第6話 のんびりとした謹慎期間

 部屋に帰ると、龍虎が結衣に頭を下げていた。


「本当にすまない。アタシの身勝手な行動で、お前にも迷惑を掛けてしまった。本当に⋯⋯」


「も、もう良いって。別に気にしてないから⋯⋯」


「だ、だが」


「ちょいちょい。私には謝罪はないのかい? 自分の力を過信して大して強くないウンゲテュームに負けた部隊長さん」


「⋯⋯結衣、ほんとに」


「おいコラ!」


 それから暇な時間が流れた。

 部屋にあるテレビは一つだけ。これも娯楽の一つだ。

 このような娯楽は今でも復活の為に研究されている。


「と、そろそろ晩御飯の時間だ」


「は? 謹慎中なのに他の人と同じ食堂で食えんのかよ」


「龍虎よぉ。きちんと兵器手帳見とけよ。問題ないぞ。だいたい、謹慎って言っても、きちんと反省の色があればすぐに復帰だ。数が少ないんだからな」


 そして、私達は食堂に移動した。

 ここら辺は食料がかなり安定しており、お腹いっぱい食べられる。

 バイキング形式なので、好きなだけ食べれられる。しかし、皆が共通で食べる物が存在する。

 通称、ウンゲ棒。

 兵器としてのエネルギーを回復出来、栄養にもなる。

 美味くはない。


「結衣は割と少食だね」


「あ、はい。すぐにお腹いっぱいに成るんですよ」


「かなりのエネルギー量なのに、驚きだ」


「なんでアタシを見んだよ!」


「いや、エネルギー量だけ見たら結衣の方が高いから」


 命令違反の独断行動で謹慎処分を言い渡された部隊なだけあり、周りからの目は冷たいモノだった。

 ま、私が入る部隊の最初なんて皆こんなモンだ。


「お、今日の風呂は緑色か」


 特に色は関係ないけど。兵器手帳、基本的に命令などはこれで行われる。

 今日の目玉の料理や風呂の種類なども確認出来る。

 基地内での買い物も基本的にこれで完結する。

 作戦中は小型のインカムを耳に嵌めている。


 風呂は部隊事に時間設定がされている⋯⋯訳では無い。

 基本的に六時から十時まで、好きなタイミングで入れる。

 ただ、兵器と一般人が入る場所は分けられている。

 ただ、一般人が入る風呂には兵器も入れる。兵器が主に入る風呂は一般人には入れない。


 その理由が目の前の風呂。

 緑色である。ウンゲテュームのエネルギーが染み込んだお湯なので、この色だ。

 コアの色で変わる。落ち着く色に匂いも良い。

 兵器に取って、エネルギー回復促進や体力、怪我の回復にも効果がある。

 体を洗ってからきちんと入る。

 大浴場である。部屋にも小型の風呂は存在する。


「あったまりゅ」


「結衣は風呂好きなの?」


「あ、はい。にしても、やっぱり毎日色が変わると不思議です」


「んまぁコアの回復期間が必要だからね」


「え?」


「んだそりゃ」


「おやおやお二人とも、きちんと授業を受けてないのかい? ⋯⋯あぁ、これはどうでも良い事だから知ろうとしないと知れないか。えっとね」


 お湯が出る場所に一番薄いコアが設置されている。

 その程度のコアだと、水、或いはお湯の流れだけでも再生能力を削れる。再生しては削っているのだ。

 そして、それに寄って染み込んだ皮膚片が溶け込み、この様な風呂が完成しているのだ。

 だから、一般人には有害で入ってはダメな風呂と成っている。

 これも回復の進んだ日本の研究結果の賜物だ。

 利用したコアは一日で再生しなくなるので、休ませる必要がある。

 なので、毎日色が変わる。


「そうなんですね。肌質が保てるの嬉しいです」


「おぉ。お風呂好きだから結衣の肌はこんなにぷにぷにすべすべなのか〜」


「や、やめてくらはい」


 結衣に抱き着いて頬を擦り合わせる。

 若いって良いね。ま、私もまだ二十歳にも成ってないけども。


「結衣に引っ付くな! セクハラだぞ!」


「今はルールはあっても法はないぞ〜」


「モラルは永久不滅だ! 人が嫌がる事はするな!」


「へいへい」


「ふへ〜」


 のぼせたのか、目がクルクルと成っている結衣。

 ちょっと可愛いので頬でもツンツンしようとしたら、離れた場所から声が上がった。

 この風呂にはまだ二部隊しか来てない。

 合計人数は九人だ。そう、私達一番隊が少ないだけである。


「命令違反してボロボロで帰って来たエリート様が随分楽しそうですねぇ。だいぶ落ちぶれましたかぁ?」


 うぜぇ。なんだこいつ。殴るか? 殴ちゃうか?

 いやダメだ。他の部隊に私の力がバレる訳にはいかない。

 それは誰も望んでない。ま、そもそも皆私に戦って欲しくないと思っているけどね。

 私は上層部から『救世兵器』と呼ばれて期待されている。司令官達からは最終兵器だ。

 そんな私が目立ってはダメなのだ。


「なんだよ櫻井」


「随分落ちぶれたねぇ。永遠の下級、最弱兵器とそんなに仲良く」


「してねぇよ」


「ま、どうでも良いよ。妾達が一番隊に昇格するのも近そうだよ。おほほほほ!」


 やべぇ。とにかくやべぇ。

 なんだよ。一人称が妾ってさ。漫画の見すぎじゃね?


 あ〜思い出した。


「万年二位」


「なんじゃと! 最弱兵器が妾をその呼び方で言うでは無い!」


「あ、すまんつい」


「ついとはなんだついとは! もう上がる!」


 二番隊は全員去って行く。


「おい福田」


「奏音で良いよ」


「どうっでもええわ! 万年二位って、広まってんのか?」


「まぁね。実技筆記含めて毎回君の次、全てに置いて君の下位互換と判断されている可哀想な人だよね。私の二つ名同様に広まってるよ」


「⋯⋯櫻井は別にアタシの下位互換じゃねぇよ」


「分かってる。安心して。君の性格や今回の事で、確実にあっちの方が評価されてるから、さ」


「お前まじでウザイなぁ!」


 ちなみに結衣、彼女は長風呂だった。

 二時間も入っていたのだが、彼女は満足そうだ。


「があああああ」


「⋯⋯」


「⋯⋯今回の新人達も元気だねぇ」


 ベランダで月を眺めながら私はそう呟いた。

 てか、龍虎のいびきちょっとうるさいな。

 学校でも同じ寮部屋だったのか、結衣は静かに眠っている。

 目に力を込めると、彼女達のエネルギー残量が分かる。


「結衣の武装はなんだったか。このエネルギー量なら、遠距離武器か?」


 遠距離武器は弾の関係で、エネルギー量が多い体に成りやすい。

 それでも、結衣の量は異常だ。

 だが、学校成績を参考にして考えると、操作が上手くないと思われる。


「訓練で上達させるか。寝よ」


 翌日、謹慎処分、なにそれ美味しの? 状態で命令が下された。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る