第23話 まちづくり

 さて、領主より土地を瑕疵されて二ヶ月。

 土窯が二つ、レンガ窯が四つ作られている。

「さまになってきたわね。」

 レミが景色を眺めながらニコニコしている。

「ああ、鋳造のつるぎも出来たからね。

 それで、交渉はどうなりそうだい?」

 園田もニコニコしている。

「ええ、捕縛騎士の返還を口実に、不可侵と商取引を取り付けられそうじゃ。」

「まぁ、一安心だな。

 時間稼ぎの間に、この街の防御も高められる。」

「そうじゃな。

 窯を増やす予定も有るのじゃろ。」

「ああ、あと二つ土釜を作れば、住居向けのレンガも出来る。

 …ここは、レンガの材料に事欠かないようだし、漆喰しっくいも容易に確保できる。」

「まぁ、半年もあれば、北側の外壁は出来上るだろうが…。

 人手が必要じゃのう。」

「ですねぇ。」

 溜息をつく園田。

 流石に寒村の人口だけでは外壁を完成させるのはままならない。


「人を受け入れるにしても、食料の問題もあるのう。」

「流浪の獣人たちの手助けを借りたら?」

「奴隷を使ってみては?」

 ユイとリサが同時に話しかけてくる。

「まてまて、二人ともアテは…

 あるのう。」

 レミが二人の意見を反芻しながら、得心し、園田は首をかしげる。


 ◇ ◇ ◇


「でだ、何で俺が運び屋を?」

「仕方なかろう、あるじ以外に、このキャラバンを動かせんのじゃからなぁ。」

「そ、そだねぇ~。」

 得心した園田と、助手席ではレミが書類を眺めている。

 トレーラーとハイ○ースの屋根には、枯れ葉を満載した大型の麻袋が山積みされている。

 ハイ○ースの後席には、移動の途中で倒した魔物の素材が、二号車には放浪中の獣人たちとユイ、三号車には目的地の街で買い求めた奴隷たちとリサが乗っている。

 なお、四号車は風呂付き車両なのだが、孤児たちを乗せることになり、孤児たちの付添者が同乗することになった。

「まぁ、もう一往復は必要じゃろう。」

「が、がんばります。」

 しょげる園田とケラケラ笑うレミ。


 アルザリアに到着すると、早速荷降ろしと人選が始まる。

 そこへロマリー子爵がやって来る。

「ご苦労でした、レミ。

 首尾はいかがでしたか?」

「バッチリじゃ、ロマリー嬢。

 畑を作るための土壌改良資材に、農奴と獣人、それから、孤児たち。」

「畑に孤児は必要なの?」

「失礼、孤児はこの街の将来に不可欠なのじゃ。」

「???」

「とりあえず、用地と住宅は揃っておるかの?」

「ええ、大丈夫よ。」

 ロマリーとレミの対話を横に、人々に必要な荷物を預け、作業内容と住まいについての指示を行うユイ&リサ。

「この調子だと、程なくすれば奴隷と獣人のカップルも増えそうね。」

「ええ。」

 ニコニコ顔のユイとリサ。


 翌日から畑の改良が始まり、農奴や獣人の仕事ぶりに驚くアルザリアの住民たち。

 当初こそ、不安を持っていた住民たちも、彼らの誠実な仕事ぶりと気さくな態度に好意を持ち、しだいに受け入れられ、奴隷身分からの解放を望む嘆願書までが子爵に提出される事になる。


 ◇ ◇ ◇


「でだ、何で俺が運び屋を?」

「仕方なかろう、あるじ以外に、このキャラバンを動かせんのじゃからなぁ。」

「お願いします、ご主人さま。」

「コウジさん、ガンバッテ!」

 運転席で愚痴る園田をあやす奥方三人。

「パパ、ガンバ!」

「ふへぇ~。」

 後席の娘たちの応援に溜息をつく園田さん。

 六人の喜怒哀楽を乗せ、キャラバンは出発した。


 そんなキャラバンを見送るロマリー子爵とジン。

「何だか、大事になったような…。」

「いえ、殿下、これは理に適っています。

 今は、彼らの助力に努めましょう。」

「そうね。」

 彼らが連れてきた奴隷と獣人が働く畑の前を、無邪気に走り回る孤児たちを眺め、微笑むロマリー。

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