第2話 天才龍虎の単独行動
アタシは廃乙女龍虎。ここ日本は半分以上の面積がウンゲテュームと言う化け物達に奪われている。
そんな相手に対抗出来るのがアタシ達人間兵器である。
別に改造された訳では無い。特殊な力を持って生まれた少女なのだ。
アタシは兵器達を軍事利用出来る為に育成する養成学校で首席の成績を収めた。
アタシには才能がある。
最初の才能は兵器としての力を持っている才能。
次に学弁や身体能力等の才能。
そして、アタシは一番隊の隊長に抜擢された。
成績から見て当然と言えば当然の結果。
しかし、気に食わない事に、『最弱兵器』と呼ばれる雑魚が同じチームになった。
下級と言うのは一年、しっかり学び貢献したら中級に上がる。
しかし、ずっと下級のそいつ、福田である。
周りは最速で超級へと上がる救世時代の人物だと言うのに。
そんな奴がアタシの仲間である。邪魔でしかない。
そもそも、ダチだと言っても、結衣も能力的には邪魔になる。
しかし、嫌いでは無い。こんなアタシに付いて来てくれる唯一のダチなのだから。
寧ろ能力値がアンバランスなチームになると、おのずと弱い奴らが死にやすくなる。
それを防ぐのも、天才であり隊長の仕事か。
突出した強さを持つアタシと弱い二人のチーム。
だからどうした?
アタシはテッペンを取る。そして日本を取り戻すんだ。
今のチマチマしたやり方は気に入らない。アタシがこの軍を変える。
そして今日は一番から六番までのチームが共同で小型のウンゲテュームを討伐する作戦がある。訓練作戦と言う部類に入る。
しかし、小型相手にこれ程までの人手が居るとは思えない。
上の命令なので従う。
「結衣、お前は後方支援。福田。お前は邪魔だから見学しておけ」
そう指示を出す。
結衣の
コンソウルとは、我々兵器を兵器と知らしめる力だ。
魂の具現化と呼ばれているらしい。
主にその人それぞれに合った武器を顕現させれる。
それが唯一、ウンゲテュームに対抗出来る力。
そして、それには才能の差がある。
アタシは最速で超級に成る!
その為には、小型如き、一人で倒す!
「ちょ、龍虎ちゃん!」
「小型はやっぱ、一人で十分だ! 他の奴は他のウンゲテュームを相手すりゃあ良い! アタシは一人で十分だ!」
独断行動。だが、成果さえ残せば問題ない。
アタシは強い。下級の中では誰よりも強い。
だから、問題ない。
兵器に渡される制服は人間離れした身体能力を支えてくれる。
それだけではなく、魂武装をした時に、その形を変える。
ウンゲテュームの皮から作成するらしいが、詳細は知らされてない。
アタシの身体能力は学校でも一番。誰もアタシのスピードには付いて来れない。
目的地に最速で到着すると、そこには大型犬の姿をしたウンゲテュームが寝ていた。
周囲は既に瓦礫の山。少し錆びている部分もある。
しかし、数百年と経っているからか、場所的にはかなり広かった。
今時、昔の形が残っている方が珍しい。
「数百年前には、ここにも人間が居たんだろうな」
今の人間が暮らしているのは、ウンゲーテュームが居る空間、怪物域を隔てる壁の内側、人間域だ。
相手はたったの一匹。控えめに言って、余裕だろう。
「
制服が背中に『龍』が刻印された特攻服に変わる。
手にはガントレットが装着される。
ガンガンとぶつけ、具合を確かめる。
魂の力を解放すると、総合的能力が全て上昇する。
「行くぜ!」
先手必勝。
地を蹴って犬のウンゲテュームに肉薄した。
「ブレイクナックル!」
右のガントレットが蒼く輝き、振動する。
寝て油断しているウンゲテュームに突き出す。
轟音と共に地面に激突する拳。それは軽々地面を砕き、周囲の瓦礫を吹き飛ばす。
砂埃が視界を全て奪う。
「柔いな」
しかし、煙を切り裂いて突き刺そうとする、しなる鞭の様な刃が伸びて来る。
野生の勘でギリギリで回避出来たが、頬を掠った。
コンソウルを使っている時、アタシの外皮はとても硬く成っている。
生身で狙撃銃の弾丸を弾けれる程の耐久力を秘めている。
それを掠っただけで裂いた?
「面白ぇ」
少し流れた血を拭って、煙を払う。
無傷のウンゲテュームが二本の尻尾の様な鞭をうようよさせている。
足に力を込めて、殺意を持って、突き進む。
仲間はどうせまだ近くには来れない。来る前にさっさと倒す。
ウンゲテュームの倒し方は主に二つ。
再生不可能になるまでボコすか、核である『コア』を破壊する事。
コアは研究にも使われるらしく、回収したいところ。
コアを抜き出すと相手は肉体が保つ事が出来ず、蒸発するらしい。コアは特別なケースに入れる事に寄って再生を防ぐ。
一直線に突き進むアタシに向かって鞭の刃が伸びて来る。
後一歩で突き刺さると言う距離で拳を振るい、弾く。
しなるが、殴れない訳じゃない。
鋼鉄を殴っている気分だ。火花も飛び散る。
「アタシの拳で鋼鉄の硬さを感じるとは。お前、小型の中でも強い部類か? まぁ関係ない。死ねぇ!」
肉薄寸前に跳躍して重力を乗せる。
「ゴリ押し連打じゃあああ! オラオラオラオラっ!」
高速で振るわれるアタシの連撃拳。それは軽々大地を抉り出す。
連打で範囲もカバーし、躱す事は不可能。
そして、アタシの拳はダイアモンドを容易に砕く事が可能だ!
相手は地面と同様に木っ端微塵である。
「ふぅ。コアも破壊しちゃったかな」
『ガル?』
「え?」
しかし、ウンゲテュームはアタシの背後に居た。
何時、どのタイミングで移動したのか分からなかった。
完全に背後を取られている。どんな攻撃だろうが、この距離で躱す事は⋯⋯不可能。
「あがああああああああ!」
鋭い牙で肩を噛まれる。力を込めて食い込ませ無いようにするが、相手の牙が鋭過ぎる。
犬に噛まれるだけなら痛くも痒くもない。少し生温さを感じるくらいだ。
だが、こいつのは次元が違う。
痛いってレベルじゃない。初めて感じる激痛にアタシの頭は混乱に陥る。
熱い。痛い。殴ろうとしても、上手く力が入らない。
血がブシューっと大量に噴射されて行く。
視界が自分の血で赤く染まっ行く。視界が奪われて行く。
「いい、加減、離れろや!」
歯を食いしばり、下半身に力を込めて、無理矢理右のフルスイングを振るう。
軽やかな動きでそれを躱されたが、その拳の威力も当然高い。
瓦礫を砂に変えた。
「血を、流し過ぎた。肩は着いてる。なら、問題ない。まだ右が残ってる。ごほ。まだ、戦えるぞ!」
拳が振るえるのなら、足が動くのなら、頭が動くのなら、アタシはまだ戦える!
小型のウンゲテュームの全力が分かった今、怖がる事は無い。
「少し舐めてたぜ。だけど、もう油断しねぇぞ!」
そして、アタシとウンゲテュームの戦いはさらに激しいモノへと成る。
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