第46話
本屋から追い出されたヨイチ達は、新しい用心棒であるユナを連れて宿泊している【十六夜】へ戻ってきていた。
ヨイチの部屋に集まった面々はもう一度ユナからの詳しい説明を求めていた。
「用心棒っていうのはどういう意味なんだ?」
「意味はそのまま。そこの少女と同じことを私もやるということだ」
ユナはアンに指を指しながら話す。
「お前たちはちょっと目立ちすぎる。スカジを使って大会に参加しただろ」
「なんでそれを…」
「ウタタカタウンの警護施設から陽光の騎士団に情報は入っている。君たちの襲撃に関与したダース、それとベインは、いま国際指名手配中だ」
「そんな、師匠が…」
「それに陽光の騎士団にそこまで情報がいっているなんて…」
陽光の騎士団団長のララナットは、ウタタカタウンでの騒動から二人の安全が絶対ではないと判断し、ユナを用心棒役として配置するように手配したらしい。
ラティモスの一味、ひいてはグレシャー帝国に何かしらスカジの情報がいけば、脱国したアンを狙いに来る可能性が高いと踏んでいた。
「地図を消す話から気づいていると思うが…、ぶっちゃけ言うと、ラティモスとグレシャー帝国は繋がっている」
「え⁉」
「やっぱりそうか…」
「ヨイチさんは気づいてたんですか?」
「うん、確信はなかったけどね」
ヨイチの予想通り、ラティモスはグレシャー帝国と繋がっていた。
ユナの言っていることをいきなり信頼することはできないが、ダースとベインがアンだけを本気で襲撃したこと、そして地図からグレシャー帝国を消した張本人が今、目の前にいることが何よりもの証拠だった。
「話は分かった」
「理解が早くて助かる、それじゃあ…、」
「だけど、どうしても確認をしなくちゃことがある」
「なんだ?」
ヨイチには、まだこの話で確認しておかなければいけないことがあった。
「君自身はは安全なのか?」
「なるほど、たしかに」
ヨイチの懸念。それはユナが用心棒をするということだった。
もともと、ラティモスに所属していたユナは地図からグレシャー帝国を抹消する役割を受け、オークション会場では、時結剣クロノスを使って、ラティモス側の用心棒をしている。
なにより、アンと本気で戦っているのだ。
敵として、そして犯罪グループに所属していたユナをいきなり用心棒として迎え入れるというのは、いくらララナットの厚意とはいえ、受け入れがたいことだった。
「それなら心配ない。私はいつも見張られている」
「どういうことなんですか?」
「分からない。ララナットの結剣の効果だそうだが…」
それまであまり感情のなかったユナだったが、少しだけ顔が青白くなる。
「あんまり言いたくない。だけララナットのその効果があるから絶対に安全だと言い切れる」
『ヨイチ、この子が言ってることは本当です』
「スカジ?」
それまで黙っていたスカジが声を上げた。
『ララナットの結剣の効果が彼女に付与されているのであれば、彼女は一切私たちには手出しできません』
「そうなの?」
スカジにいぶかしげな目線を向けるアンはまだ信じられない様子だ。
『大丈夫です。ここは私を信じてもらえれば』
「…、分かった、どのみちこのまま二人で旅をしていると危険な状態が増すばかりだからね」
ヨイチは覚悟を決めてユナに向き直る。
「よろしくね、改めて僕はヨイチ。えっと…、ユナでいいのかな?」
「それで大丈夫」
「私はアン。ユナ、よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしく」
互いに握手しあう三人。こうして新たな用心棒を加えたアンとヨイチ、そしてスカジは、目的をなすために再び行動を開始した。
『ヨイチ、親睦を深めるために。温泉で裸の付き合いでもしますか?』
「ふざけんな!」
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