第14話 二人が起きるまでの時間

「どうだ?」

 頼まれたものを買って新庄のあるところに戻ってきた。

「全然起きる気配がないね。要君も寝ちゃった」

 由梨花に膝枕をしてる状態で下を向いて目を瞑っている。

「今日は終わりかもなまじで。由梨花はまだしも要も結構使えるっぽいし」

「これからさらに疲れることがありそうだから休めてるだけかもよ」

 そのせんの方が当たっているかもな。

「ちゃうど昼でいろんなとこ空いてるし俺らもなんか乗るか?」

「お、いいね。度胸だめしする?」

「お化け屋敷ならいかんぞ」

 こいつとお化け屋敷に行くと面白くない。なぜならこいつとってお化けというかホラー関係は恐怖ではなく好奇心をあげるもの。普通の人が悲鳴を上げるとこで急に歓声することがある。だからいったところで楽しくない。

「そうだなー。ならデートみたいに歩こうか」

「何を言っているのかるんですか?」

「だって私たちってデート経験ゼロなのにデートの手伝てるんでしょ?由梨花はあんたとの付き合いあるし余裕だろうけどそれって通常とはいえなくない?」

 鋭いとこをついてきた。俺も新庄も恋人いない歴=年齢のやつだ。つまり、俺の当たり前は俺視点の由梨花対応。新庄はギャルゲー。どちらにしてもリアリティはない。

「なら歩くか」

 ただの散歩こいつを恋人か。のんかはずいな。

「ちょ、その握り方」

 決定した瞬間恋人つながってやつをしてきた。しかもすごい至近距離。

「これが当たり前でしょ」

「顔赤くなってんぞ」

 なんでこんな緊張してんだ俺ら。距離が近いだけでいつも一緒につるんでるやつだ。ハイタッチとかも普通にできる。なのになんかやばい。逃げ出したい。

「ほらいくよ」

 新庄が先導してくれそうだ。ありがたい。


「こう、やってみるとさ恥ずくない?なんでこんなことできるの?」

「互いに好きな気持ちがあれば関係ねぇんだよ。俺らは恋愛感情がないからちゃんと周りが見えている」

「そ、そうか。ならこっちもやってみるか」

 次は腕を絡ませてさらに近くなった。これはやばいな。

「し、しんぞうがバクバクしてるの感じるけど何照れてるの?」

「お前もだぞ」

 俺の方は新庄が近づきすぎて…これ以上は言わんでおこう。なんか思っただけで殴られそうだ。

「てかさ、あの二人って手すらつないでないじゃん」

 俺らが介入するくらい由梨花がいなくなるのが一番な原因だと思うんだが。

「お化け屋敷行くか」

 今めちゃくちゃ熱いしあそこいい感じに冷えてるから休みたい。

「ほんとやったー。はやくいこ!」

 手首をしっかり握って思いっきり引っ張ってくる。えぐいほど痛い。こんなテンションなったことあんのかこいつ。それにしても、これ一番カップルぽくね。


 お化け屋敷についた。

「うぉーどんなしかけが」

「お前一人で行かないのか?」

 こんなに好きそうな表情しててここが初見かのように言っている。前もコラボ目当てできてるはずなんだが。昔とは変わってるとはいえいつぶりなんだこいつ。

「一人で行くわけないじゃん。逆に怖くない?一人で行ってテンション高いの」

 それもそうだお化け役の方々からしたら恐怖に感じるだろう。

「それもそうか」


「ウォーヤバイよこの仕掛け糸吊るしてる!!」

 あーやばい涼しいのはありがたいが、やべーつまらん。カラクリの説明をお化け屋敷でするやついないだろ。

「ねぇ隠れてるよ。逆脅かそうかな」

 暗くてギリギリ見れるくらいの距離にいる人をこいつはしっかり見えてやがる。

「途中ででていいか?」

「あ、そんな怖いの?」

「お前がな」

「もうそういってほんとは楽しいくせに照れちゃって」

 照れてない。

「あ、あれー!!あの人形クオリティ高い」

 日本人形が置かれている。

「首とれたー!やば絵の具で血の表現とか下手すぎw」

 悪いな日本人形さん。こいついつも以上にテンションがおかしくなってる。こいつがこんなにお化け屋敷が好きになっているとは。昔よりもテンションがえぐい。

「ほらいくぞ」

「あっちょ。まだ造形の観察が!」

 ぜひ人形博物館へ行ってください。

 そしておそらく倍の時間をかけてありとあらゆる仕掛けにテンションマックスで回っていく。

 正直こいつがいなければ怖いとかはあった。だがこいついると常識がおられる。最後のほうだしちょっとおどかすか。

「ねぇこれもすごいよ」

「え、どれだ」

「何言ってんの?これ!」

 指を向ける先には洋風の人形。目の部分がくり抜かれている。

「お疲れ様」

 人形がしゃべっている。

「すごいしゃべる?」

「だからなんのことだ?」

 最後の仕掛けというよりは最後だと教えてくれる任侠って感じか。だが、粘るぜ俺には見えていないことにし続けるんだ。

「だからこの子」

「?そこに何かあるのか?」

「そ、そうやって脅かそうと思ってそうわ、い、いかないから」

 さすがに新庄も自分にしか見えてない可能性があって少し震えた声になっている。

「脅かすも何もお前が何言ってんのかわからん」

「じゃ、じゃーこの子って…」

「お疲れ様。またきてね」

 また人形がしゃべった。ここで止まって眺めるやつなんていないだろうし結構頻繁に再生されているのだろうか。

「…むりむりむりむりむり!!」

 先ほどの笑顔がなかったかのように涙目になっていった。そして膝から崩れ始めた。

「嘘だよ」

 こいつも怖がってることだしここらにしておこう。これ以上はトラウマを植えつけそうだ

し。

「うそ?」

「俺も見えてる」

「よかったー」

「悪かったよお前が驚くとこ見たかった」

「それならよかった」

 新庄はほっとし起きあがろと手をついた。

「あ、あのー力が入らなくて起き上がれない」

 恐怖で一気に力抜けてしまったか。

「しゃーない」

 膝と腰を抱えて持ち上げた。お姫様抱っこ状態というわけだ。

「あ、ありがとう」

 こいつは人工物は好きだが、本物は無理みたいな感じだったな。


「にしてもお前はお化け屋敷ごろしだよな。あんなに褒められたら喜んでいいのか分からないだろ」

「だってすごくない?しかけとか」

「そりゃすげーけど驚かすためのものだろ」

「細かいことはいいの。それにしても最後の日本人形は驚かされたよ。人形が私しか見えなかったらなんかほんとに呪われてそうだし」

 日本人形?

「ちょっと待て。今日本人形って言ったか?」

「うん」

「金髪のか?」

 俺が見たいのは洋風の人形。金髪だし服は白っぽく日本人形みたいな着物みたいなやつですらない。

「黒だったよ?」

「なーんだおどらかねーか」

「流石にその程度では驚かないよ」

 このことは俺だけのことにしておこう。仕掛けで角度によって見え方変わるやつかもしれんし。もしそうで何してもどっちが本物なのかは分からない。

「もどっか」

「そだねそろそろ起きてるかな」

 結果恐怖とともにある程度楽しい時間を過ごせた。こっからは由梨花たちのサポート再開だな。

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