第8話 良からぬ噂
次の日にギルドに行くと皆の視線がアーノルドに集まった。
アーノルドはある程度予期していたが、エルは不快感を隠そうともせず、顔を歪めている。
アーノルドの視線の先にはギルドの者と話すギアンだ。
昨日とは違い、仲間が一緒にいる。
昨日エルにした話を皆にもしていたようで、アーノルドを見る目には疑心暗鬼が感じられた。
エルはフードの奥からギアンを睨みつける。
「よう裏切者」
「誰が裏切者だ。お前もとことんしつこい奴だな」
どこに移ってもこうして追いかけてきて、アーノルドの悪評をばら撒く。
執着心も強く厄介な奴だ。
「昨日の話を聞いて解散しにきたのか?」
「そんなことあるわけないだろう」
即座にアーノルドが否定する。
「お前に聞いていない。こっちの、お前の相棒に聞いているんだ。一晩待ったが、俺たちのチームに入るつもりにはなったか?」
ギアンの言葉に周囲がざわつくが、エルは無言だ。
「竜殺しの称号を持つ俺たちのチームに入れるんだ。こんな仲間を裏切るようなやつより、よっぽどいいぞ」
「……」
何を言われようとエルは何も言わない。
「おい、返事しろよ」
「うるさいですね、竜を倒したなんて嘘のくせに」
きれいな顔と声でエルは切り捨てた。
「全てアーノルドに聞いています、あなた方に竜を殺せる実力などないことも。僕たちはダンジョンの深層に行く力もあるし、数々の魔物を倒しています。今のあなたにそのような実力があるとは思えませんが、それなのに僕に多額の報酬を支払えるというのですか?」
ちらりとギアンの傷も見る。
「こんな傷をぶら下げている意味もわかりません、何故すぐに治さなかったのですか。そちらの治癒師のお嬢さんの実力不足と、高位の治癒師に頼む金がないと謳っているようなものですよ、恥ずかしい」
「な、なんだと?!」
初めていわれた言葉にギアンは顔を赤くし。シュイは顔を青くしている。
他の仲間たちもいきり立っていた。
アーノルドは真っ向から反論しているエルの姿に驚いていた。
普段からは想像もつかない強い口調と蔑みの言葉。
「悔しければ実力を見せてください。ここの近くのダンジョンにある魔石の話はご存じでしょうから、それをどちらが先にとってこれるか、勝負をしましょう。ここの皆さんももちろん狙っていて、ライバルは多いですが、竜殺しの称号がある皆さんならばすぐかもしれませんね。まぁその称号が本物ならですけどね」
挑発するエルをギアンが睨みつける。
「当たり前だろ、すぐにでも取ってきてやる。俺達が先に取ってきたら、土下座して謝罪してもらおうか。それと俺たちのチームの雑用として雇ってやる。無給でな」
「おい、何を勝手に決めているんだ!」
さすがに過熱し過ぎだと、アーノルドが止めようとした。
「別に構いませんよ」
どんどん話が進む。
「ただし僕たちが先ならば、アーノルドに謝罪をし、噂の撤回に努める事。そして…」
エルがシュイをちらりと見る。
「今後アーノルドに付きまとわないでください。わかりましたね」
ギアンが鼻で笑った。
「いいぜ、約束破るんじゃねぇぞ」
「こっちの台詞です」
エルとギアンの間に火花が散った。
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