第47話

そこからアンとヨイチはユナにこれからの行動について話をした。


 ララナットからの情報と隠れて盗み聞きをされたのでは隠している必要がないと判断したためだ。


 ひとしきりの説明を終えた後、ユナはふむ、と言って言葉を続ける。

 「なるほど、だから二人をあの場所に向かわせる必要があるのか…」

 「どういうことなの?ユナ」

 「私が用心棒になると言った時のことを覚えているか?」

 「たしか、私たちをある場所へ送り届けるって…」


 ユナはこれからの移動中の用心棒としてララナットから派遣された。その目的はある場所へ二人を安全に届けるため。


 その場所とは…、

 「そうだ、その場所は水上都市ネプトューム。グレシャー帝国に行ける候補として挙がっているところだ」


 水中都市ネプトューム。


 大部分が水でおおわれているその都市は、その水を利用した商業を行っている。

 近年では、海水の上昇が激しく、大半が海面より下にあるが、現代技術を駆使し、海中でも暮らすことができるようになった。


 そのため水上都市と呼ばれていたが水中都市と名称が変更されている。

 都市全体が絶景といわれるほど、透き通るような水と水上の建造物とのコラボレーションが素晴らしく世界有数の観光名所と言われている都市だ。


 「それならララナットは…、」

 「私たちをグレシャー帝国に向かわせようとしている…?」

  

 それは二人にとって吉報だった。ただでさえ場所を探すのに苦労していたが、ユナという用心棒で以前より安全が確保され、グレシャー帝国へとつながる場所を知ることができた。


 「でも、なんでララナットがそんなことを?」

 「グレシャー帝国とラティモスのつながりを感じ取ったララナットが、陽光の騎士団を引き連れて、グレシャー帝国に強制尋問に向かうそうだ」


 ラティモスは大罪人を多く抱えているグループだ。

 グレシャー帝国にそのつながりの痕跡があるとなるとさすがに黙ってはおけない。


 「なるほどね。じゃあそれについていけば…」

 「グレシャー帝国に行けるってことですね!」


 ようやく長いトンネルを抜けた二人は安堵の表情を浮かべた。


 「決行は半年後。それまでにはネプトュームに向かわないとおいていかれるからな」

 「ここからネプトュームまでって距離でいったらどのくらいなんですかね?」


 アンは先ほどいた本屋から買った資料をパラパラめくる。

 「えっ?」

 「どうしたのアン?」

 地図のページと止まったアンは絶句した。


「あぁ、言い忘れていた。ネプトュームはめちゃくちゃ遠いから、二日後にはここから出発するぞ」


 そう言ったユナの勘定の抑揚があまりない顔をアンは見てわなわな震える。


 地図から見える温泉街・オオナムは国や都市を五つまたいだ向こう側に位置するほどの場所にある。

 なんなら地図の折れ目でほぼ見えない世界地図の裏のほうにまでその場所は差し掛かっていた。


 今までのようなウタタカタウンやオオナムは比較的近い距離にある近所の町のような感じだ。移動をする期間も一週間、早ければ数日でつくことができるだろう。


だが国や都市をまたぐのは話が違う。

普通、一つの国や都市を渡るのには一ヶ月を要する。ただ単に広い領土をリザードで走り抜けるには、そのくらいの時間がかかってしまうのだ。


「半年までにつくでしょうか?」


アンの中にまた不安の種が生まれた瞬間だった。

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