第21話 状況整理と決断

 私達は司令官室に呼び出されている。

 私は専用の機械を杖にして動いている。これないと心臓止まっちゃうからね。

 結衣が心配そうに見て来るけど、問題ないので笑顔で対応する。

 反対には奏美がベッタリと居る。龍虎が萎縮しておられる。


 司令官室に入ると、モニターの前に奏美は移動する。

 私達三人は横一列に並んで司令官と対面する。

 さらに、中には他のメンバーも入っている。

 あの戦闘機を吸収したウンゲテュームを倒したメンバーだった。

 さらにモニター越しには他の兵器達が居る。


 物々しい雰囲気の中司令官が声を上げる。

 それに合わせて全ての兵器の顔がキリッと鋭くなる。

 私は当然、だるそうな顔だ。

 早くベットにゴロンして奏美に甘やかして貰いたい。

 あの生活は中々に良かったよ。


「この度は良く集まってくれた。まずはこの映像を」


 どこで撮っていたのか、戦闘機が私達の上を通過して、ウンゲテュームに食われるまでの映像がモニターに流れた。

 さらにその後の戦闘映像まで。

 これらも兵器の力などが使われているため、電力などではない。


「今回、どう言った理由で今の日本に外国からの使者が入って来たのかは予測段階だ。さらに言えば相手の国が誰かは不明だ。⋯⋯しかし、何らかの方法で海を渡って来たのは事実である」


 そこで私は待ったをかけた。

 ちょっとしか疑問があるからだ。

 流石に私の立場を理解した龍虎と結衣は何も言わないが、私の存在をただの『最弱兵器』と見ている面々は鋭い眼光を向けた。

 菊がそれを一喝したが。


「何らかの方法って、ただの偶然じゃないんですか?」


「ああ、これを見てくれ」


 映像が切り替わる。

 そこには海を平然と飛んでいる戦闘機の姿がある。

 特に変わったところは見られない。


「⋯⋯特に変わった所はないよね?」


 私は龍虎達に合意を求めた。当然、二人は賛同する。

 しかし、菊達超級はじっくりとその映像を見ている。


「静か過ぎないか? ウンゲテュームが蔓延っている気配すら感じない」


「言われてみれば確かに」


「そこからは奏美が」


 奏美が自分の事を言葉で示しながら前に歩寄って来る。

 この映像も奏美の力で撮った物である。

 ⋯⋯この映像が撮れたのなら、もしかしたら私達は二十分も戦ってないのかもしれない。

 予想時間よりも早く助けが来たのかもしれない。


「まずは見方を変えます」


 そして自然的な色合いだった映像が青だの緑などの色に変わる。

 熱の動きでも見るのかと思ったが、少しだけ違った。

 それで見れたのは微弱な変わった周波だった。

 歪んだ線が海一面に広がっている。


「これは」


「これは音です。奴らは海のウンゲテュームに対してのみ有効な音を出すようです。それで海を安全に渡って来たと予想しておりますが、正確なところは分かっていません」


「それだったらウンゲテュームに襲われる訳ないしな」


「そうでもないんじゃないか?」


 私の決めつけに菊が冷静に反論する。


「地上と海のウンゲテュームはベースが違う。奴らの文明はこれで昔と衰えはない事が分かる。むしろ時を得て高まっていると言える」


「ほうほう。すると奴らの大陸にはウンゲテュームが居ない可能性が高いね」


 実際あの戦闘機の中に兵器のエネルギーやウンゲテュームのエネルギーは感じられなかった。

 男しか乗ってないし兵器は当然いないのだが。


「そう。だけど海にはいた」


「海の奴らは海にさえ侵入しなければ襲って来ないから⋯⋯海のウンゲテュームにだけは対策が打てた」


「その結果がこれなんじゃないかな?」


 そう考えると、ウンゲテュームは全ての海に居る事になる。

 日本取り戻せても、鎖国しそうだ。

 地上よりも厄介なウンゲテュームは地上よりも多い。

 考えるだけで現実逃避したくなるね。

 ま、奴らはそれらを抑える方法を手に入れた訳だけどさ。


「たけど地上のウンゲテュームには効かないから食われた」


 でもなんか疑問が残るんだよなぁ。

 確かあの場所には他にもなにかあった気がする。


「⋯⋯ドローン型のウンゲテューム」


「ね⋯⋯奏音下級兵?」


「あそこに隠れるようにドローン型のウンゲテュームが居たんだよ。しかもきちんとこっちを見てた」


 そんな都合のいい事が可能なのか?

 私達のスピードがかなりの物だった。

 たまたまパトロール中のウンゲテュームに出会った可能性は勿論ある。

 でも、だったらワームの出現が完璧過ぎる説明が出来ない。

 偶然の重なりは『偶然』だと切り捨てる決断は出来ない。

 だけど、もしもそうではないとしたら。


「⋯⋯計画的にあの戦闘機を狙っていた?」


 いや、正確にはテスト段階だったのかもしれない。

 その証拠にあのウンゲテュームの回復のために中型以下のウンゲテュームが大量に現れた時があった。

 全て主のウンゲテュームによって用意されたモノだろう。


「⋯⋯奏音、それは本当か?」


「間違いないよ。それで私はあいつらが確実に食われると思ったんだ。で、確実に欲しいであろう飛行能力なのに他の大型が攻めて来なかったのが⋯⋯」


「テスト段階って仮定したんだね」


「流石菊だね。私の考えがすぐに分かるんだから。奏美」


「⋯⋯」


「副司令官、私達が戦闘機を追いかけて飛んでいる時の映像を頼む」


「分かりました」


 そして映像はその場所となり、回転する。

 そして一つ目のドローン型ウンゲテュームがしっかりと映っていた。

 戦闘中映像の周囲を探ると、隠れるように同じような存在は見られた。


「テスト路線は高そうだね」


 司令官がそう決断を決めた。


「そうなると、どうして戦闘機の存在をしれたか、だよね。海のウンゲテュームと地上のウンゲテュームが情報を共有しているとは思えないし⋯⋯」


 しかし、私達はあくまで戦う兵器なのでいくら考えても結論には達しない。

 なのでそうそうに考えるのは止めた。

 今は司令官の話を聞こう。

 疑問は残るだけだけど。


「⋯⋯今回の件でやはり飛行能力のあるウンゲテュームは危険だと判断した」


 今回は相手がまだ弱い部類で良かったが、もしも強いウンゲテュームが飛行能力を手に入れたらやばい。

 そう言う考えがあるのだろう。

 もしも強い部類が相手だったら、今の私はこの場所に居ない。


「心苦しいが我々も余裕がある訳では無い。君達にも辛い決断だと思う。外道だと罵ってくれても構わない。⋯⋯今後、外国から侵入して来るような事があれば、容赦なく落として欲しい」


 そして、と続ける。


「勿論、対象の命は当事者に任せる。ただ、怪物域にだけは入れさせるな。そして日本に近づくのは危険だと、思い知らせるんだ」


「後は人間域の足が運べない場所に飛ばれない事を祈るだけですね」


 私が両手を合わせて目を瞑ってそう言うと、この場の空気が重くなった。

 その後も少しだけの話し合いがあり、この場は解散となった。

 私達はその足で訓練場に向かう事にした。

 この体でも、この二人を訓練させる事は出来る筈だ。

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