第8話 デビュー

何回も練習 練習・・・・。

運転以外も所作など めちゃめちゃ細かいことばかり。


あー・・・・ひたすら運転だけしたかったのに。


しかし現実は許してくれない。


『いきなりデビューするから 油断しないで』


まじか。

頭と体で何回もシュミレーションする。

行動予定に初めて配車された予定が入る。


『デビューはさせるけど 最低限度のレベルだ』



ええ、霊柩車だなんて初体験です。

ええ、葬式のことなんて何も知りません。



当日。

巨大なモップ?タクシーの人が掃除するやつで清掃。

意外に緊張しない。


『行ってきます』


『気を付けて』


体がガチガチなのがわかる。

でももう逃げられない。


挨拶をする。サインをする

『よろしくお願いします』


居場所がどこかわからない・・・・

えっとどこに行けばよいんだ?

建物の中で迷子になる。



他人のお葬式。

なんか不思議な気持ち。


『ご遺体はみるんじゃねーぞ』


そう言われたけど見えないから大丈夫だった。

そして、出棺。


お辞儀がおかしい。

角度&ふらつく。


何を言っていいか頭が吹っ飛ぶ。

どうにか霊柩車に乗せる。


出棺。芸能人のお葬式でみたやつだ。クラクションは鳴らさない。

後ろが壁で見えない。

何台か車を連れていく。忘れたけど3台くらい?だったような?

サイドミラーを見る。2台目の車がミニバンで3台目が見えない。


マジか・・。葬列は切れてはいけない。

しかし非情にも世間は許してくれない。少しでも車と車の間隔が空くと割り込まれる。

『くっそ・・』


多分言った。


あらかじめ停車できそうな場所を把握しておいた。

霊柩車を止める。余計な一般車が走り去る。

葬列が復活。しかしみな運転レベルが違う。ジワジワと離れる人、強引に突っ込んでくる人。色んな人がいる。走ってみないとわからない。


どうにか火葬場に到着。

降ろしてお辞儀をする。視線を感じるもすぐに離脱。

車庫へ帰る。


あ・・・やばい・・・

火葬場で待ち合わせしてたんだ!!


携帯が鳴る。

『なに帰ってんだよ!!!!』

『すいません』


これこそ頭真っ白。

待ち合わせしてたのに忘れて帰るという。

最高レベルで怒られる。


『全然だめ』


ええ、しってます、わかってます、承知してます。

再度復習する。

視線を感じたのは見られていた。


『時間合うときに 俺の見てろ』


職人の技を拝見する時が来た。

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