出会い
レナードとエレオノーラの出会いは王家主催のパーティだ。
エレオノーラはその頃は婚約者もなく、ただ淡々と周囲の者と話すのみだった。
誰に関心を寄せるでもなく、相手を値踏みしてばかり、心惹かれる者もなく、地位と財産を求める者ばかりでうんざりする。
この頃のエレオノーラはレナードの話を耳にはしていた。
気弱でおどおどした男性であるといった話だ。
長い銀髪を一つに束ね、鼻筋の通った美形だが、性格が態度に現れており、なよなよした印象を与えていた。
長身ではあるが、ひょろりとした体躯は見る人が心配になるほど頼りがいがない。
エレオノーラはこの時のパーティでたまたまレナードが視界に入ったため、扇で口元を隠し、他の令息と話しながらレナードを観察してみた。
公爵家の子息で身分はいいのだが、性格に難ありと言われている。
その通りであれば、エレオノーラの配偶者には選ばれなさそうであった。
でも妙に気になる。
確かに優男であるが、何もなければ普通のイケメンだ。
ついつい目線で追っていると、レナードは他の令息に足をかけられ、倒れてしまう。
持っていたワインはその前方にいた令嬢方にかかり、阿鼻叫喚。
「す、すみません!」
レナードが慌ててハンカチを取り出すが、それだけでは足りない。
周囲は誰も手を貸さないどころか嘲笑ばかりだ。
レナードは膝を突き、一番被害が酷かった子爵令嬢のドレスを丁寧に拭いていく。
「すみません、手を貸してください」
使用人に声をかけ、頭を下げ、レナードは懸命に詫びていた。
エレオノーラの足は自然とそちらに向き、使用人達に命を下す。
「令嬢達には別室を用意して、そちらに移動してもらいましょう。すぐに染み抜きと、弁済の準備をして頂戴。パーティに来てくれた皆様にも本日お越し頂いた感謝の品をお渡ししてね」
すっとよく通る大きな声で、エレオノーラはパーティ会場の者に呼びかける。
「皆様お騒がせしましたが、わたくしの顔に免じてお許しを。まだ楽しいダンスの時間がございます、引き続きパーティを楽しんでいってくださいな」
会場にいるもの達へお詫びの言葉をかけた。
令嬢達にも詫び、騎士達や侍女を呼んで別室に移動をしてもらう。
令嬢達の親にも声掛けし、充分な金額の賠償金を支払う約束をした。
「レナード様、迅速な対応をありがとうございます」
レナードに対して笑顔を向けた。
「いえいえ、エレオノーラ殿下のお蔭で助かりました。どうしようか途方にくれてしまったものですから」
エレオノーラはレナードの膝が血で滲んでいるのに気がついた。
「お怪我なされてますね。こちらで手当をしましょう」
エレオノーラに手を握られ、レナードはヒッと口の中で悲鳴を上げた。
まさか、王女に触れられるとは思っていなかったのだ。
そちらは気にせず、目の端に映った男達を大声で呼び止める。
「サラエド公爵令息と、リバーフェイル侯爵令息!」
名指しで呼び付け、エレオノーラは鋭い視線を向けた。
「あなた方がレナード様に足をかけて転ばせた所は、わたくしが見ていました。卑劣な事をし、場を壊したあなた方を許しません。今回建て替えた賠償金の請求をさせてもらいますので、覚悟なさってくださいね」
怒りを込め、吐き捨てる。
「エレオノーラ殿下、私共はそのような事断じてしておりません!レナード様がご自分で倒れられただけです」
慌てた二人が弁明を行う。
「ではわたくしが嘘を言ってるとでも?」
ぐっと言葉を飲み込む二人。
「お話は後でじっくりと話をさせていただきます、あなた方の両親にね。まずはレナード様の治療が先ですから」
必死で食い下がる令息達を騎士達が止めている間に、エレオノーラはレナードをグイグイと引っ張っていった。
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