第25話 入れ替わってる?
☆
『入れ替わってる?』
学校からの連絡で病院に駆けつけてくれた父さんだったが、すれ違いで病院では会えなかった。
そして今オレの部屋でようやく再会したところだ。
父さんは工場で2交代勤務していた。
今週は夜勤でゆっくり話せる時間がほとんどなかった。
オレと姉
母さんのお腹にオレがいるのを承知で、父さんは母さんと再婚した。
詳しくは知らないが、父さんはその時
つまり、オレは父さんと、
だけど家族だし、余計なことを考えさせないように、
今だって
それと体を張って姉を守ったことを褒められながらも「無茶しやがって」とほんの少し叱られた。
何でだろう?
何も失わず、オレたち
ケガは痛いけど、骨折ひとつない。
なのに父さんの一言でオレは大泣きしてしまった。
ホッとしたのだろうか、誰かを失う怖さを今頃感じたのだろうか、わからない。
オレは『サブリナになった
「お父さん、ごめん。なんか厄介ごと。なんかね『入れ替わった』みたいなの」
サブリナになった
「――入れ替わった? えっと…つまり、金髪女子が……
「そうよ。お父さんが愛してやまない
オレは大泣きしながらも「端折りすぎだろ!」と心でツッコんだ。
あとなんか軽い!
しかしツッコんでおきながら、オレは耳を疑った。
「あれか? ラノベでちょいちょいあるヤツか?」
「さっすが、お父さま‼ たったこれだけで分かってくれるなんて! あのね、今月ピンチなんだ~~かわいい娘に『パパ活』みたいな?」
「もうしょうがねぇなぁ~3千円な?
「ありがと! お父さん! 大好き‼」
父さんはいつもながらちょっと照れるだけだ、これでいいのか?
オレは
オレと見た目
いや、百歩譲ってふたりが入れ替わってるのは認めよう。
明らかにサブリナの声だが
問題は父さんだ‼
いや、そこいいの?
秒で信じてるけど、親子ってそこまでなの?
いや、親子以前に体が入れ替わってるんだけど?
親としてというか、人としてもう少し混乱してくれないと……
柔軟性ありすぎだろ?
オレはあまりに現状を受け入れ過ぎてるふたりを置いといて、
オレは
「
お――い、マイ・ファミリ~~!
いいですか?
これが一般的な反応ですからね?
順応性は大事だけど『ラノベでちょいちょいあるヤツ』で片付けていいのか?
オレは
ひざのケガが痛むけど、ベットの端に座らせた
目が合うと
オレはその玉のような涙を丁寧に指先で拭い「大丈夫だよ」とか「ひとりにしないから」とか、出来るだけ安心できそうな言葉を並べた。
オレは少し考えたが、
☆
「ご挨拶が遅くなり申し訳ありません、私は
サブリナは
見慣れた娘の姿でよそ行きの挨拶をされ、父さんは一瞬戸惑ったが頷いて握手をした。
「
父さんはニコリと笑い、
「サブリナ。あぁ…とヘンだよな。父さんの反応……」
「はい…
サブリナは少し落ち着いたのか、声に張りが出てきた。
「父さんはその…少しオタクっていうか――」
「
父さんの夜勤明けはいつもこうだ。
夜勤が苦手な父さんが心配なのと、夜勤の間会える機会が減ってしまう。
そのふたつが同時に解消される夜勤明け。
オレたち
「まぁ、異世界転生とか異世界転移とかタイムリ―プ色々あるけど『入れ替わり』はそれに比べたらまだマシだと思うぞ?」
「まだ、マシなんですか?」
サブリナの姿をした
「そりゃねぇ。異世界とかだったら知り合いはおろか、世界観ですらわかんないし、下手したらなんかモンスタ―いるしね。タイムリ―プは住んでる場所が同じかもだけど、法則がわからないとなかなかの『ムリゲ―』になるし、住んでるとこが変わんなくても、協力者がいるとは限らない。謎をひとりで解かないと。そういう意味では僕もいるし、
「あっうん。心配いらない、その…なんでも協力するから」
強がって見せても、オレは父さんや
だけど
サバリにしてもオレの言葉を信じようと努力してるのか、頷いて包帯したオレの手にそっと触れた。
父さんは床に勢いよく座り、隣にサブリナの姿をした
そして三人の顔を見渡し、咳ばらいをして切り出した。
「とりあえず、当面はこのまま元に戻れない方向で話を進めるけど、いいか?」
オレたちはそれぞれの顔を見合わせて、頷いた。
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