第12話 俺超えの悪魔爆誕

 人混みに飲まれたせいで普通に由梨花たちを見失ってしまった。

「連絡とる?」

「こっちからはあんましない方がいいだろ。それに状況がわからない時の連絡は危険が大きい」

 こっち側視点としてはバレようがバレまいがおそらくなんとかなる。しかし、連絡をとってバレたときは話が違う。がっつり助言しているのが互いにバレる危険がある。

「あっちから連絡来るまでは探しつつどっか回るか」

「え、ほんと!ならこっち」

 いつもまして新庄のテンションが高い。

「いこっか」

 目の前にあるのは物凄い列になってる特別拳ではいるアニメ展。

「まてまて並んでら間に連絡くるって」

「私だって知ってるから」

 するとそのまま受付員に近づく。

「特典ください」

「そういいチケットを見せた」

「ここで交換すると入れませんがよろしいですか?」

「大丈夫です」

 チケットと交換してそのままグッズを入手して終わった。

「いいのか?別にお前は一人行動してても」

「もういったから今日は週特典貰えれば満足」

 いわゆるガチオタクのための救済ってやつか。時間がないから並ばないけど特典だけ欲しいやつ。そういう人のために同じ値段で特典だけもらえる制度。悪くはない制度だ。せっかく並んでたのに特典がなくなってるってこともあるのか。結構批判ありそうなやり方だな。

「これももらっていい?」

「どうぞ」

「やった!」

 多少気を遣わせてるのかもしれんがこいつも楽しそうでよかった。


「由梨花から電話だ」

 二人を探していると由梨花から電話が来た。

「とりあえず出れば」

「だな」


「どした?」

「ちょっとりょうちゃんでしょ!」

「何が?」

「りょうちゃんが嘘言ったんでしょ!」

 なーにも言ってる全く理解していない。嘘を教えたつもりはない。

「今ジェットコースターの列にいる」

 男の声が聞こえてきた。要か。そしてジェットコースター…なるほど。

「嘘はついてない。ちゃんと嫌いだと教えた。ってかなんで並んでるんだよ。気づけよ」

 なるべく早めに解決させねーとまずいな。要の声が聞こえるということは普通に電話かけてきたやつだ。つまり俺らが状況を知ってるていで話すのはダメってことだ。

「かせ」

「あっちょ」

 要が由梨花からスマホを取り上げたようだ。ナイス。由梨花よりは対応してくれそうだ。

「テンションおかしくなった由梨花を落ち着かせるために由梨花を持って並んだ。初めはテンション落ちてて気づかなかったが途中で察してしまいお前のせいと思って電話をかけた」

 すごくわかりやすい。やはりテンション落ちてたか。だからいきなりジョーカーであるジェットコースターで調整を図ったと。悪魔かよマジで。俺でも流石にその調整方法は知らん。

「なるほどわかった。なら頑張れ」

「もう返して」

 取り返したようだ。要件はわかったしこれで終われそうだ。

「ところでそっちもにぎやかだね。どこ行ってるの?」

 こっこいつー!俺のせいでこうなったってことでやり返してきたな。要が近くにいて俺らの状況知ってるから。

「どこでもいいだろ」

「そんな賑やかなところ近くにあったかな?」

 要のカバーは見込めないし新庄に頼れる余裕もない。マイク切れば負けだろ確実に。こいつには負けたくない。くっそースピーカー切り替えて新庄も聴けるようにするべきだった。

「お前人混み嫌いだからあんま行かないとこいるんだよ」

「そっか。一人で?」

「由梨花がいない休日が久しぶりだから未央に捕まってるんだろ。どうせ」

 ナイス要。

「そ、そうなんだ。なら最初から言えばいいのに」

 お返ししたのに何もダメージなく終わってしまったちょっと戸惑ったな。

「ご、ごめんね。未央ちゃんと楽しんで」

 危なかったー。そしてこれから地獄の時間ってことか。そりゃ落ち込むわな。

「いやー焦った。由梨花が仕掛けてくるなんて要君から連絡受けた時はびっくりした」

「なるほどな。お前が介入したのか」

「なんかいいあんないかってきてね。私を盾にすればなんとかなるって伝えた」

 全ての状況において一番好都合なのは二人とも俺らがサポートしていること。どちらかがバレそうになれば片方が隠そうとする。 

 そして今は新庄がいる。マイペースすぎて思考がわからない分新庄を理由にすれば大抵は納得できる。

「ジェットコースターある方とりあえず向かうか」

 俺は今日実感した要はあいつを制御する鬼の意志を持っていると。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る