第45話

 「なんであなたがここに…?」

 「ていうか地図からグレシャー帝国を消したって?」

 『そもそもあなたは捕まったはずでは?』


 いきなり現れたユナに動揺する二人とスカジ。

スカジの言う通りユナはララナット率いる陽光の騎士団に身柄をとらえられているはずだった。


それなのになぜここにいるのかが甚だ疑問だが、更に地図から場所を消した張本人ということもあってすでに話が見えなくなっている。


 「むぅ、質問が多い…」


 質問攻めされているユナは若干うんざりしているが二人にとっては待ち望んでいた新情報だった。


 「まぁいい。とりあえず一つずつ教える」


 ユナとヨイチの顔の前でユナは人差し指を一つ立てた。


 「まず、なぜ私がここにいるのか。それはララナットの指示だからだ」

 「ララナットの?」

 「そう。この隊服を見れば分かると思ったのだが…、お前たちは私の顔しか見ないから分からなかったんじゃないか?」


 ふふん、と言って見せびらかすように隊服を見せるユナ。

 自慢げに見せているその隊服は袖や丈が何もかもあってなくて、どう見てもサイズが大きい。


 だがそのデザインは間違いなくララナットが着ているものと同じ陽光の騎士団のものだった。


 ユナはそのまま指の数を二つに増やして話を続ける。

 「さっきも言ったが地図からグレシャー帝国を消したのは私だ。以前ラティモスにいた時、私の任されていた仕事がそれだったからな」


 「それじゃあ、もう国の記された本や資料は…」

 「いや、そうでもない」

 『それはどういうことですか?』

 「確かに本や資料場所を消すのが私の仕事だった。だが担当する区域がある。さすがに私一人で世界中からグレシャー帝国の情報を消すのはさすがに無理があるからな」


 ユナの管轄はモンステラを中心とした区域だったそうだ。

 そこの情報源からグレシャー帝国の情報を消すと次の区域に派遣されるらしいが、運悪くヨイチ達に出会い、今回つかまってしまったらしい。


 最後にすっと三本目の指を上げるユナ。

 「捕まったはずの私がなぜここにいるのか。答えはこの格好とここまでの話で大体把握できるだろう」


 その隊服からヨイチもうすうす気が付いていた。

 ――ララナットもよくこんなことを思いついたな。敵を味方につけるだなんて。


 「私は陽光の騎士団、団長直属の護衛隊。ララナットの命令でお前たちの用心棒になった。ララナットが示した場所までお前たちを送り届ける」


 「は?」


 「は?」


 『は?』


 固まる二人とスカジ。止まる時。静寂がその場を包む。

ヨイチもさすがに用心棒までは予想していなかったから面を食らってしまった。


とんでもないがそんな話は把握できるわけがない。

混乱が混乱を呼びもうわけが分からなくなってきているアンは、情報量がそのキャパをこえて頭がオーバーヒートしている。


 「これからよろしくな」


 ユナは堂々とブイサインをこちらに向けた。

 

 「「『えぇーーー!!』」」


 驚きを大音量で起こしたため、三人とスカジは本屋から追い出された。

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