第23話 そして日常から「その時」へ。
「あの……わたし体育委員副委員長です! わたしでよければ――」
「体育委員副委員長を解任します、お疲れ様です」
居合わせた体育委員副委員長が協力を名乗り出たが、ジコチュ―女子の前では
そして学食にいたオレをはじめ多くの生徒が気付いた、生徒会長がここまでのジコチュ―女子だと。
オレは一石三鳥と巻き込んだ
「どうするの。図書委員長辞めて清々したい? それとも―」
気まずい空気が流れる中、
怒ってるのはオレじゃなくてもわかる。
「そうね、それもアリだと思う。なんかめんどくさくなってきたし。でも『それとも―』の方にしようかなぁ、せっかくだし」
「そう? それじゃさっそくだけど――生徒会長さん、生徒会委員長並びに副委員長の解任は本人の自己都合以外だと、生徒会役員の六割の賛成が必要になります。規約に沿った手続きをしてからにしてください。まぁ、否決されたら爆笑ですが(笑)」
「お気遣いなく。そのル―ル自体の変更をしますので」
「そうですか。ご存じないようなので、親切な私は教えて差し上げます。生徒会規約変更は、生徒会役員満場一致での議決が必要ですね。図書委員長解任前なので、ヨリとさっきの体育委員副委員を含んだ形です。勝算はほぼ無いです、それでも採決を強行しますか(笑)?」
「勉強熱心ね。どう? たった今図書委員長が空座になったとこだけど、元書記。弟さんには体育委員副委員長なんてどうかしら?」
「御冗談。一年の時は退屈だったんでお付き合いしただけです。それに私、読書は弟のエロ本しか読まない派なんで――で、ヨリどうすんの? 腹決めた~~?」
えっ⁉
なんでここでオレをディスる必要あります?
めちゃ被弾したんですけど?
ウケ狙いかもだけど、ほとんど失笑だからね?
腹ってなんの腹?
そしてわざとらしく手を打って「ひらめいた」顔した。
『不肖わたくし、
その日の放課後。
緊急招集された生徒会は
同刻。
生徒会長を三期務めた
☆
「えらくあっけなかったなぁ……人気ないの?」
オレは部室前で
ちなみにオレは今から部活。
そんなことしなくても、面倒見いい
「ん…人気がないって言うより、現生徒会――前生徒会か。割と強引に三期付き合わされたんだけど、さすがに受験でしょ?『もう付き合い切れない』になったんでしょ。三期の時もしつこかったらしいから…」
なるほど、生徒会各委員長の任命権は生徒会長にあるから、ずいぶんジコチュ―を発揮したんだろなぁ……ん? 待てよ…
「姉さん。じゃあ生徒会は?」
「二週間以内に選挙。残念ヨリは逃げられないでしょうね(笑)」
「えっと、ヨリちゃん立候補するってこと?」
「そりゃ、言いだしっぺだからね。これであんたに、ちょっかい出せないってワケよ! まぁ『姉孔明』みたいのモンよ(ドヤぁ~~)」
じゃあ、
「んじゃ、サブリナ行くわよ」
「はい、お姉さま~~」
「誰があんたのお姉さまよ‼ こら、なつくな、もう! この
まったく満更ではない。
口は少し悪いが面倒見はいい、しばらくはサブリナと帰ってくれるだろう。
明日はどこの国の通貨にするんだろ。
オレはふたりに手を振り部活に合流することにした。
☆
「
「ん、なに」
オレはスパイクの紐を調整していた相棒
だいたい思春期ってヤツはちょい優しくされたくらいで、コロッと恋に落ちる。
ヨリちゃんは昔から優しいし、オレの思春期は侮れない『少しえっちな写真』で簡単に釣れてしまう。
なので、さっさとゲロって
いや、自分の事なんだけど、女子とお付き合いしたいという気持ちは止めどなく湧いてくる。
だけど時と相手は選ばないと幼馴染ズが崩壊してしまう。
「実はさぁ、部活終わってからでいいから話あんだ。そんな深刻なヤツじゃないけど
「んじゃ、家帰ってフロとか晩飯すんでからでいい?」
「うん、悪いけど――」
言いかけた言葉をさえぎるような爆音が辺りに鳴り響く。
オレたちは音の鳴る方を目で追う。
「例の逆恨みバイクか……そりゃ、校舎裏でタバコ吸ったら退学だろ。考えたらわかるだろ…――
「え…今…裏門出たとこ――えっ?」
オレは
先輩から聞いていた「ワザと嫌がらせで、すれすれ走るから、危なくて危なくて――」そうだった、聞いてたんだ。
そんな危険なバイクが下校時に月に数度現れるのを。
「ちょっ、
駆けだしたオレを見て
県立
最寄り駅につながる道路は一方通行だ。
一方通行ということは道幅がそう広くない。
そこに
道には帰宅部や、今日部活がない生徒。
部活を引退した三年生が溢れた。
その中に
父さんに聞いたことがある「最高と最悪は滅多に起きない」って。
だけど父さんは「でも最高よりも、最悪の方がちょっと多いかもな」と。
オレは父さんの言葉を信じて走った。
スパイクのままだ。
アスファルトではグリップ力が悪く滑りそうになる、だけどそんなこと言ってられない。
遠ざかったはずのバイクの爆音がまた近づいてくる、学校の外周を一周回り終えたのだ。
その爆音を聞いた生徒の波は道を開ける。
誰だってもらい事故は勘弁だ。
生徒の波が退いたので視界が開けた。
ふたりは見えてない。
爆音を放つバイクはふたりの死角だ。
しかしすごいスピ―ドで近づいていた。
バイクは噂で聞く通り、県立
そして蛇行したバイクはバランスを崩し転倒した。
もしかしたら生徒の誰かに接触したのかも知れない。
スピ―ドが乗ったまま転倒したバイクは、勢いそのまま道路を激しく横滑りした。
転倒した軌道の先には横断歩道があり、ふたりは半ばまで差し掛かっていた。
オレは呼吸が止まるような速度で走り続けたが、まだ5メ―トルある。
それに対してコントロ―ルを失ったバイクの速度は落ちない。
激しい火花が路面を焦がし、耳をつんざくような音がふたりの足を止めた。
顔色を失う
このままでは被害者がふたりから三人に増えるだけだ。
そんなことはわかっていたが、オレは走る足を止めることはない。
ほんの少しでも可能性がこの手にあるなら、可能性が指と指の間から零れ落ちる前に、運命にふたりが奪い取られる前に救い出したかった。
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