第74話 脱出劇②

僕がゴブリンクイーンに与えたスリップダメージは複数あり、1つ目は元々用意していた錬金魔法により作った致死毒、麻痺毒、呪いなどを合わせた【ガリバリポーション】を斬りつけながら傷口に振りかけていた。


2つ目は【ライトソード】の持つ特性のひとつで、モンスターや悪しき者に継続的ダメージを与えるというもの。


そして最後の3つ目は、ゲーム的な簡易攻略する為のゴブリンクイーンの持つ弱点である。


それは狂乱するまでに一定量の血を流させると出血状態になり、狂乱が発動した時点でゴブリンクイーンは時間経過で確実に倒せるのだが……これだけでは倒れるまで20分はかかる欠点もある。


【ガリバリポーション】と【ライトソード】、出血状態の3コンボでゴブリンクイーンが倒れるまで……約10分くらいかな?


「それじゃあ、逃げようか!」


僕は聖剣に話しかける。


「良いのか? ゴブリンクイーンはまだ倒せてはいないぞ」


「うん、10分後には勝手に倒れる筈だから大丈夫!」


「分かった」


聖剣はそう頷くと、ビルから飛び降りる。


そして、僕も聖剣の後に続きビルから飛び降り、聖剣の身体を抱き締め【光魔法】の【ライトウォール】を背中に展開し、【ライトウォール】を薄くしていき、パラシュートの様な物を作り、緩やかに降下していく。


「其方は器用だな。通常、【魔法】をその様に応用しないだろう?」


「まあ、普通はやらないだろうけど、形を変えられるなら何でも応用は効くから便利だよ。地上に付いてからだけど、ビルの入口から進入して、一気に父親達が囚われているフロアまで一気に進むよ」


「1階の入口にいた大量のゴブリン達はどうするのだ? いくら強くてもあの数は危険ではないのか?」


確かにあの数のゴブリンを相手にしたら流石の僕でも厳しいけど……


「実はあの入口にいたゴブリン達はビルの屋上付近まで上がっているから、1階にはほとんど居ないはずだよ」


「……どおりで……ゴブリンキング達と戦っている時に雑魚ゴブリンの邪魔が入らないのが不思議だったが、何かしていたのだな」


「うん、ゴブリンキング達がいたフロアに繋がる入口を全て瞬間溶解剤で溶かしたあと、扉をくっつけておいたから、ゴブリン達が参戦したくても辿り着けないって状況だったんだよ」


「ふむ……まだいろいろ不可解な点はあるが、まずは動くか」


聖剣はそう言いながら、パラシュートが地上10m付近になったからか、自ら飛び降り、地面に着地する。


「聖剣はココで待機して力を温存しておいて……」


「いや、我も一緒に行くぞ。我の感が一緒にいた方が良いと告げている」


「了解……譲り合う時間も無いから、好きにして良いけど、シエルの身体を最優先に考えてよ?」


「それは安心してくれ、我もこの肉体が無くなれば消滅するからな。我は常に身体を最優先に考え行動している」


「じゃあ、付いてきて」


僕と聖剣は全くゴブリンの居なくなった入り口を通り、最短ルートで父親達のいる地下へ向かった。


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