第52話 オカメさんは猟奇的
一方、イザベル達はというと──。
「オカメに囲まれるなど、褒美にしかなりませんわ!!」
「いやいや、普通に怖いと思うよー。オカメで囲んで復讐をしちゃおう。トラウマも植え付けられていいと思うけどなー」
「オカメを何だと思ってらっしゃるの!? 美の化身でしてよ!!」
カミン発案のオカメを着けた集団で反リリアンヌ派へと乗り込み、今までの罪を暴いちゃおう作戦に対し、イザベルは反発を見せていた。
「……そもそも、そんな復讐でいいんですか? リリーとメイルード嬢のことを考えると、もっと追い詰めた方が良いと思うんですが。メイルード嬢は、どう思われますか?」
「えっ? 私ですか?」
まさか、自分まで意見を聞かれると思っていなかったメイルードは少し考えると、小さな声だがハッキリと意見を口にする。
「……アザレア様はご自身の言うことを聞く人が、手足になって動く者が減るのを嫌がると思います。
中心にいる自身を持ち上げてくれた人達が消え、公衆の面前で罪を暴かれ、恥をかかされ、人望を失うことに堪えられる方ではないかと……」
淡々と言うメイルードを、ルイスを除いた皆が驚きの表情で見た。
「あの……。私、何か変なことを言いましたか?」
「いえ。その、何と言えば良いのかしら……」
思わず言い淀んだイザベルに対し、カミンは非常に楽しそうに笑う。
「いいねぇ。長く傍にいただけあって、相手が一番嫌がることをよく知ってるねぇ。少しずつ追い詰めていく。復讐の理想系じゃないかなぁ」
「そっ、そうだな。リリアンヌのためにも、それくらいしないとだよな!」
メイスが顔を引きつらせながら同意しているのを見て、イザベルは反省した。
(呪うか刺客を送るかを提案するところじゃった。そうか。普通は命は狙わぬのか。確かに死んでしもうたら、死んだ方が良かったと後悔させられぬからのぅ)
前世では、呪われ、暗殺者を送り込まれていたイザベルは自身の考えが復讐にしては甘かったのだと結論付けた。
「死より辛い体験をさせるには、殺してはなりませんものね。メイルードさん、お勉強になりましたわ。他に何かアドバイスはありまして?」
明るい声で言うイザベルにメイルードは震えた。
(オカメさん、すごく
いえ、まさかね。絶世の美女がオカメを被るなんてあり得ないもの)
悪い意味で早くなる心臓を、落ち着かせるようにメイルードは胸の前で拳を握る。
「あと、フォーカスさんへの損害賠償をお願いしたいです。制服代は何としても私がお支払しますが、被害は制服だけではありませんから……」
「貴女も被害者ですから、制服代もミルミッド家へと請求しましょうね。
しかし、制服代だけではなく、他の物も……となると支払われるまではリリアンヌさんも大変でしょう。制服代だけでも高額ですから。
これは、精神的苦痛を与えられたでしょうから、損害賠償に加えて
メイルードの話に納得したシュナイに対し、取り巻きーズは首を傾げた。
「制服って高かったか?」
「そうでもないと思うよぉ。ドレス一着作るよりも安いんじゃないかなぁ」
「そもそも、値段を気にしたことがないので分かりませんね」
等々。同じ貴族でも格差は大きい。それでも同じ制服を購入するのだから、このような意見が出るのは当然とも言えた。
「公爵家や侯爵家のような高位貴族と子爵家が同じ財政なわけがないだろ。とりあえず、フォーカス嬢の制服代はゼンに出させる。
あとから好きなだけミルミッド家に払わせればいい」
その一声で取り巻きーズは黙るが、支払いがローゼンということに不満そうな視線をルイスへと向ける。それをルイスは鼻で笑い、
(ゼンとフォーカス嬢の関係が前進するのも時間の問題だ。フォーカス嬢のことはゼンに任せておけばいい。
これで、ゼンとフォーカス嬢が婚姻すれば、フォーカス嬢はイザベルの傍にずっといられるな)
ルイスはイザベルと自分を結ぶ
「イザベル、どうする?」
ルイスの言葉にイザベルはオカメの下でにんまりと笑う。
「
オカメに続き、般若。ルイスとここにはいないリリアンヌにしか分からない謎の言葉を言い、高笑いをするイザベルを止められる者も止めようとする者もこの場にはいなかった。
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