第9話 職人の技
霊柩車の運転手なのに職人の技なんてって思いません?
わたくしもそう思いました。
載せて運んでその繰り返し。
って思ってました。
それが違うのは少しずつ判明してきましたが・・・
なにせ、仕事がわからない。
全員の仕事を見学させてもらいました。
っといっても助手席に乗るとかでなく、乗せるところ
火葬場で降ろすことろだけです。
微妙に人によって違うな。
お辞儀ってこうなんだ。
自分なりに学習していく。お辞儀がどうとかって普通、見てないですよね?
誰も見てないところをビシっとやる。
なるほどね、車の配線の仕事やってましたが似てるなと。
車の配線って外から見えないですよね?
でも見えないところをしっかりやる。
不具合起きてからでは遅いですからね。
似てるっていうか、人が見てないところをしっかりやる。
そーとらえました。
そして、いよいよ職人の見学。
ん?んんん?
イメージで言います。ホテルのボーイさん?ホスト?
所作が綺麗なんです。動作に軽さがない。適当でない。
ビシっビシっとしている。
見ていて格好良い。
他の人と同じようで違う。
でも主張しない、黒子である。
言葉がうまく言えませんがそんな感想でした。
そのあとも何回か見る。イメージする。
職人の前でシュミレーションする。怒られる。
覚えてないくらいやりました。
職人の助手席に座って 運転を見る・・というか体感する。
無駄がない。圧倒的な安心感。ここちよい。
これって霊柩車だよな?ハイヤーでないよね?
やばい、飲まれてしまっている。
そんな感想でした。
『ここまで同じとは言わない。近くになるまで目指してもらう』
『合格点ではない。最低合格点』
『あなたは運転の仕事で初めてだけど大変なところに入ってきた』
『タクシーよりもレベル高いかもね』
聞けば職人・・・いえ ここからは師匠と呼びます。
師匠はタクシー運転手、トラック運転手など 地上で運んだものは全てという。
もうね、そんなん無理でしょと。
運転の初心者がタクシー以上って。
言われるまま、本当にやばい所に入ったと思った。
でも・・でもね・・・・
こんな ど素人にも真剣に教えてくれる師匠。
プロの技を出し惜しみすることなく教えてくれる師匠。
口は悪いけど 怒った後 鉄道の話をしてくれる師匠。
俺みたいな奴なんて 適当に教えればいいのに。
いつ辞めるかわからないような こんなやつ適当でいいのに。
この時はわかりませんでした。
ここまでやる理由が。
そして少しずつ何かが変わってきた。
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