第24話 タイムトライアル

 東方某国へ向かう園田とレミ、そしてロマリー嬢とジン。

 二号車には捕縛した騎士たちを乗せている。

「だ、大丈夫でしょうか?

 レミ殿…。」

 不安げなロマリーをよそに、外の風景を楽しんでいるレミ。


あるじよ、ここの森は独特の植生じゃのう。」

「ああ、針葉樹林だからなぁ。

 恐らくこの辺りは一年を通して気温が上がらないんだろうなぁ。」

「ちょ…レミ殿っ!」

 園田とレミのヨタ話に割り込むロマリー。

 ジンも苦笑いしている。


「まぁまぁ、ロマリーも落ち着きなさい。

 地方とは云え、貴女も立派な領主でしょ。

 オドオドしないのっ!」

「で、でもぉ…。」

「街を脅かす賊を捕えてみたら、貴国の騎兵だった。

 こっちに迷惑をかけないように、そちらで裁きなさいよっ!

 というだけの事よ。」

「それって、見方によれば戦争よね。」

「宣戦布告はまだよね、三ヶ月も待っているのに。

 おまけに斥候としてはお粗末な連中。

 そんな者を突き返されたら、あちらも面白くないでしょう。

 今回はこちらの交渉に華を持たせてお引取りが良いところじゃないかしら。」

「もし、滞在中に襲撃されたら…。」

「その時は、私が一肌脱ぐわよ。」

「は、はぁ…。」


 レミに説得されるが、渋々顔のロマリー。

 運転席では園田が苦笑いを浮かべている。


 結局、ロマリーの不安は杞憂に終わり、騎兵の返却、不可侵条約を取り交わし、帰路につく一行。

「はぁ…よかったぁ。」

 安堵の顔になっているロマリー。


あるじよ、外壁の完成までにはどのくらいかかる?」

「レミは、が限界とみたかい?」

 キャラバンが停車し、レミと園田がお互い向き会い笑う。


「半年…て、とこかしら。」

「だよなぁ…。

 さて、どうしたものか。」

 後席に座っていたロマリーがレミたちの話に入ってくる。

「どうしたのですか?」


 キャラバンが再び動き出す。

「ああ、連中がアルザリアに攻め込むまでの時間の話じゃよ。」

「ええっ!!」

 レミの返事に驚くロマリー。

「だって、不可侵条約を締結した…。」

「体裁の話さ。

 ああでもしないと、王様も立場がないしな。」

 運転しながら園田が答え

「うむ、戦争しかけておいて、出鼻を挫かれたのが知れ渡れば、王様も面目丸つぶれじゃて。」

 レミが頷いている。


「じゃ、じゃぁ、それを知っておいて、なお…。」

「連中の顔が拝めただけでも収穫じゃよ。

 それと、国情が見えたのも収穫、それを踏まえてどう動くかという策も錬ることが出来る。」

「というわけ。」

 肩をすくめる園田と、ふふんと胸を張るレミ。

 そしてみるみる顔色が悪くなるロマリー。


「さぁ、帰ったら忙しくなるぞぉ。」

 園田が気合を入れ直すと、レミも続く。

「ロマリー殿下、ゴロツキの領民が増えるのは、勘弁じゃ。」

「…。」

 話がほとんど耳に入っていないロマリーの隣で、ジンが算段の準備を始めている。


 ◇ ◇ ◇


 ロマリー嬢一行が帰郷した翌日、園田のキャラバンが出発する。

「でだ、何で俺が運び屋を?」

あるじよ、その下りは程々にして、急ぐのじゃっ!」

「了解だ。」

 今回のキャラバン、園田と娘たち、そしてジンがメンバーとなって出発する。


「レミ、レンガ造り頼んだぞ。リサとユイもレンガ窯の作成と畑の開墾よろしくな。」

「分かったのじゃ。」

「コウジさん、気をつけて。」

「お任せ下さい、ご主人さま。」

 キャラバンを送り出すレミたち。


「さぁ~て、仕事じゃ、急ぐのじゃ!」

 レミの檄に頷き、動き始めるリサとユイだった。

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