リオーネとフゥ
主を想い人と一緒にするのはいいが、引き離されるのは少し心配だ。
「大丈夫よ、ティアシーア姉様は強いもの。ちょっとやそっとじゃ、やられないわ」
フゥの心配そうな顔にリオーネは事もなく言う。
「そうは言われても、心配です」
「大丈夫よ」
そう言うとリオーネはフゥの隣りに座り直した。
「リオーネ様。近過ぎるです」
「こういう時くらい、いいじゃない。いつもは一緒にいられないのだから」
リオーネはそっとフゥの肩に頭を乗せる。
フゥは嫌がることも嬉しがる様子もない。
「好きよ、フゥ」
「ありがとなのです。僕も仕えるべき方々なので大好きですよ」
リオーネはつまらなさそうにする。
「そうではなくて、男性として好きなの」
「そうなのですね。しかし僕はその想いに答えられる存在じゃないので、遠慮したいと思うのです」
「寧ろあなたじゃないと私は嫌なのだけど」
「僕にとってはリオーネ様は子どもにしか見えないのです」
その言葉に真正面からフゥを見る。
「もう子どもではないわ。成人し、エレオノーラ姉様ももうすぐ結婚する。ティアシーア姉様が婚約、結婚したら次は私よ。私の相手はずっとあなただって思ってたわ」
リオーネの言葉に首を傾げる。
「僕の出自は平民です。王族の降嫁先には相応しくないですよ」
「今のあなたは貴族、そしてアドガルムの第二王女の従者よ。仕事ぶりも優秀で頭の切れも早い。私の家族たちもあなたならと認めてくれているわ」
リオーネの熱い言葉にもフゥは唸る。
「どうしてそこまで僕にこだわるかわかりません」
「あなたは私を特別扱いしない人だから」
リオーネはフゥの頬に触れる。
黒い切れ長の目がリオーネをただただ見つめていた。
「あなたは私を王族だからとむやみに持ち上げない、そして私を利用して国王になろうという野望も持たない」
確かに大事な事だ。
フゥは王家に忠誠を誓っているので、けして裏切りなどしない。
フゥの姉、ニコルもいるから尚更そのような事はしないと決めている。
「納得です」
「本当にいつも義務的な返事ね」
いつでも淡々と受け止めるフゥにリオーネは可笑しくなってしまう。
リオーネはフゥの首に手を回し、軽いキスを唇にする。
「いけません、そのようにされては」
「では約束して。私と結婚してくれると。そうしたら離してあげる」
リオーネは真剣だ。
色々な男性を見てきたが、リオーネの一番はフゥなのだ。
「後悔しませんか?」
「しないわ、そんなの」
リオーネが言うなり、ぐるりと視界が回る。
回した腕はあっさりと解かれ、フゥに押し倒されたようだ。
「こうされても怖くはないと?」
フゥの手がリオーネの胸元に触れる。
「えぇ」
体は未知なる事に震えてはいた。
それでもリオーネの目は真っすぐにフゥを見つめる。
「そこまで頑なだと困るです、どうやって断ればいいですかね」
パッと手を離し、リオーネから離れた。
「止めなくていいのに」
リオーネが頬を膨らませる。
「とりあえず保留でお願いするです。姉さんにも相談しますから」
フゥはそっとリオーネの唇に唇を重ねた。
「予約だけ。ティアシーア様が結婚するまでリオーネ様に好きな人が出来なかったら、俺と共になりましょう」
口調を変え、真剣な表情でそう言うと、リオーネはにっこりと嬉しそうに笑う。
「絶対に他の人など好きにならないわ。ティアシーア姉様が結婚するまでに、あなたが私を逃したくないと思う程綺麗になって見せるから、覚悟なさい」
うふふっとリオーネは妖艶に微笑む。
(よその王子様でも余裕で捕まえられる美貌と知識を持っているのに、勿体ない王女様ですね)
自分なんかでいいとは、つくづく欲のない王女だなとフゥはぼんやりと窓の外を見る。
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