エピローグ
幸せよ永遠に
皇族としては異例の早さで婚姻の準備がされ、学園を卒業した次の日の今日、イザベルとルイスの結婚式が行われる。
真っ白なウェディングドレスを
「イザベル様、いけません!」
「そうだよ。流石に今日のオカメは駄目だって」
「でも……」
リリアンヌとミーアがオカメをイザベルから没収していれば、ルイスがやってきた。
「イザベル、似合っている。誰にも見せたくないくらいだ」
「それなら、オカメをつけますわ!」
どこからともなくスペアのオカメを取り出してイザベルは嬉々として言う。
「それもいいな」
「……えっ?」
(良いのか? いや、駄目じゃろ。われがしたいと
ルイス様は本気……じゃな。うぅぅ、ここまで来たのじゃ、腹をくくらねば)
自主的にオカメをしまったイザベルだが、その瞳は不安で揺れている。
(やはり人前に出るにはオカメがないと不安じゃ。この見目では、民も怖がるだろうに……)
「大丈夫だ。俺もついてる」
いつの間にかリリアンヌとミーアを部屋から追い出したルイスは、そっとイザベルを抱き締める。
相も変わらず、一瞬だけ肩を揺らして動かなくなる姿にルイスは
(はぁぁぁぁぁ。可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い。今日からイザベルが俺の妻だと!? ここは天国か?
あぁぁぁぁ、今すぐ部屋に連れ戻って朝まで共に過ごしたい。誰にも見せたくない。閉じ込めてしまいたい)
ルイスが自身の欲望と戦っていれば、イザベルがぎこちない動きながらもルイスの背中に手を回した。
「……皆は認めてくれるでしょうか?」
その質問に、ルイスは励ますように抱き締める腕に力を込める。
(
心の中では己の欲望と理性との激戦である。
「安心していい。すぐに分かる」
そのことを感じさせない落ち着いた声でルイスは言った。
遂に国民への顔見せの時間がきた。二人でバルコニーへと続く扉の前に立てば、イザベルは緊張と不安で頭がくらくらとする。そんなイザベルを励ますかのように、ルイスの手が繋がれる。
ルイスにエスコートされながら、イザベルはバルコニーへと足を踏み出せば、たくさんの笑顔が二人を向かえてくれた。中には、イザベルの噂を聞いたのか、学園の者なのか、オカメや般若の面を着けている者までいる。
「こんなに、皇太子妃として温かく向かえてもらえるとは思いませんでしたわ……」
泣きたくなるのを堪えてイザベルは笑う。そして、駆けつけてくれた人々に手を振れば、割れんばかりの歓声が上がった。
「イザベル。俺は冷たく未熟な人間だ。
人として間違えることもあれば、イザベル以外をどうでも良いと
それでも、俺の傍にいて、共に歩んで欲しい。イザベル、貴女を愛してるんだ」
繋がれたルイスの手に、イザベルはギュッと力を込める。
「私よりも皇太子妃に相応しい者も、私よりもルイス様のお心に寄り添える方もいるはずですわ。
私のように逃げだそうとしない者も。
それでも、私はルイス様と生きて参ります。共に悩み、迷いながらも進んでいきますわ」
視線が交ざり、微笑み合う。
すると、イザベルとルイスを結んでいた縁にピシピシピシッと小さな亀裂が入った。
その音に、ルイスは目を凝らしてそれを見れば、鎖のような縁が割れ、新しく光輝くもので二人は結ばれた。
「これは……」
呟いたルイスに、イザベルは首を傾げる。
「どうされましたか?」
「いや、何でも」
そう答えながらも、もう一度縁を確認すれば、それはどこにもない。イザベルとルイスを結ぶものだけではなく、全ての縁が見えなくなっていた。
(願いが叶ったから、見えなくなったのだろうか……)
心配そうに見ているイザベルにルイスが
そして、赤くなった顔を隠すかのようにどこからかオカメを取り出して装着すると、ルイスの予想を越えた動きを見せた。
バルコニーの隅に置いてあった木箱を開けてオカメを取り出し、下へとばら
「ルイス様、これは
(いつの間に用意したんだか……。そもそも、賄賂なんて必要もない上に、オカメでは喜ばれないだろう)
今日もイザベルは安定のオカメへの愛を爆発させており、ルイスはそれを笑って見ている。
(あぁ、幸せだ)
ルイスの目には見えなくなったが、二人を繋ぐ縁はキラキラと輝いていた。
ーENDー
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