第7話 決別

「何故?」

 シュイはアーノルドを信じられないと言った。

 どういう事なのか。


「あの時、何故あなたはギアンを見捨てて、チームをピンチに陥れたの?そんなにあたし達が嫌いだった?」


 言っている意味がまるでわからなかった。


「見捨てることも嫌いでもない、どうしてそんな発想になるんだ」

「だってあなた、ワイバーンをあっさりと倒したじゃない」

「……」


 それは邪魔なみんながいなくなったから出来た事だと、声を大にして言いたかった。

 しかし彼らのプライドを考えると言えない。


「本当はもっと早く倒せていたのに、あなたがわざと足を引っ張っていたから、あんなに長引いて苦戦してしまったんだわ。あたしも初めて魔力切れを起こしてしまって、ギアンの傷もうまく治せなかったし、全部あなたのせいよ」


 長引いたのは、アーノルドが皆を守るため攻撃に転じられなかったためだ。

 そしてシュイが傷が治せなかったのは、腕が未熟だからだし、魔力切れは鍛錬が足りなかったからだ。


 もはや何も言葉が出なかった。


「それにギアンがこんな大怪我をしてまで、あたしを守ってくれたんだもの。そんな彼がいうのだから、あなたが悪いに決まっている」


 アーノルドは無表情で聞くしかなかった。


 確かにシュイとワイバーンの間にはギアンがいた。


 アーノルドもいたのだが、それは忘れられているのか。



「これ以上信用ならないお前と、チームを組み続けることは出来ない」

 ギアンの言葉に皆が頷く。

(そうか、こいつら。もう俺がいらないと言いたかったんだな)


 ようやくアーノルドは理解した。


「慰謝料として、ワイバーンを倒した報酬と手柄は俺たちが貰った。今更返せと言われても遅いけどな」

 ワイバーンを倒したのがアーノルドだと見ていた者は、ここの仲間たちしかいない。

 つまり彼らが主張すれば、倒したのはアーノルドではないとなるだろう。


「好きにしろ」

 竜殺しの称号など興味ないし、手柄を横取りされてももう怒る気力もなかった。




 何もかもがどうでもよくなったアーノルドは、すぐにギルドへ行ってチームから抜ける手続きをし、別な街に移った。


 裏切り者との噂が周辺で流されたので、アーノルドは元居た街よりもだいぶ遠いところまできてしまった。



「そんな事情だ。あの場で反論しても面倒なことになるし、訂正する気持ちなどとうの昔に無くなった。攻略中のダンジョンの魔石を手に入れたら、また別な街に移るさ」



 黙って話を聞いていたエルが怒っている。


「許せません。僕の魔法で八つ裂きにしましょう」

「おいっ!」

 エルの聖職者らしからぬ言葉に驚いた。


「いや明らかにおかしいですよね、アーノルドは何も悪くない。そんな寄生虫のような連中のせいで傷つくなんて、あってはいけないことです」


 何より許せないのは…。

「そのシュイという女性、どういうつもりですか?助けられたのはわかっているだろうに、アーノルドを傷つける発言。むかむかします」


「どういうつもりなんだろうな。突き放したくせに話しかけもせずに、ああしてついてくる。本当に迷惑だ」


 ギアンと話しているときに影から見ていた人物が、シュイだそうだ。


 問い詰めようと近づくと逃げたり、悲鳴を上げるからアーノルドから近づくことはしない。

 婦女暴行容疑で罪に問われるなどあってはならない。


「その内に対策を考えましょう」


 もやもやを抱えたままその夜は解散となった。











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