第二章 ウタタカ・タウン
第19話
リザードの手綱を手に取り移動を開始して半日。日が傾き始めあたりが暗くなってきている。
横で座っているアンは通り過ぎるものに目をキョロキョロさせ道中を楽しんでいた。
――良かった。道中を楽しめるまで元気になった。
今朝の体調不良騒動からネガティブ思考が止まらなかったあげくスカジのダメ出しを受けたアンは黄色の目がリアルに黒く染まるくらいに落ち込んだ。
このままではいけないと思ったヨイチはとりあえずスカジを黙らせて出発、道中でありとあらゆるデザートを提供しやっとご機嫌な気分になったところだった。
「もう少しでつきそうだね」
「はい!段々と灯りが多くなってきました」
砂利や雑草だった道がレンガの敷き詰められたものに変わり、照らす灯りが夕日から街灯に変わり始めた。
このレンガ造りの眼鏡橋を越えれば目的地、ウタタカ・タウンへとたどり着く。
ちなみに、アンには一応ララナットからもらった黒髪のカツラをつけさせている。
アンの容姿にスカジだとララナットのように一発で気づく人もいるだろう。そうなってしまってはアンが危険にさらされてしまう確率が高くなる。
そう説明したらアンは快く了承した。なんでも黒髪のカツラも新鮮で少し気に入っているらしい。
「まずは宿探しだね」
「ついでにアクセサリーも販売許可ももらいますね」
そう言っているうちに検問に到着。リザードを荷馬車屋に預けた二人はウタタカ・タウンに足を踏み入れた。
モンステラと違いほぼ顔パスで入れた二人はすぐに見えた目の前のコロッセオに圧倒された。
「大きいですね…」
「なんだか存在感がすごいね」
――ウタタカ・コロッセオ。
道や眼鏡橋同様にレンガ造りで建てられたバトルスタジアムだ。
円形状に作られたコロッセオでは毎月バトル・トーナメントが行われ、優勝者には破格の賞金が贈られる。
バトル・トーナメントはこの街の人々が熱狂的になるいわばお祭りなのだ。
そのトーナメント戦も近いようで街も活気だっている。飯屋は豪快に振る舞い、人々はお酒で乾杯し、よく見ると違う地域の料理が並んでいたりする。さすがは、商業都市といったところか。
――アンは出る気なんだよね。
ちらとヨイチが横を見やるとやる気に満ち溢れている表情をしたアン。優勝してヨイチへの借金返済に充てようということらしい。
ちなみに本人からは聞いていない。本人のオーラがそう言っているのだ。
「じゃ、宿探しと販売許可、もらいに行こうか」
「は、はい!わかりました」
「明日は観光もかねて街を散策しながらトーナメント戦の情報を集めよう」
「な、なんで私がトーナメント戦に出るって…」
「オーラが言ってた」
「へ?」
思考回路がダウンしそうなアンの横をヨイチは笑いながら通り過ぎる。
「早くいくよ!」
「ま、待ってください。私、出るだなんて一言も…、ヨイチさーん!」
ヨイチのうしろを慌ててついてくるアン。
――さて、どんなことが起きるやら…。
期待半分、不安半分を抱えたヨイチはひとまず宿探しへと街へ歩き出した。
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