第24話
振り下ろされる二本の剣。片方はスカジ、片方は氷で生成した盾でガードしながら戦い続けているアンの体力は削られていく一方だった。文字通りの防戦一方。中々攻撃の糸口がつかめないアンは攻めあぐねていた。
「やっぱり防ぐので精一杯だね。時間も残り少なそうだし…。どうしようスカジ」
『ベリアルの方をなんとかしたいんですがこうも攻め手がないと…。懐に入らなければアン様の打撃も与えれないですし…』
時間は一〇分を経過しようとしている。制限時間内に決着がつかなければ判定なる。そうなればアンには大いに不利だ。
大気中の水分量もあまりない。斬撃は途切れることなく続いている。あるとすれば油断。
師匠の、ダースの教えを思い出す。敵が一番油断する瞬間を見極める。
「そろそろ、おしまいにしようか!」
「くっ!」
すさまじいほどの連撃を受けたアンは防ぎきれずにダメージを受け、その場に倒れこんだ。
――もうこれしかない!
「とどめだ!」
ベリアルとネクロ、二本の剣がアンを攻撃しようとしたその時。二人は振り下ろした瞬間から動かなくなってしまった。いや動けなくなってしまっていた。
「氷結のベール」
アンのとった行動はスカジを使う時ならではのハイリスク・ハイリターン。大気中の水分量を全て使い全体を凍らせるまさに一撃必殺。
普段ならば戦いの中での集中力で防ぎきれるところであったが、人はとどめをさすときが一番油断をするもの。そこを狙ったアンの作戦勝ちだった。
文字通り氷結のベールをもろに受けたネクロは戦闘不能。剣自体が凍ってしまえばベリアルも反応することができない。
レフェリーが確認し、続行不能を判断。これにてアンの勝利が確定した。
[試合終了――!一回戦第二試合は元五大結剣スカジの使い手、アン選手がからくも勝利を収めました!]
観衆の拍手を受け四方にお辞儀をしたアンは出入り口に向かって戻っていった。
アンの勝利を見届けたヨイチは、コロッセオの休憩スペースに来ていた。一回戦を勝ったアンは今日はもう試合がなくここで合流することになっている。
――薄氷の勝利ってところか。
正直、ヨイチはアンが負けるかもしれないと途中まで思っていた。
その原因は明白。アンがスカジを最大限活かし切れていないことにあった。対戦相手のネクロには申し訳ないがスカジを使いこなせれば今日のような試合にはなっていないはず。
――やはり本当の能力を使えないと…。
「ヨイチさん!」
「わっ!びっくりしたぁ!」
横から急に声をかけられて驚いたヨイチが声をする方を向くと戦いの傷を手当し終えたアンがそこに立っていた。
「お疲れ様。一回戦突破おめでとう」
「ありがとうございます。結構苦戦しましたけどね…」
やはりアンも先ほどの試合の内容を気にしているようで勝ったというのにテンションが少し低い。なにか声をかけようか悩んでいると歓声とともにアナウンスがなった。
[な、な、なんと!一回戦第三試合は三〇秒で決着!地結剣・ガイアを操るレアール選手の勝利だー!!]
「見に行きましょう!」
アンとともに観戦席にもどったヨイチはフィールドを見て驚愕した。この試合以前の二試合では平地であったフィールドは所々が隆起し跡形もなくなっていた。
「こ、これは…」
「何が起こったんだ?」
[フィールド修復のため今しばらくお待ちください]
そのアナウンスのあと、第三試合の勝者レアールは地結剣・ガイアを頭上に掲げて振り下ろした。するとフィールドが波のようにうねり、元の更地に戻ってしまったのである。
その光景を見ていたアンは信じられないとでもいうような顔をしていた。
「あんな結剣が存在するだなんて」
「あれがダースが勝った時の次の相手か…」
アンの最後の技のせいか乾ききった声音でヨイチはそう言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます