としていない様子だった。
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