第14話

「こんな場所があったとはな…」


新しい裏市の会場を見ながらそう言ってララナットは深くため息をついた。

アンがヨイチとララナットに提示した作戦は至極単純だった。


それはただ待ち伏せるだけ。


ララナットが店主を連れていき地下に侵入した時点でユナの結剣クロノスはアンたちが近づいていることに気付いていた。


その情報を共通感覚でユナが受け取り雇い主たちにそれを伝える。

その場にいたラティモスの人達は分散して逃げたはずだ。


アンの狙いはそこだった。陽光の騎士団は裏市の会場のほとんどをつぶしていた。自ずと残党と残りの荷物は新しく警護隊との癒着のある比較的安全な場所へ集まる。だが陽光の騎士団も残党と荷物がどうやって消えたまでは分かっていなかった。


その安全なルートを逃げ道で使ったのだ。新しい裏市の会場から逃げるときにもきっと使うに決まっているとアンは思った。


全ての会場は隠し通路でつながっていると。

「アンの狙い通りというわけか」

だからララナット率いる陽光の騎士団に協力を依頼し、全ての会場で待ち伏せをさせた。


予想は的中。商人が慌てて出てきた会場を皮切りに他の会場でも次々とラティモスの関係者が捕縛された。


事態の収集が大方ついたタイミングでララナットがアンとヨイチの元へ向かい倒れているアンを見つけた。


現在はアンとヨイチ二人とも救護施設で治療を受けているはずだ。アンの傷は酷いものだったが応急手当が利いたのだろう大事には至らないと騎士隊の情報員から連絡がきたところだった。


時結剣クロノスをもった少女も搬送された手当てを受けている。

「アン一人に街の治安が救われたか…、おおきな借りができてしまったな」

ララナットは独り言ちて苦笑する。陽光の騎士団のメンツが丸つぶれだ。

「団長!終わりました」


副団長のエルダ・ミスがララナットに報告する。

「分かった、お前たちは先に都市へ戻っていろ」

「はっ、団長はどうするおつもりで?」

「私は命を賭してこの町の治安を守った彼らに礼を言って来る」


そう言ってララナットは暗い螺旋階段を昇っていった。


その背後を何者かがうごめいたのを陽光の騎士団団長ララナット・リリベルは見逃してしまった。

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