第19話 特殊変異型

「ぶっぱなせ、結衣っ!」


「はい!」


 色が混ざり合い紫色の閃光がウンゲテュームに向かって飛来する。

 空気を、空間を揺るがして突き進む弾丸は閃光の川を作り出す。

 空気抵抗すら感じさせない直線的な弾丸は見事にウンゲテュームの体を貫いた。

 それはもうあっさりと。


「まで、終わらせない」


 私は決意を込めた言葉を漏らした。

 結衣が疑問の目をするが、たちまち焦りが現れる。


 すまない結衣。

 今から君をエネルギータンクのようにしてしまう。

 本来はこのような扱いは嫌なのだが、実際自分のエネルギーだけだともう戦えない。

 殴り倒される覚悟で私は結衣を抱き締めて、エネルギーを吸収する。


「接続」


「にゅ!」


 何故か艶かしい声を出す結衣をスルーして、結衣のエネルギーを使って先程飛ばした弾丸の軌道を曲げた。

 曲げて曲げて曲げる。

 そのまま再びウンゲテュームの体を反対側から深く貫いた。

 血を撒き散らして悶え苦しむ。


「ははは! 凄い火力だな結衣!」


「ち、力が抜けて⋯⋯」


「大丈夫、結衣のエネルギーはまだ四分の一も減ってないぞ」


 逆に言えば、それだけの量しか結衣一人では弾丸形成に使えない。

 別にそこには問題ないのだが、一撃必殺的な火力が出せない。

 このエネルギーを全て込めた全身全霊の攻撃なら⋯⋯簡単に大型を殺せるぞ。


「このまま援護する! 結衣も撃つ!」


「う、上手くエネルギーがあやしゅれましぇん!」


「気合いだ! 気合いだ! 気合いだ!」


「無理でしゅううう!」


「ふぅ。魂武装コンソウル


 私の長い漆黒の黒髪は銀色に染まって行く。

 同じような黒い瞳は紅色に色付いて行く。

 そして、私達の上空に光輝く純白の剣が50、漆黒の剣が50、その他の剣である物が1本顕現させる。

 そのまま前進させる。


 結衣に接続してわかった。

 私の想像以上に結衣のエネルギー量は多く、そしてとても濃い。

 私が本気を出せばこれを全て吸い上げる事は可能だが、そんな事したら結衣の体に異常が出る。

 ま、そもそもそんな常識外れな事はするつもりはないけど。


「結衣、君のエネルギー量は私の全盛期と同等かそれに近い。誇れ、君のエネルギー量は我が基地ナンバーツーだぞ!」


 ちなみに一位は私の妹である。

 今の私にはそれ程のエネルギーは持ってない。

 寿命と力が比例する特殊な体が私。

 そして力が弱まると言う事はエネルギーが少なく薄くなる。


 純白と漆黒の光が高速でウンゲテュームと龍虎の元へと向かって行く。

 そろそろ倒れる寸前の龍虎の視界には複数の光が写る。


『な、なんじゃこりゃあ』


「龍虎! これを受け取れぇ!」


 結衣のエネルギーの塊だ。

 体の再生にも力のエネルギーにも使える。

 その他の剣である物はそのまま龍虎の心臓を貫いた。


「えっ!」


 結衣が目を見開く。

 だが、次の瞬間にはもっと驚く。

 剣は光の塵となってそのエネルギーが龍虎の体を駆け巡る。

 そして傷を塞いで行き、再び活力を生み出す。


『なんじゃこりゃ! はは、最高だねっ!』


「結衣、すまないけどこのまま戦って良いか?」


「ひゃ、ひゃい! わたしゅもだいぶなれましゅた!」


「⋯⋯分かった!」


 相手はすぐに傷を癒そうとするが、それよりも速く私の斬撃が襲いかかる。

 上から下から右から左からと。

 針のむしろにして行く。


「にゅ!」


「やばい」


 剣の扱いとエネルギー吸収両方に意識を向けないと。

 体が勝手にエネルギーを一気に吸って行く。

 それだけエネルギーを求めているようだ。


「レイっち、力を貸してくれ」


 彼女の特異体質は分裂思考。

 私はそれを行う。

 合計三つの思考を生み出した。

 一つはエネルギー吸収、一つは剣、もう一つは余りだ。

 まぁ思考の扱いをしたりとかする。


「再生能力をフル活用し始めたな」


 活動が停止して攻撃が収まった。

 龍虎がその場で高いハイビルに登って両手を天に向ける。


『はああああああああ!』


 そのままエネルギーの巨大のボールを形成し始める。

 エネルギーが上昇するから周囲の小石も空に向かって上昇して行く。


「私、龍虎ちゃんの手助けします」


「お、良いね」


 引き金を長押しにして龍虎に向かってエネルギーを伸ばした。

 それに連なるようにボールがさらに大きくなって行く。


「ウンゲテューム、てめぇには絶対に結衣のエネルギーはやらねぇ!」


 結衣のエネルギーを食べようと動こうとしたのでそれを阻止する。

 もっと、もっと数を増やすべきか?

 だがその分結衣から吸い上げるエネルギーが多くなってしまう。

 既に四分の一を私が使ってしまっている。

 これ以上は負荷になり過ぎる。


 第一、接続もそこそこ危険な技だ。

 魂武装と魂武装への魂の繋がりを作り出してエネルギーを受け取るのだ。

 しかも、吸い上げと接続を私一人でやってしまうのも本当は良くない。

 加減を失敗すると結衣の生命すら吸ってしまうからだ。


 きっとその事を彼女は知らない。

 この戦いが終わったらきちんと話す予定だ。

 これはきちんと同意があって行われるべきだ。今回は緊急事態なのでこうなってしまったが。


「結衣、本当にごめんなさいね」


「敬語なんて止めてくださいよ。奏音さんはもっと関わりやすい、人ですよ」


「あんがと」


 そのまま攻撃を続け、龍虎のボールが完成する。


『塵と成れ! エナジーボール!』


 大きなエネルギーの塊の球体がウンゲテュームを包み込む。

 エネルギーに呑まれたウンゲテュームは体を表面から焼かれて行く。


「行け」


「行ってください⋯⋯」


『うりゃああああああああ!』


「龍虎、行けえええええ!」


「龍虎ちゃん!」


『あああああああああ!』


 そのまま光を失ったかと錯覚するように収縮し、爆発する。

 周囲の瓦礫を吹き飛ばして大地を抉る。

 それ程までのエネルギーを一人で扱えるのは龍虎の腕前を評価せざる負えない。

 正しく渾身の一撃。


「やりました。龍虎ちゃんがやりました!」


「⋯⋯」


「奏音さ⋯⋯」


 私の顔を見てゆっくりとウンゲテュームの方を見た。

 そう、見てしまった。

 一度完全に塵になったかと思われたウンゲテューム。

 だが、小さいがコアが残っていた。


「コアが浮いてます、ね」


「⋯⋯ッ! 龍虎!」


『ダメだ、もう、動けねぇ』


 大量の中型以下のウンゲテュームが現れていた。

 その背中には翼はない。情報はまだ広まってない。


「なんで集まって」


「まずい。面倒な事になる! コンソごふっ!」


「奏音さんっ!」


 やばい。

 結衣のエネルギーに体が追いついていなかった。


 大量のウンゲテュームは自らその命を断つ。

 自分自身でコアを破壊しているのだ。

 それによって空気中にはウンゲテュームのエネルギーが飛び舞う。

 それを大型のウンゲテュームのコアが吸収する。

 コアの色がどんどん濃くなって行き、体が高速で再生して行く。


『シュバあぁああああああ!』


 そして、真っ黒な体を持ったプテラノドンが現れた。

 ウンゲテュームの進化に関連性なんて関係ない。

 完全に飛行能力に特化した体になってしまったのだ。


「良くやったね君達」


「⋯⋯はは。結衣、龍虎。やったな。20分耐えたぞ」


 私の背後に菊が現れた。


「奏音、ごめんね遅れた」


「⋯⋯いや。むしろナイスタイミングだよ」


「⋯⋯親友には会えた?」


「ああ。懐かしい顔やった」


「そうか。妬けちゃうな。⋯⋯さて、超級三番隊、緊急作戦にて、最速で大型ウンゲテューム、特殊変異型の討伐を開始する!」


 そして空先輩の力で来た他のメンバーもぞろぞろと揃って来る。

 さらに上級の一部隊も現れる。


「ひぃ! 奏音先輩」


 これはあれだ。

 私の次の仲間だった奴らだ。

 私が16歳と17歳の時の部隊。

 ちょっとお説教したらトラウマを与えたようである。


 ただちょっと攻撃を無効化してボコしたり、何をしても上位互換の技でボコしたりしただけなのに。


「菊、頼んだよ」


「勿論だよ。それがアタシ達の任務だ。魂武装コンソウル

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