第3話殺しのダイヤル③混沌

日頃、運動をしていない堀は後悔した。

走る羽目になるとは。両手に現金を持ち、200m走ると歩きだし、また、走るのくりかえし。

「こちら本部、D地点どうだ?」

「警察の飲酒運転検問の設置でかなり遠回りを」

「間に合いそうか?」

「ちょっと、無理でしょうねぇ」

「はぁー、また遅刻だ。どうしよう」

堀がコマダコーヒーに到着したのは10分遅れの23:40だった。

店内に入ると、ウェイターにアイスコーヒーを注文した。

ゼエゼエ吐息が粗い。

出された水を一気飲みした。


プルルルルプルルルル

「電話だ。黒井川君出てくれ、俺タチャ降参だ」

「もしもし。今夜01:00に白川公園に2000万円持ってこい。1人で現れろ。警察の匂いがしたら、カミさんの命はない」

「もしもし、質問なんですが?」

「なんだ?」

「最初は2分遅れで怒り狂ったあなたが、今回は10分遅刻ですよ!その辺りはどうなんでしょうか?」

「黒井川君、電話を貸せ」

「必ず01:00ジャスト。時間は守ります」

「頼んだぞ。お前らは堀のスタッフだな?警察じゃねえよなぁ?」

「もちろんです」

「良かろう。ガチャン」

「やった。今回は怒ってないぞ!」

宮田警部は喜んだ。そして、堀に電話した。

「先生、犯人は怒っていません。ラッキーですよ!」

「で、犯人はなんと?」

「01:00ジャスト白川公園に向かってもらいます」

「行く途中なので、急ぎ1度ホテルに向かいます」

「分かりました」


堀健一朗はホテルに戻った。

白川公園の地図を広げた。

「警察の方は何名で?」

「30名です」

「少なく無いですか?」

「犯人に警戒されると、アレなんで」

「ここの築山、1人おいて下さい。高い位置にいるから、全体像が掴めるんで」

「ここの築山は裸なので、刑事が立つとバレます」

「御願いします。これでも推理作家です。1人配置お願い致します。あんたがいい」

「川崎君。先生のおっしゃる通り築山へ立ちなさい」

「はっ!張らせて頂きます」


24:45

「今回の事件、何か裏があるよ」

「私には難事件で」

「なぜ、君を目立つ築山に立たせる役を命じたんだろうねえ?」

「さぁ~、分かりません」

「堀健一朗は小説ではスゴいトリック一杯書いてるんだよ!」

「私は小説はちょっと。それに、脅迫電話がかかって来たときは、我々と一緒にいたんですから」

「電話は別人だったら?君の車の中なんなの?」

「昨日のハロウィンでして、仮装パーティーへ」

「変な趣味あるんだねぇ」

「そろそろ時間です。配置につきます」

「ちょっと、待って川崎君」

「何ですか?黒井川さん!」


堀健一朗は白川公園の真ん中に、01:00ずっと立っていた。

30分後、スマホの着信音鳴る。

薄ら笑いをして、堀はホテルに戻った。


戻った堀は宮下警部を怒鳴り散らした。

FAXには、

【築山にいる黒いスーツの男は刑事だ!交渉決裂。カミさんの命はない】

「警察のミスだ!私の妻を殺したのは警察だ!」


「もう、奧さん亡くなったような言い方ですね」

「宮下警部、あんたのミスだよ!何とか言えよ!訴えるよ。悪いが」

「先生。黒井川君も何かないかい?」

「どうして、今さら警察と繋がりがあることに目くじらを立てるのでしょうか?最初の奧さん指紋なんか、警察と接点がなきゃ、本人のモノと判別つきませんからね」

「警察のミスを棚に上げて何を言ってるんだ!出て行け!」

宮下警部、柴垣巡査部長、黒井川警部は一階のラウンジに向かった。

3人ともアイスコーヒーを飲んでいた。そこに、川崎巡査が報告に来た。

それを黒井川に耳打ちした。


誘拐班は現場を撤収した。宮下が黒井川の肩をポンと叩くと笑みを浮かべた。



「えぇー今回の事件は狂言誘拐です。会社組織にして、堀健一朗か稼いだ金の殆どは妻の美代子に回っていたようで、秘書の小林千紗にぞっこんでかなり、夫婦で揉めていたみたいです。今回のポイントは電話のトリックと築山の刑事の件。彼は決定的なミスを犯しました。皆さん考えてみて下さい。解決編はCMの後で」




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