第51話
「私の故郷は、機械工国・マグネイシアだ」
「そうだったんですね」
ヨイチ達の次の目的地、機械工国マグネイシアはユナの生まれ育った場所だった。
「マグネイシアのボロボロ機械のゴミが捨てられたスラム街で私は生まれた」
「スラム街で…、大変だったんだね」
マグネイシアは他の国と比べて貧困国家である。
その経済的効果は、ララナットが団長を務める陽光の騎士団がある自由都市モンステラよりも低い。
経済効果が落ち、ほかの国からお金を借り、返せない借金が増す一方。
一発逆転を狙う、博士といわれる人たちは、そのお金で誰もなしえたことのないモノづくりをすることが生きがいである。
ゆえにその人生の一発勝負に負けた人は、その借金を返すべくスラム街で、また発明を続けるしかないそうだ。
「私が五歳になるころには父も母もいなくなっていた」
「そんな…、」
「べつにそんなにたいしたことではない」
マグネイシアで孤児になることは珍しくない。
借金取りに追われたもの達の末路は、だいたいきまっているからだ。
これが普通で、これが日常。
グレシャー帝国と似ていて、機械工国もある種、くるっているのだ。
「空腹で死にかけた私を、おじぃが助けてくれた」
「そのおじぃって言う人が親代わりなんですね」
「そう、機械行使っていって結構有名」
ふふん、と自慢げに胸をはるユナ。相当その人物になついていることがうかがえた。
「クロノスを作ったのもおじぃ。おじぃ最強なんだ」
「結剣を作るだなんて…」
『とてもじゃないですが信じられません』
聞くにユナの育ての親であるおじぃは、スラム街の発明家だったそう。
ユナを拾い、育てながら日々捨てられていく機械の残骸を繋げ合わせ、時結剣クロノスを作り上げた。
それをマグネイシアに報告したおじぃは勲章をもらえるほどの地位を獲得した。
「でも、おじぃは辞退した」
「辞退?そうなんですか?」
「勲章をもらったら発明品を提出しないといけない」
マグネイシアでは、発明品を報告し、発表会を行う。
そしてその発明品の出来不出来で勲章をもらえ、多額の賞金を得ることができる。
その発明品のレベルに応じてより高い地位の勲章、そして賞金が得られるがユナのおじぃはなんとそれを辞退。そのまま、スラム街に戻ってきたそうだ。
さすがにマグネイシアとしてもこのまま結剣を手放すのは惜しいと思ったのか、すぐに世界に発信。
人が作った結剣として初めて登録された。
「一人娘のおもちゃを作っただけで、そんな勲章はもらえないからって断った」
「す、すごい」
『ユナへのおもちゃが結剣だなんて…』
「おじぃはほんとすごい」
うんうんと両手を組みご満悦な表情になるユナ。
「じゃあ、なんでラティモスに?」
「あぁ、それは…」
少しだけ暗い影のある表情になったユナはぽつりとつぶやいた。
「私がラティモスの人質にとられたからだ」
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