第10話 デートの始まり

 俺と新庄は要と由梨花が園内に入るのを待っている。

「やっぱり混んでるなー。由梨花大丈夫かな?」

 休日ということもありチケットを買うだけでも人が結構待つ必要がありそうだ。

 由梨花は人混みにいると結構疲れるタイプ。そのためこういう状況では疲れが結構溜まるはずだ。

「あいつら会話してねーな」

「そうだね。でもこの状況でなら仕方ないか」

 二人の光景は前みたいに空気が悪いわけではなく状況判断な気がする。なにより、由梨花を疲れさせない手かもしれん。

「あ、会話した」

 会話を交わすとそのまま由梨花は一例して外に出ていった。

 それと同時に要からメッセージが飛んできた。

「だってよ」

 メッセージは単純に由梨花がどこか行かないように見張り。

「いい判断してるじゃん」

 一人で二枚分買えば済む話。普通のカップルなら待ち時間で会話を盛り上げそうだが由梨花のことを考えたら最善だ。やるじゃん要。少し見直した。

「ちょいと電話してみる」

 新庄が電話をかける。そのままスピーカーを切り替え俺にも聞こえるようにした。

「どうしたの?」

「いきなり何してんの?」

「私が混み合ってるとか苦手なのを配慮してくれてベンチで待ってろって」

 俺ら側からしたら要からのメッセージで理解してるが由梨花からしたら俺らはなんで外に出たのかは分かっていない。ここが一番の最難関である全てを相手から聞いたことは全て所見のように会話をすることだ。とりあえず新庄はすごく自然と話題に持っていけてる。

「そかそか」

「結構疲れた」

「早すぎだろ」

「でもここで休めば大丈夫かな」

 とりあえず俺らと離れる前よりかは元気を取り戻したようだ。

「帰りは気にすんなよ。なんかあったらうまい理由つけて迎えに行くから」

「わかった」

 この数分の人混みで疲れを感じてるということは普通に遊べば疲れて寝るのは確実。本来であれば要に任せる立場だが、振り回されてあいつも疲れるだろうしそうなったら俺がいけばいい。なんせ要から呼ばれたと言えば由梨花も納得するから。要とも連絡をとっているわけだし。

「とりあえず寝ててもいいぞ俺ら見てっから」

「流石に寝ないよ。ありがと」

「じゃ」

「うん」

 電話を切った。

「ほとんどあんた話してたね。この過保護」

「るせー。この程度で電話するお前ほどじゃねーよ」


 流石に遅れることをさとり俺も列に並ぶことになった。これには男だからというわけではなく純粋にジャンケンで負けたからだ。


 由梨花は無事か?

 要からのメッセージがきた。


 とりあえず新庄が見守っている

 俺は並んでんとこ


 いきなり悪いな


 ま、なくはないろ。帰りも由梨花ぶっ倒れたら俺が運ぶ


 まかせる。多分あいつぶっ倒れるということは俺も相当疲れてる


 だろうな


 未央にそろそろ離れておいてくれって伝えてくれ。そろそろ由梨花のとこいって園内向かうから


 了解


 とりあえず順調そうだ。


 さっきいた方向を見るとすでに新庄はいなくなっていた。安心だ。一応メッセージだけ送っておくか。


 そろそろ由梨花のとこに要いくからよろしく


 既読がついた。しかし返事ない。返事の代わりに由梨花の座っている方面から誰かが走ってきている。

「ナイスタイミング危なかったー」

 列を掻い潜り俺の元に戻ってきた新庄。

「お前は由梨花と話してたな」

「だから危なかったんだって私のせいで計画壊れるとこだった」

「お前も監視しないとだな」

「由梨花でないんだからタイミングはしっかりするって」

「そういうわけでないだろ」

 こいつに全部話したのは間違っていたかもしれない。完全に会うギリギリのスリルを楽しんでいる。

「でもある意味正解でしょ。ほらあんな笑顔になったんだし」

 結果的にはだけどな。

「とりあえず入るまでは楽できる」

「だね。なんもないといいけど」

「問題を持ってくるのが得意な由利花だぜ」

「中学のも由利花がってこと?」

 だよなー。聞いてわけがないんだ。これについてこないようなやつではない。

「誰が悪いかは知らんし、何があったかは花式はない。ただあいつが俺以外のやつと基本絡まなくなった状況を発展させたってのはたしかだ」

「そんなトラウマが。あの子はあの子で大変そう」

 あいつが乗り越えると考えても絶好のチャンスでもある。ここからさらにいろんな人と絡むようにできれば何よりもうれしいことだ。


「カップル二枚で」

「は!」

 カップルっていわゆるそういう。いやいや。

「あと特別券もつけてください」

 待て待て待て情報量が多すぎる。

「説明はあとでするから今は黙ってて」

「お、おう」

 こいつ。っま特別券のほうは大体のことが理解できるが。


 チケットを買いようやく俺らも入園できる。

「っでカップルってこれかよ」

 手渡せれたのはいま遊園地で絶賛コラボイベント中で特別ブース(特別券で入園可)もある「聖光の神楽」って作品のグッズである。しかもカップル限定の。

「これは二人でないと手に入らないからねいやーありがたい」

「これもやる」

「え、ほんと!保存用にできるじゃん。気が利くね」

 少女漫画は嫌いではないが見ない。つまり作品は知っているが内容もキャラも知らない。そんな俺にこのグッズのすごさはわからん。こういうものは価値の分かる人がもったほうがいい。

「由利花も持ってるかな」

「特典だしさすがにもってるろ。っと言ってたら要さんからの電話だ」

「由利花知らないか?」

「は?」

「コラボなのは気づいていたからちゃんと見ていたんだが由利花がいつもはみせないほど興奮してどっか行った。おいかけたが人ごみで別れた。電話にもでないしメッセージもだめだ」

 ほらきた要となら抑えると思ったがいきなりこれか。

「わかった見つけたら連絡するこっちには詳しい奴いるから」

「頼む」

 ってことでだいきなり仕事ってことか。

「あの子がそこまでテンションを上げたのなら待ち合わせとかたてても意味なさそうだね」

 いつもは目を光らせるが引き気味のためいざテンションが上がって勝手に行動しだすとしばらく回りが見えなくなる。わかりやすく言えばいつも怒らないやつを怒らせると怖いってのと同じ。普段は落ち着いてる由利花を爆発させたらやばい。

「で、目星は?」

「おそらく入ってくすぐならメリーゴーランド付近のフォトスポットあたりを中心にしたこの辺りにいると思う。ここは由利花の好きな話の再現してるとこあるから」

 さすがはセンサーだ。とりあえずメッセージで要にそれを伝えて俺らもむかうとするか。

 こうして平和と思われたデートのスタートは一つのコラボと一人の女子高生によって狂わさせるのであった。

 

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