第12話 篭の人

「で、なんで俺がここに居るのかなぁ…リサ。」

「それを私に聞かれても…。」

 篭の中であぐらをかく園田と、その横には、首輪と鎖で繋がれた制服姿のリサが座っている。


 彼らの眼前には開けた土地に立つ茅葺かやぶきのゲルと、ネコ獣人たち。


「たしか、車でここに移動して、夕飯を振る舞う羽目になって…。」

 軽く膝をたたき、頭を抱えてしまう園田。

「あの時のビールがうますぎたんだァァっ!!」

 地面に向かって叫ぶ園田と、呆れた表情になるリサ。


 ◇ ◇ ◇


 前日の宴席

「ん、ん、ん、…。っぷはぁ~。うまいなぁ、このビールっ!」

 ネコ獣人のもてなしに、真っ赤な顔ですっかり上機嫌の園田さん。

 そんな園田に呆れ顔のリサと、じっくりとお酒を楽しむレミ。


「リンダ、メリル、ルイ…娘たちを助けて頂き、ありがとうございます。」

「いえいえ…良かった。無事に届けられて…。」

 娘たちの母親と名乗るユイが酌をしており、娘たちを届けた事を思い出し、感極まって泣き出してしまう園田。

「今度は泣き上戸かえ?

 ほんに、忙しい御仁じゃ…のう。」

 レミに同意を求められ、苦笑いを浮かべるリサ。

 そしてオロオロしてしまうユイ。


「よい、よい、酒を飲めば、また笑い出すぞ…。」

 レミの言われるままに、酒を注ぐと、再び陽気に笑い出し…程なくしてイビキをかいて寝てしまう園田。


 ◇ ◇ ◇


あるじよ、ご飯じゃ。

 リサよ、お主はもう少しすれば、鎖を取ってもらえそうじゃ。」

 干し肉のジャーキーを持って現れるレミ。


 ジャーキーを食わえ、ボチボチ打ち合わせをする三人。

「それで、レミは何で捕まってないんだぁ?」

?かのぉ。」

だからよ。」

「なるほど…、納得。」

 リサの一言で園田が頷き、レミはおほほと笑っている。


「それで、僕はいつ頃開放してもらえそうなのかなぁ。」

「もう少しかかりそうじゃ。」

 レミと園田が話していると、ユイが鍵を下げてやって来る。


 おもむろにリサの首輪の鍵を外し、鎖も取り払う。

「あ、ありがとう。」

 リサがお礼を言うと、立ち去ろうとするユイ。


「ユイよ、わがあるじはいつ開放してもらえるんじゃ?」

 レミが尋ねると、ユイが困ったような顔をする。

「人種というのが…あと男性…だからね。」

「相談がまとまらない…と?」

「…はい。」


「お主にも、トラウマが有るのではないか?

 特にに…な。」

 ユイは立ち止まり、思い詰めたような顔になり震えだす。


「すまんことをした。」

 レミがユイに寄り添い、背中を擦りながら、ゆっくりとゲルの方へ歩いていった。


 リサは篭の傍に座り、園田に寄り添う。

「私が隣りに居てあげますよ。」

「ありがとう、リサ。

 …でも、ユイさんは、なぜに過剰反応を示すんだろう?」


 リサは少し遠い目をして静かに話す。

「きっと、嫌々ながらにに襲われたのでしょう。

 …娘さんたちがの姿に近いから…。」

「リサもに近くないかい?」


 リサは園田に微笑みかける。

「それは、私が貴方の妻になったからです。」

 急に赤面する園田。


 リサは再び村落の方に視線を向ける。

「おそらく、この集落の女性たちは、何らかの事情でと関係を持たされ、逃げ出してきた者たちばかりなのでしょうね。

 …捨てられてはいない筈よ。

 …それは死を意味することだから。」

「なるほどね…。

 それは、同じとして、申し訳ない限りだ。」

「そうね…。」

 そう言って、リサは園田に視線を戻す。

「責任は取ってくださいね。」

「はぁ~~~いよ。」

「返事はちゃんとするっ!」

「は、はいぃぃっ!!」

 子供を叱るようなリサと、怒られてシャキッとする園田。

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