第22話 お嬢様を支援

「で、俺たちが野営する理由って何?」

「仕方ないでしょ。

 騎士団は街の警備で忙しいんだから…。」

 七輪にあたりながら愚痴る園田さんと、それを嗜めるリサ。


「レミたちは大丈夫かなぁ?」

 リサが南の方に振り返る。

「大丈夫だろう。

 ユイさんも居ることだし。」

 園田は双眼鏡で遠方を眺めている。

 リサは七輪にやかんを置く。


「そう言えば、ユイさんたちにも、持たせたのか?

 七輪とやかん。」

「もちっ♪」

 園田の質問にサムアップで答えるリサ。

「良い娘だ。」

 そう言って、リサの頭を撫で回す園田。

じゃなくて、ですっ!」

 園田の手を振り払おうと、必死に暴れるリサと、その動きを窘めながら双眼鏡を覗いている園田。

 しかし、その手の動きも止まり、リサも異変に気づく。

「お出でなさったようだ。」

 園田がゆっくりと立ち上がり釘打ち機を構える。

 リサも短剣を抜き構える。

 眼前に土煙を上げて走ってくる騎馬兵とうぞくだん

 全員が同じ革鎧に同じ革のローブを纏っている。

「北方からの軍隊…だな。」

「そのようね…。

 でも、あそこを通ってくると。」

「ああ、たぶん…。」

 園田の言葉が終わる間もなく、騎馬が大ゴケし、騎手も地面に叩きつけられ悶え苦しみだす。

「落とし穴に嵌りましたね。」

「ハマったねぇ。」

 溜息をつくリサと園田。

 騎馬の一団は十数名程度…。

 とりあえず、戦闘が出来るような状態ではない。


「じゃぁ、縛り上げるとしましょうか。」

 腰にロープをぶら下げて騎馬隊の方に歩み寄る園田とリサ。

 のたうち回る騎手を一人ずつ後ろ手に縛り上げる園田と、周囲を警戒し、他の気配がないかを確認しているリサ。


 ◇ ◇ ◇


 結局、空が白み始める頃には、事態も沈静化し、騎手たちは騎士団に引き渡された。

「おつかれさま。」

 園田の背中を叩き、ニコニコしているユイ。

「こちらは、問題なかったのう。」

 と、残念そうなレミ。

 四人は揃って、借りていた宿屋に戻り、ユイの娘たちの出迎えを受けると、大人しく寝室に戻り爆睡してしまう。


 ◇ ◇ ◇


 二日後、領主に呼び出される園田一行。

「ありがとうございました。」

 応接室で開口一番、お礼を述べるロマリー嬢。

 まぁ、複雑な表情なのは言うまでもない。

「…。」

 気不味い沈黙。

 その沈黙を破るのは…。


「で、どのような問題解決をしたいのじゃ?」

 レミが含み笑いを浮かべながらお嬢様に尋ねる。

「はい…。

 捕まえた騎兵とうぞくたちが、東方にある某国の騎士だと言うのです。」

「ふむ…それで?」

「最悪、戦争になると脅されてしまい…。」

「なるほどのう。」

 ロマリーは困惑しているが、レミは目が座った笑顔になっている。

「捉えた連中は、東方の某国との取引材料になるじゃろう。

 くれぐれも殺さんようにな。」


 それだけ言うと、レミは園田にウィンクする。

「子爵殿下、連中が脅しをかけてきても慌てないで下さい。

 何の断りもなく領内に入ったのですから、某国もおいそれとは動かないはずです。

 もっとも、戦争がたまらなく好きな人種バカという事であれば、話は別ですが…ね。」

 園田が肩をすくめながら、ロマリーに提言する。


「とりあえずは、半月ほど放置して、情勢を見ることとしませんか?」

「だ、大丈夫でしょうか?」

「まぁ、策は考えますので。」

 不安げなロマリーに、何かアテがあるのか、自信有りげに園田が答える。


「付きましては、若干の土地と、人手をお借りしたく…。」

「解りました。」

「ありがとうございます。

 用地については、村外れを…。」


 かくして、百平米の土地と若干名の人足の調達に成功した園田。

あるじよ、何を始める気じゃ?」

「製鉄さ。」

「ほうほう…。

 しかし、そんな簡単に出来る物かのう。」

「だから一月ひとつき貰ったのさ。

 副産物で、街の外観も変えられるしね。」

「…」


 園田の話は雲をつかむようなものばかりで、レミも言葉を失ってしまう。

 そんな二人を、宿屋から出迎えるリサ達。

「さぁ、明日から頑張るよ!

 みんな、応援よろしくなっ!」

 園田がニコニコしている。

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