第18話 帰らずの森

 途中休憩をはさみ、森に移動を始めたキャラバン。

 猫娘たちの目的地とは少し異なることになったが、レミの意向を聞いて、全員が納得した。


 ◇ ◇ ◇


「で、何処に向かっているんですか?」

「帰らずの森じゃ。」

「は??」

 レミの答えに間の抜けた返事をしてしまう園田。

 道幅は狭くなり、大小の枝で車体が揺れるが、まだまだ先には進めそうだった。


 そうこうしているうちに陽も沈み、野営の時間となった。

 いつもの通り、野営の準備をするが、オイゲンたち親子の扱いで、一騒動起こる…。


「私たちと寝ませんか?」

「いいえ、私たちと一緒よ!」

 宿泊先を何処にするかで、猫娘たちが大騒ぎになるのだ。

 とは言え、トレーラーは二台、テントは何張りか有るが、さすがにテントで寝かせるには、色々問題が有るようで…。

「はいはい、それじゃ、ユイの部屋で寝かせる。」

「やったぁ~~。」

 レミの意見にはしゃぐユイたちだったのだが…。

「んで、ユイたちはハイ○ースね♪」

 ガックリするユイ親子、申し訳無さそうにユイたちのトレーラーに入っていくオイゲン親子。

「そして、私たちは野営よっ!」

 園田とリサを小脇に抱えるレミ。

 リサは苦笑い、園田は引きずられながら、キャンプの準備…。

 そして、ささやかなお祭りは終わる。


 そして、園田さんの長い夜が再び…。

「はじまりませんよっ!!」

 誰に向かって叫んだのでしょうか…園田さん。


 そんな園田の傍に、カフェオレ片手にやって来るレミ。

 園田の横に座り、美味しそうにカフェオレを飲んでいると、遅れてリサがカフェオレを二つ持ってくる。

「ありがとう。」

 リサからカフェオレを受け取る園田。

 リサもレミの反対に座る。

「なぁ、レミ。」

「なんじゃ、あるじ?」

っていうのは…」

「ああ、あの森の事か…。」

 レミの視線の先に見える森、どうやら、そこが目的の場所のようだ。

「なんで、『帰らず』なんですか?」

「入った者が帰ってこないからじゃよ。」

「それって…。」

「まぁ、行けば解ることじゃて…。」

 カフェオレを飲み終わり、テントに戻り始めるレミ。

「では、野営は頼んだぞ。」

 そう言い残して、テントに入ってしまうレミ。


 リサが不思議そうにその所作を眺めている。

「どうした?

 リサ。」

「いえ…

 レミさんが大人しくテントに入ったなぁ…と。」

「そういえば…。」

 いつもなら、ここでリサとレミが添い寝の順番を争い一悶着有るのだが、今日に限ってそれがなかった。

「なんか、毒気も抜かれちゃったわ。」

 リサがキャンプの様子を見るべく立ち上がっていく。


 園田は、そっとテントの中を覗くと、レミは寝袋に入っているが、幾度となく寝返りを打っている…。

 眠っているようには見えない。

「レミ…。」

「‥おお、あるじ

 なんじゃ、夜這いか?

 わらわの準備はいつでも出来とるぞ。」

 園田に気付いたレミが怪しく手招きをする。

「…心配して…損した。」

 テントから顔を引っ込める園田。

 そして、間の抜けた手招きをしているレミ。

「こらぁ~~っ!

 心配なら最期まで面倒を見るのじゃぁ~!!」


 レミの怒りでテントが大きく揺れるのを背に、戻ってくる園田。

 リサも同じタイミングで戻ってくる。

 テントの方を眺めながら。

「コウジ、何かあったの?」

「ん?

 …あぁ、何でも無い。」

 二人が座ると

「…っとに。

 心配するなら、添い寝してから話を聞いてほしいわ。」

 ブツブツ言いながらテントから出てくるレミ。

「だったら。

 一人で抱え込まないことを勧めるわ。」

 園田の反対に座ったレミに笑顔で話しかけるリサ。


「何かありそうだな、。」

「…もう、解ったわよ。」

 園田の質問に溜息をつくレミ。


「そこに、わらわの姉が居るのじゃ。」

「そうですか、お姉さんが…

 って、えぇ~~っ!!」

「だ、大丈夫なの?

 ド、ドラゴンって共生でき…るのかな?」

 園田は驚き、リサも不安そうにしていたが、レミの顔を見ると変な安心感を持っていた。

「で、私の近況を知ったら、『私もっ。』て言われてね。

 気に留めるつもりもなかったんだけど…。

 オイゲンを見ていたら、連れて行ったほうが良いかな?

 とも思ってね。」

「まぁ、ドラゴンのお膝元なら

 …って、キャラが変わってるわよ、レミ!」

 リサがニコニコしながらレミを見つめると、慌てて口を抑えるレミ。

 その仕草が可愛かったのか、思わずレミの頭を撫でてしまう園田。

「まぁ、後は本人たち次第だが…

 なるほど、ドラゴンの加護が有るのなら、帰らずではなく、森になるわけだ。」

「そういうところじゃ。」

 園田は納得し、園田に手を置かれて赤面気味のレミが答えるのだった。

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