化け物と戦う兵器の中で最弱兵器と呼ばれている私は最強ですよ?

ネリムZ

第1話 最初の出会いは失敗から

「どうだい? 少しは現実ってモノが見えたんじゃないの? いくら我々の評価で相手が弱いクラスでも、相手は怪物だ。一人で楽々に勝てるなんて無いんだよ。君は確かに学校では優秀だったのかもしれない。⋯⋯しかしね、これが外だ。学校で主席だからと傲慢に成った君には、受け入れ難いかな?」


 ウンゲテュームの攻撃をノールックで適当に防ぎ、向き直る。

 新入りの傲慢な隊長さんに教えてあげる必要がある。

 これが今の日本だと。これが現実だと。

 学校で強いからなんだ? 相手は化け物だ。

 常識が通用する訳が無い。だけど、それを押し通すのも、また我々の存在理由なのかもしれない。


「教えてあげよう。何故、私が最弱なのか。永遠の下級なのか。そして、見せてあげよう。これが、本当の才能であり、天才の力だ。魂武装コンソウル


 ◆


 ウンゲテューム、これが数百年前に唐突に日本を襲った。

 建物は破壊され、人々は無慈悲にも殺戮された。

 そんな化け物相手には人間の作り出した兵器ですら相手に成らず、寧ろ取り込みその生態を進化させた。

 しかし、彼らに唯一対抗出来る存在が現れた。


 それが通称『新人類』基本的に人間は彼女らの事を『救済兵器』と呼んで居る。

 異界からの侵略者と考えられているウンゲテュームを駆逐し日本を救う存在として扱われている。

 彼女達の力は正に兵器。人間の創り出せる限界を超越した化け物集団。

 しかし、それらを扱い所持、そして戦えるのは一部の女性に限られていた。


 その兵器が現れてから人間の反撃が開始された。

 徐々に日本は取り戻され、世界から見放された日本は孤立し、新たな文明を築き上げていた。

 そして、兵器達は各支部に集められ、階級に分けられた。


 下級、中級、上級、超級の四段階。

 ウンゲテュームは小型、中型、大型、超型と分けられた。


 ウンゲテュームを駆逐して日本を取り戻す、それが『救済兵器ヒルフェケルン』としての役目である。


 そして、その中で救世ハイラント世代と呼ばれた、兵器達の中でも特に強い少女が一度に入った時期がある。

 その殆どが超級となり、大型以上の対処をしている。

 そして、その中で唯一、永遠の下級、最弱兵器と呼ばれた少女が居る。


 それがこの私、福田奏音かのんだ。

 昔の新人の死亡率は五割を超えているが、最近ではほぼゼロ。

 そして、再び兵器達の階級分けが行われ、チーム編成が行われた。

 再び下級と烙印を押された私が配属されたチームが私を含め合計三人、下級兵器一番部隊、略して下級一番隊である。


 一番として選ばれたのは、仲間の能力値が高いからである。

 チームは合同の部屋割りと成り、何度目かの新たなルームメイト達と、このドアの先で会う。


 ドアを開けると、そこには横長の椅子にゴロンとした不良っぽい女の子とその態度にオドオドした女の子である。

 不良の方は赤髪ツインテール、オドオドとした方は黒髪ショートだ。


「初めまして」


「あ、は、初めまして、福田さん」


「今日から最低一年、同じチームなのだから、奏音と呼んで。私も下の名前で呼んで良いかしら?」


「あ、はい。よろしくお願いします」


「うん。よろしくね結衣ゆいさん」


「アタシはよろしくしねーぞ」


「どうしてかな?」


「養成学校を主席で卒業したアタシがなんで、最弱のアンタと仲良くしないといけないんだ?」


 ガンを飛ばされた。


「そう言わないでくれ。これは上から配属されたチームだ」


「チィ。なんでこのアタシがてめぇなんぞと。救済兵器の面汚しと」


 酷い言われようだ。

 事実かもしれないけどさ。


 最弱兵器、今の私は19歳なのだが、15歳からずっとそう呼ばれている。

 周りが凄い勢いで出世するからね。しかたないよね。

 結衣達も15歳である。


「結衣さんみたいに仲良くしてくれると嬉しいな。龍虎りこさん」


「下の名前で呼ぶな! フン!」


「どこ行くんだい?」


「てめぇに関係ねぇだろ! 結衣、行くぞ!」


「え、あ、行ってきます」


「晩御飯の時間までには戻るんだよ」


「偉そうに言うな雑魚!」


 あはは。今回は一癖ありそうだ。


 廃乙女龍虎、彼女は確かに養成学校で主席で卒業したらしい。

 二人の書類を確認する。


 廃乙女龍虎

 運動能力評価S

 学習能力評価C

 学力能力評価A

 人格能力評価B


 高い身体能力を持っている。猛進する事がある。学力自体は高いが、注意されても直さない等の欠ける部分がある。正義感に溢れている。弱い者を守る事を信念に置いている。武術の観点だけで見たら既に中級。今後の成長に期待。


 井野川結衣

 運動能力評価B

 学習能力評価B

 学力能力評価B

 人格能力評価B


 学習能力、人格能力はAに近いB、運動能力と学力能力はCに近い。戦略等の事には期待出来ないが、経験から創意工夫出来る柔軟性を持っている。龍虎の友達なので同じ部隊として配属。


 そんな感じだ。


「はぁ。こんな評価をいつまで続けるのやら」


 こんな評価はあくまで学校での評価だ。実戦ではなんの役にも立たない。

 あくまで参考程度だ。


 晩御飯。


 龍虎は自室で食べるとの事で食堂には同席しなかった。


「すみませんすみません」


 ペコペコと結衣さんが頭を下げてくれる。


「謝る必要は無い。きっと、それだけの才能を持っていると思っているんだろう。実際に、それだけの成果を学校で出したようだしね」


「は、はい! 龍虎ちゃんは凄いんですよ!」


 結衣さんの龍虎さん自慢話を聞きながら用意された食事を食べる。

 すると、背後から抱き着く気配がしたので躱した。

 新人が入り交じる食堂が騒がしくなる。

 この食堂は中級までの兵器達が使っている。


「よ、奏音」


きくか。超級のお前が何用だ?」


「ワタシの大切な人を預けるに値するか調べにね」


「いつ、お前のに成っなのよ」


 私と同期、つまりは救世時代の兵器である。

 彼女の強さは学校でも知れ渡っている様で、新人も憧れの表情をしている。

 かく言う結衣さんもうっとりしている。


「奏音の事を頼むぞ。ワタシの親友なんでね」


「は、はい!」


「私が新人にお世話に成るつもりは無いわ」


「左様で。それじゃ、ワタシはこれで。最近近場で現れた大型の討伐会議があるんで」


 そう言って離れて行った。

 騒がしい奴だ。


 そして翌日、私達の部隊にも行動指示が渡された。

 一番から六番までが出動し、小型のウンゲテュームの討伐作戦だ。

 場所は基地から二キロ程離れている。

 近々京都奪還作戦が動く為、近場の小型を新人が倒しながら経験を積むのだ。


 とりま、龍虎達との最初の出会いは、まぁ失敗だろう。最弱兵器の名は歳を重ねるごとに意味を強くする。

 今年こそは良い始まりだと良かったのだけどね。残念だ。

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